第三十話 お色気ムンムン
○霧島ダンジョン4階層、午前5時45分○
居ても立っても居られず、衝動に駆り立てられるまま地下ダンジョンに潜った俺は、まるで鬱憤を晴らすかのように、ヒゲモグラ達を倒し続けていた。
はぁはぁはぁ。
これだけ動き回って、魔石はたったの86個か・・・
もうエンカウント率が、かなり落ちて来てる。
また少し時間を空けないとダメそうだし、そろそろ切り上げるか・・・
っとその前に。
俺は魔石全部を魔素クリスタルの珠に精練・合成する。
すると魔素クリスタルの珠はメロンくらいの大きさになった。
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『魔素クリスタルの珠』
説明 :魔素クリスタルでできた宝玉。魔素含有率99%。
状態 :10/10
魔力耐久度 :6
魔力伝導率 :6
術式スロット数 6/6
組込術式 :なし
価値 :★★★
補足 :工芸品
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これだけの数融合して、もう1しか上がらなくなってるって、思った以上に厳しいな。
一刻も早く魔素耐久度を15まで上げたいってのに、サイズだけ無駄に大きくなりやがって。
あっ、そうだ。高密化ってのもやってみるか・・・
よしよし、ピンポン玉くらいにはできたな。
・・・まあ重さは、変わらんが。
にしても・・・富士ダンジョンの転移トラップから取得てきした星間転移術式。
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『星間転移術式』
説明 :物体を瞬間転移する術式。星と星の間のみ転移可能。
術式ランク :SS
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Gさんが言うには、術式ランクダブルSのこの術式の消費魔力は、10。
転移術式を改変するよりよほどましな数値、これなら泡くって富士ダンジョンまで行った甲斐もあったと思える。
しかしその他諸々の術式だって組み込む必要性を加味すれば、星間転移アイテムを完成させるには、最低魔力耐久度15は必要・・・
このままだと、全部が全部、手遅れになっちまいそうだな。
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○ダンジョンショップ楽輝、地下工房○
昼過ぎまで寝ていた俺が、地下工房に降りてきてみると・・・
ちっ、修理品が増えてく一方だな、ったく、この忙しい時に。
おまけに親父の奴も居やがらねぇし。
俺は貯まった修理品の修理作業をしながら、今後の方針を考えていく。
直近の課題としては、星間転移アイテムを一刻も早く完成させること。
これが出来なきゃスタートラインにすら立てない訳だし、至極当然。
少し遠くではあるが、探索者協会が管轄する、割と大きいダンジョンだってある。
この課題の解決方法を普通に考えれば、今以上に強い魔物を数多く討伐し、もっと多くの高ランク魔石を入手していけばいいだけの話なんだが・・・
こんな悠長な正攻法では、三角さんの救出はおろか、女神像のミッション達成も時間的に不可能だと容易に推測できる。
ここで何か時短できる術を見つけ出せなけりゃ・・・間違いなく詰む。
あれこれと模索してみるが、俺の脳裏に過るのは、余り気の進まないものばかり。
やっぱ、親父から金でも借りて、探索者協会から魔石を大量購入するしかねぇのかなぁ・・・
といっても協会なんて、買取の倍で売り付けるから、出来れば避けたいとこだけど・・・あぁ~、くそっ。
(なあ、Gさん、この魔素クリスタルの珠を魔力耐久度15にするには、あとどのくらい掛かると思う?)
『そうですねぇ、魔力耐久度はその数値が高くなるほど、それを上昇させるために必要となる魔力も大きくなっていきます。
その珠が魔力耐久度15に達するには、このペースで行けば、あと1か月くらいは掛かるかと。』
だよなぁ。
『ですが、魔力耐久度15のアイテムを製作するというのであれば、話は別です。
前にも言いましたが、融合ではなく、埋込を使えば、価値の方は左程上がりませんが、多少の時間短縮が可能です。』
(あ~、そうだったな。)
・・・ダンジョンコアを見てからこっち、あれと同じ物を作らなきゃ無理だと、勝手に土壺にはまっちまってたみたいだな。
魔素クリスタルの珠はパワーストーン、他のアイテムに埋め込む形をとることもできる。
しかしそうなると、もう既に魔力耐久度6まで上がっているプロちゃんに、更に魔力耐久度を上げた魔素クリスタルの珠を幾つか埋め込んでやるのが一番の近道。
気になる点は、通常の組込術式の他に、プロちゃんには機能や必殺技の消費魔力分も合わさることになってしまう点だが・・・
まあもうこの際、そんなことも言ってられないな。
その辺はプロちゃんに、よぉ~く言って聞かせる他あるまい。
星間転移術式の魔力消費は大きいが、使う時だけ組み込んで、直ぐ消去してやれば、そう危惧したものでも無いだろうし。
よしっ、もう無駄にする時間はこれ以上無い・・・
これが現状ベストな方法だと信じて、後はやるだけやってみるか。
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先ほどピンポン玉くらいの大きさだった魔素クリスタルの珠を更に高密化し、ビー玉サイズ程度にまで小さくする。
そしてそれをプロちゃんのグリップへと埋め込む。
するとプロちゃんの全身がぼんやりとした輝きに覆われた。
『とっ、蕩けちゃうでしゅぅぅぅ。』
う~ん、相当気持ちよさそう・・・何か悪いことしてる気分になるな。
3分ほどすると輝きは収まり、プロちゃんも落ち着きを取り戻した。
『チャリン。『カード銃 プロフェッショナル』がレベル5になりました。』
『とっ、父さま。あたち、大人になってしまいましたでしゅ。』
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『カード銃 プロフェッショナルLV5』
説明 :ちょっとおませさん。あとは乙女の秘密。
状態 :魔性の女でしゅ。
魔力耐久度 :11
魔力伝導率 :11
術式スロット数 5/8
組込術式 :魔素吸入術式、魔力充填術式、空圧操作術式
価値 :★★★★★
補足 :インテリジェンストイ
所有者登録:父さま
【機能】
『お喋り機能』
種類 :パッシブ
効果 :装備時にいつでも、思念によるお喋りができるでしゅ。
『カード自動回収』
種類 :アクティブ
効果 :散らばったカードを自動回収しちゃうでしゅ。
『よろこびバイブレーション』
種類 :パッシブ
効果 :嬉しい時に体がブルブルしちゃうでしゅ。
【必殺技】
『ぐるぐるマグナム』
種類 :アクティブ
効果 :カードにスピンを掛けてぐるぐるさせたら、狙いは絶対はずさないです。ぐるぐるで威力も倍増でしゅ。
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おおっ、魔力耐久度が11かっ!
一気に5も上がった。
これなら今のと同じ魔素クリスタルの珠をもう一つ作れば、術式を組込めそうだな。
(プロちゃん、一気に大人になっちまったな。)
『はいでしゅ、もうお色気ムンムンでしゅ。』
・・・流石に色気は感じないぞ、プロちゃん。
まあ兎に角、こうなったら修理作業も終わってることだし、もうひと頑張りしてみるか。
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地下工房から飛び出すように出ると、店に繋がる階段を駆け上る。
「おっ、幸太郎。修理一杯貯まってただろ?ダンジョン行くなら、全部やっつけてからにしてくれよ。」
「ああ、それもう終わってるって。あっ、それと多分、明日は店の仕事できないからっ。」
「おい、そりゃどういうこった?幸太郎。」
「あ~、少し外のダンジョンを見て来るだけだって。」
「いや、おめぇ、急にそんなこと・・・」
時間が無いから勘弁な、親父。
「なんだぁ、あいつぁ。ったく、良い顔しやがって。」
次回、第三十一話 ぷろみねんすマグナム。




