表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/38

第二十六話 消えた探索者アイドル

○翌日、ダンジョンショップ楽輝、カウンター○


 最近、取り敢えずダンジョンに入る時以外は、午前中は店のカウンター、午後からは地下工房と店の仕事をしていることが多い。

 そして今日もまた、こうして店のカウンターで暇な店番をこなし、これからの予定や計画を立案中といった次第。


 さて俺の現状確認をしておくと、プロちゃん奪還に成功し、次なる課題は、女神像のミッションである。

 俺の今後の動きは恐らく、魔石集めに大忙しといったところだろう。

 しかしその前に、色々とこれまでのダンジョン活動に於いて、気になっている点が2点。

 店に客もいない今の内に、少し整理しておこうと思う。


(なあ、Gさん、魔力耐久度以上の魔力消費の術式は組み込むだけなら問題ないよな?)


『そうですね、術式を発動しなければ、消滅することも御座いませんよ。』


 よしよし。


 と俺は奪還に成功した魔素クリスタルの珠に、転移術式を組込んでみる。

 それを終えると、今度は改変・・・


(Gさん、改変作業ってどうやるんだ?)


『ああ、それでしたら、何をどうしたいのかを私に指示を出してから、アイテムに処理を行ってください。

 術式のどこを改変するかといったところは、古代魔法言語が理解出来ないひよっこマスターには、見ても分かりませんから。』


 はいはい、ひよっこですよぉ。


(ああ、そいつは助かる。)

(それじゃあ、転移術式の範囲制限を取っ払う感じで頼むわ。)


 と、ほどなく術式の改変工程が終了し、その改変された術式をアナライズ。


~~~~~~~~~~~~~~

『転移術式・アンリミテッド』

説明 :物体を瞬間転移する術式。転移範囲は無制限。

術式ランク :SSS

~~~~~~~~~~~~~~


(Gさん、トリプルSって出ちまってるけど、これ実際の魔力消費どのくらいなんだ?)


『はい、一応表示の説明から致しますと、ダブルSは6~10、トリプルSは11~20間がその様に表示されます。

 そして今回完成したその術式の魔力消費は、15ほどになります。』


 この術式一つで15ってことは、他にも4つの術式を組込む必要がある訳だから、魔力耐久度19の素材が必要ってことか。

 こりゃあかなり、魔力耐久度を上げてやるのに、苦労しそうだな。


 とはいえ、これで気になっていた点の一つ目は解消。

 用は済んだし、この術式は一旦消しとくか。


 さてお次は・・・


(なあ、Gさん、昨日ダンジョンコアをアナライズしただろ?

 やけに魔力耐久度が高かったけど、あいつ一体何で出来てんだ?)


『あれにはマスターも御存じの魔素クリスタルが使われていましたよ。

 高密度化して硬度と強度が上がっていましたが、素材としては同じもので間違いありません。』


 気になる2点目はあっさり結論が出たな。


 見た感じ、もしかしてって思ってたけど。

 あのダンジョンコアの魔力耐久度は17と滅茶苦茶高かった。

 組み込まれた術式を消去して、転移アイテムの器に出来たら、かなりの近道になるだろう。

 ・・・まあ流石にあのダンジョンコアを使っちまったら、親父に殺されかねないけどな。


 まあ兎に角だ。あれが新たな素材でないとなれば、やはり魔素クリスタルの珠の魔力耐久度を魔石の精錬・融合で地道に上げて行く他あるまい。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 情報確認も終わり、一息吐いていると、店のモニターから興味を惹く言葉が聞こえる。


『え~、先日突如出現した富士ダンジョン1階層の謎の祭壇。今日はなんとあの探索者アイドル、三角桃香嬢が生中継してくれます。』


 おっ、三角さんが出るの?


『早速現場と繋いでみましょう。富士ダンジョンの桃香ちゃ~ん。』


『は~い、こんにちは~。スタジオの皆さ~ん。聞こえてますかぁ。』


 おお、やはりお美しい。

 そして飛鳥ちゃんと違って、お姉ちゃんの方は、もう既に大人のプロポーション。

 かつての清純さにセクシーさまで加わり、今や無敵状態だな、ホント。


『はいはい、心配しなくても、ちゃんと聞こえていますよぉ。』


『いやぁ、ホンッと、ここまで機材を運んで来るの大変だったんですよぉ。』


『あはは、それで桃香ちゃん、現場の状況は、如何ですか?』


『は~い、ご覧ください。今はですねぇ、祭壇にある転移トラップが何処に繋がっているのか、帰還石を持った探索者さん達が、次々とトライしている真っ最中なんです。』


 あれっ、この転移トラップ・・・似てる。


『というのはですね。この祭壇の転移トラップ、今まで誰が乗っても発動されたことが有りません。』

『そんな訳で、今では謎の祭壇なんて言われているんです。』


『ああ、なるほど。そういう意味の謎の祭壇だったんですねぇ。』


『はい。それでは、私も探索者の端くれ、早速今から謎の祭壇にトライしてみたいと思います。』


『え~、ホント?桃香ちゃん、大丈夫?』


『は~い。ちゃんと帰還石をスタッフさんに用意して貰ったので大丈夫です。それでは行ってきます。』


 さっすが、探索者アイドル、身体張ってんなぁ。


 なんてお気楽な気分でモニターを見ていると、画面は驚愕の映像を映し出していく。


『あれっ?何でしょう。突然床が光り出しましたぁ。これはもしかして、転移トラップが発動してし・・・きゃぁっ!』


 光に包まれた三角さんの姿は、多くの探索者やスタッフが見守る中、忽然と消え去った。


『桃香ちゃん?、桃香ちゃん、ちょっとぉ!』


 スタジオのMCが、三角さんの名前を慌てた様子で叫び続ける。


 えっ、なに?放送事故?

 な~んて、もう俺は、こんなのに騙される歳でもないからな。

 これがテレビ業界で良くある、やらせって奴だろう。

 床が光る細工くらい幾らでも作れるだろうし、渡した帰還石が実は往還石だったとすれば、実に何てこと無い簡単なトリックだし。


『いっ、いやぁ、転移先でトラブルでもあったんでしょうか。まあ彼女は探索者ですし、帰還石も持っているので大丈夫だと信じましょう。

 続報は現地から彼女の帰還報告が入り次第、また中継を繋いでみたいと思います。そっ、それではここで一旦、コマーシャル。』


 へぇ~なかなか迫真の演技で、盛り上げるじゃないか、このスタジオのアナも。


 と、そんな風に思っていたのだが、その後、この番組は30分ほど続いたが、番組中に彼女が帰還石を使って戻ってきたという報告は一切されなかった。


 おいおい、この放送大丈夫か?

 三角さんの中継が終わっても、視聴率を下げたくないってのは理解するけど、最後まで続報が入らないんじゃ、苦情がバンバン局側に行ってるだろ。

 それにやらせにしたって、こんな終わり方じゃ、飛鳥ちゃんが見てたら、本気で心配しちゃうっての、ったく。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○午後11時、霧島ダンジョン4階層、ボス部屋○


カシャ


『ひっさ~つ。ぐるぐるマグナムぅ~。』


パシュンパシュンパシュンパシュン


ヒュルヒュルヒュル


ぎゅおん


グサグサグサグサッ


ヒュルヒュルヒュル


「ストリングスッ。」


スパンッ


ブルンブルン、バチン


 一度倒せたら、もう余裕だな、ここのボスは・・・プロちゃんもいるし。


『チャリン。『カード銃 プロフェッショナル』がレベル4になりました。』


『父さま、あたし今、ちょっと強くなりましたでしゅ。』


 プロちゃんをアナライズしてみると、術式スロットが増え、1スロットの余裕。

 うんうん、少しずつでも、我が子の成長は実に喜ばしい。


 と、店が終わって今日もまた、霧島ダンジョンに潜った俺は、今丁度、4階層のボスの討伐を終えた。

 ここに辿り着くまでに入手した魔石は、このボス部屋の分を含めて60個を越え、前回魔素クリスタルの珠を作成以降、入手した分と合わせれば100個くらいになっている。

 そこでこの結構貯まった魔石を精錬・融合をしておくことにした。


 完成した魔素クリスタルの珠は野球のボールといった感じの大きさ。

 こうしときゃ、持ち運びも楽だしな。


~~~~~~~~~~~~~~

『魔素クリスタルの珠』

説明 :魔素クリスタルでできた宝玉。魔素含有率99%。

状態 :10/10

魔力耐久度 :5

魔力伝導率 :5

術式スロット数 5/5

組込術式 :なし

価値 :★★★

補足 :工芸品

~~~~~~~~~~~~~~


 う~ん、あれだけ精錬・融合して魔力耐久度が2しか上がってないのか・・・

 ミッション期限が1週間ってのを考えると、こりゃ、この先ホントに苦労することになりそうだな。

次回、第二十七話 地球の理を外れた存在。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ