第二十五話 ダンジョンコア
○霧島ダンジョン4階層○
ボスを討伐し、プロちゃんと魔素クリスタルの珠の回収に見事成功。
そして現在このボス部屋には、ダンジョンコアのあるコア部屋へと繋がるであろう扉が出現していた。
ダンジョンコアには興味がないなどと言ってはいたが、事ここに至っては、一目くらい見たくなるのが人情というもの。
早速コア部屋へと入ってみることにした。
四畳半ほどの小部屋の中心に1.2mほどせり上がった台座。
その上に直径25cmほどで漆黒の丸い水晶のような球体が置かれている。
ほえ~、こいつがダンジョンコアねぇ。
初めて見たが、なかなか綺麗なもんだな。
はてさて、ダンジョンコアってやつがアイテムなのかはさて置き、ここはひとつ、アナライズを試してみるか。
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『ダンジョンコアLV4(12%)』
説明 :自律思考型魔素エネルギー運用媒体。
状態 :40/40
魔力耐久度 :17
魔力伝導率 :17
術式スロット数 2/12
組込術式 :魔素吸入術式、魔素変換術式、魔素循環術式、魔力充填術式、魔物複製術式、アイテム複製術式、空間座標把握術式、四次元時空間異空間構築術式、総合データ管理術式、相互通信術式。
価値 :★★★★★★★★
補足 :インテリジェンスアイテム
所有者登録 :女神 マナート
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おっ、やれば出来るもんだな。
『ピロン。『魔素変換術式』を術式リストに追加します。』
『ピロン。『魔素循環術式』を術式リストに追加します。』
『ピロン。『魔物複製術式』を術式リストに追加します。』
『ピロン。『アイテム複製術式』を術式リストに追加します。』
『ピロン。『総合データ管理術式』を術式リストに追加します。』
『ピロン。『相互通信術式』を術式リストに追加します。』
うぉ、よく分からん術式が一気に増えたな。
にしても、ダンジョンコアって、インテリジェンスアイテムだったのか・・・
ってことは、プロちゃんみたいに話したりできるかな?
色々興味深いアナライズ結果だし、詳しく内容を聞いてみたい。
俺はそっと右手でダンジョンコアに触れ、念ずるように話しかけてみる。
(もしも~し。)
『むっ、なんだ、貴様は。我を破壊するために来たのではないのか?』
あっ、良かった喋った。
しかもちょっとプライドの高そうな若い男性貴族っぽい喋り方で。
(あっ、お前を破壊する意思は全然ないから、その辺は安心してくれ。)
『そっ、そうか。それは助かる。我としても成長半ばで、機能停止に追い込まれたくはないからな。』
アイテムの癖に成長って、普通の人が聞いたらどう思うんだろう。
まあプロちゃんのお蔭で、俺的にはインテリジェンスアイテムというものが、成長するって理屈もすんなり受け入れられるけど。
(ちなみにお前が成長すると、ダンジョンってどうなるんだ?)
『我が成長すれば、それとともにダンジョンもまた、より大きく変貌を遂げていく。ダンジョンとは我を成長させるための巨大な魔素の供給システムだからな。』
やっぱ、ダンジョン成長説は、本当の話だったのかぁ。
(じゃあ、最終的には、どうなるんだ?ある程度大きくなったら成長が止まってしまったりするのか?)
(無尽蔵に巨大化するってのは、流石に無理な話だろ。)
『ダンジョンコアの最終形態は神だ。まあ下級神だがな。そして我がそこに到達した時点で、ダンジョンそのものも消滅するだろう。』
ほえ~、ホントかねぇ。
ダンジョンコアが最終的に神様になるとか・・・
にわかには信じられないんですけど。
(しかし、そんな話聞いたことが無いんだけど、本当なのか?)
『うむ、ダンジョンによる神の育成はまだ始まって100年余り。最終形態に到達したダンジョンコアが出現するには、まだ数千年の年月が必要と言われておる。』
『お前が生きている間に、確認できる術は無いやもしれんな。』
そうかぁ。
まあ本当かどうかは別として、死んだあとの事を気にしても仕方ないか。
『それにしても人間。人族のくせに、我と交信できるとは、一体何者だ?』
『我との交信が許されるのは、我が主、マナート様のみのはず。』
あ~そうそう、俺以外に所有者登録できる人が居るのにも驚きなんだった・・・まあ人じゃあなさそうだけど。
それに、うちの親父のこのダンジョンコアに対する所有権って、どうなっちまってるんだろうなぁ。
まあ相手は神様っぽいから、争いにならなさそうだけどさ。
(俺は霧島幸太郎。多分お前をこの場所に設置した人間の息子だ。お前が認識しているかは知らんけど。)
『ほう、我がまだ覚醒直後なのを良い事に、勝手にパワーポイントから、この東方の地へと移動したあ奴の息子か。』
親父・・・意外とこいつからの評価悪そうだぞ。
『だが、あ奴とて、我との交信などできんというのに、貴様が我と交信できるのはどういう理由だ?』
う~ん、そう言われてもなぁ~。
それが分かれば、こっちも苦労しないんだけど。
『マスター、少し失礼いたします。マスターがそこのアイテムと交信できている理由、それはアイテムマスターの能力、『使用条件オールクリア』によるもので御座います。』
(あ~、なるほど。そういう事か。)
確か、アイテムの使用条件に関係なく使いこなせるって話だったし、このダンジョンコアが曲がりなりにもアイテムなのであれば、交信条件が有ろうが、その機能を俺が使えても可笑くない。
(助かったよ、Gさん。)
『いえいえ、差し出がましいマネを致しました。』
『何をゴチャゴチャと言うておる。』
(ああ、ごめんごめん。えっと、俺がお前と交信できる理由は、恐らく俺が『アイテムマスター』ってジョブになっているからだと思うぞ。)
『なんだ?そのジョブというのは?』
(う~ん、いろんな恩恵のある不思議職業?スキル1個取得するより、全然こっちの方が良い感じだし、まあなんつーか、バリューセットみたいなもんだな。)
『ぬぅぅ、なんなのだ、それは・・・もし貴様のいう事が本当なら、これは誠に由々しき事態。』
いや、本当だっつの。
(それでさぁ、折角ここまで来たから、まだまだ聞きたいことがあるんだけど、次の質問いっちゃっていいかなぁ?)
『むぅぅ、人間。確かに貴様は我と交信できる貴重な存在、そして我としても貴様に聞きたい事が山程ある。』
『がしかし今は緊急事態。先ほどのジョブの件を一刻も早くマナート様にご報告しなければならん。』
『また日を改めて来るが良い。その時は時間を割くと約束しよう。』
(えっ、ダメ?)
『・・・・・・。』
あらま~、突然の交信拒絶・・・転移トラップの話とかも聞きたかったんだけど。
でもまあ、拒否られちゃ仕方ない。
ここなら何時でも来れるし、今日のところは引き下がっておきますか。
(そっか。邪魔したな、ダンジョンコア。)
次回、第二十六話 消えた探索者アイドル。




