第二十四話 華麗なる奪還
○午後10時、霧島ダンジョン4階層○
俺はダンジョンの天井を進むことで、一度も戦闘をすることなく、4階層までやって来た。
1~3階層のヒゲモグラは、下床からしか出現しないので、この方法で難なく進める。
そしてこの4階層からは、少し慎重に・・・
モゾモゾ
来たな。
前方右斜め上の横壁が盛り上がると、俺は魔鉄棒の先をそこに向け、狙いを定める。
今っ!
瞬間的に形状変化を施された魔鉄鋼棒は、先が尖った形に変化し、顔を出したヒゲモグラに向かって伸びていく。
グサッ
出現と同時になす術無く串刺しにされたヒゲモグラは、光の粒となって霧散する。
いよぉ~し、旨く行った・・・まずは一安心。
4階層のヒゲモグラを一撃で倒せれば、ボス戦でも何とかなるって話だしな。
ボトッ
ドロップは魔石のみ・・・ホンっとここのモグラは魔石しかドロップしないよな。
と順調に8体目のヒゲモグラを討伐したところで、Gさんから声が掛かる。
『マスター、少し宜しいでしょうか。』
(どうした、Gさん。俺の無双振りに驚いたのか?)
『いえ、あの少し言い難いのですが、その戦闘方法、これからずっと続けるおつもりですか?』
(そのつもりだけど、何か問題があるのか?)
『はい、まあ一度、御自分のステータスをご確認ください。』
へっ、なんだろう?
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名前:霧島光太郎 20歳(175cm 59㎏ B89 W79 H87)
種族:人間
ジョブ:アイテムマスターLV6(61%)
レベル:4(35%)
HP 16/16
SM 12/12
MP 1/12
STR : 6
VIT : 6
INT : 12
MND : 12
AGI : 9
DEX : 18
LUK : 6
CHA : 6
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ふむふむ、あっ・・・・・・MPが1になってる。
『あの戦い方は、毎回アイテムを製作しているようなもの。私としてはレベルも上がって嬉しい限りなのですが、あの、その・・・私のMP消費も普段より多くなってしまいまして・・・』
そういう事か・・・確かにその辺の事、完全に抜けてたな。
がしかしだ。
グビグビ、ゴクン
(Gさん、あんまり気にすんな。今日はMPポーション3本も持って来てるし。まだまだ余裕あるからな。)
と太っ腹な対応をしているが、MPポーションは、結構お高い。
親父の了解を得ていると言っても、それはそれ・・・
『そうでしたか。いやぁ、それを聞いて、私安心いたしました。それではこの調子で、バンバン先に進んで行きましょう。』
(おうよっ。)
当然その後の戦闘で、形状加工の使用は自粛されていた。
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○霧島ダンジョン4階層、ボス部屋前○
ボス部屋の前まで辿り着くと、その入り口は、見事に開かれている。
俺はポーション類と着替えの入った小さ目のリュックを降ろし、この前店舗用に自分で作った剣をその上に置いた。
さ~て、いよいよ本番・・・
こっから先は、ちょっと本気モードで行かせて貰おうか。
ガガガガガコン
ボス部屋に入ると、岩壁が上から降りてきて、退路を塞がれる。
俺は前方に現れるであろう、楽器を持つ4体のヒゲモグラ達の出現を魔鉄鋼棒を構えた状態で待ち続ける。
モゾモゾ
来たっ!
今っ!
尖形の魔鉄鋼棒は、顔を出したヒゲモグラに向かって伸びていく。
グサッ
左端に現れたヒゲモグラは、魔鉄鋼棒に貫かれ、光の粒となって霧散する。
まず一体っ、これで状態異常にされる危険は回避できた。
と狙いを定めていると、次なるヒゲモグラは、以前出現した位置には、何の変化も起こらない。
・・・1体倒したことで、パターンが変わったか?
そして周囲を警戒していると、後方の床がモゾモゾと盛り上がる。
そこっ!
俺は持ち手を変えることなく、魔鉄鋼棒の後端を尖形に変え、その先端を伸ばす。
グサッ
二体目っ。
そして今度は左右の壁から同時に出現。
甘いっ。
横一線に持ち替えた魔鉄鋼棒の両端を尖形に変え、左右を同時に伸ばすと、2体のヒゲモグラの腹を同時に貫通させる。
グサッ、グサッ
あとはメスヒゲモグラだけ。
すると前方5mの床がゆっくり盛り上がる。
モゾモゾ
来たっ!
今っ!
キーン
そこっ!
キーン
もう一丁っ!
キーン
俺が放った魔鉄鋼棒による突き攻撃は、彼女の持つ曲剣により、見事に防がれ続ける。
そしてその姿を完全に現したメスヒゲモグラは、まるで剣舞の様な動きで、曲剣をクルクルと回しながら、こちらへと少しづつ距離を詰めてきた。
へぇ、なかなか見事な見世物だな。
もう少し見物してやりたいところだが、今日は待たせてる奴が居るから、勘弁してくれよっと。
ブンッ
今度は水平にメスヒゲモグラへと伸ばした魔鉄鋼棒を放つ。
キーン
これは当然防がれるよな・・・がしかし。
ヒュルヒュルヒュル
曲剣と魔鉄鋼棒が甲高い金属音を発した瞬間、魔鉄鋼棒が鞭のようなしなやかさで、メスヒゲモグラの身体に巻きつくと、その動きを封じ込めた。
さよならだ、姫様。
「ストリングスッ。」
スパンッ
瞬間的に極細の鉄線と化した魔鉄鋼棒を勢いよく引っ張ると、メスヒゲモグラの身体は、5つの輪切りに分断され、光の粒となって霧散する。
悪いけど、もう俺には、情けない姿を見せることすら許されないんでね。
『パンパカパーン。霧島幸太郎はレベル5になりました。』
うぉっし、リベンジ完了っ!
ブルンブルン、バチン
最後は、戻ってきた魔鉄鋼棒をベルトの様に腰に巻き付けた。
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ボス討伐が終了すると、親父の言った通り、部屋の中央には宝箱が出現していた。
その上蓋を祈る気持ちでゆっくりと上に押し上げると・・・
「プロちゃんっ!」
声を上げた瞬間には、宝箱の中からプロちゃんを取り出し、まるで愛おしむ様に頬ずりしていた。
『父さまぁ~、寂しかったでしゅ~。』
お~よしよし。
「遅くなって悪かった。プロちゃん、許してくれ。」
『はいでしゅ、父さま。よろこびバイブレーショ~ン。』
ブルブルブルブル・・・
はは、どうやらプロちゃんに、新たな機能が追加されたようである。
次回、第二十五話 ダンジョンコア。




