第二十二話 グラビティエンジニア
○ダンジョンショップ楽輝、地下工房○
翌日昼過ぎ・・・
はてさて、武器の素材、どうやって親父に頼もうか・・・そろそろタイミング的には、頃合いな気がする。
修理仕事は任されたけど、だからと言って勝手に素材を使っちゃ、流石の親父も怒るだろうし。
「おう、幸太郎。そっちの修理は終わったか?」
「ん、いやまああと5分もあれば、終わるけど、何か修理品の数が、昨日に比べて一気に増えてないか?親父。」
「そんくれぇは何時もの事だ。」
あっそ。明らかに多かっただろ、あの量。
ゴソッ
「じゃあ幸太郎、その次は、この魔鉄鉱石を製鉄して、何か店の売り物になるものでも作ってみろ。
できんだろ?製鉄も。
そうすりゃわざわざ製鉄依頼を余所に発注しなくて済むしな。」
「ん、ああ、別にいいけど、俺が店に出す商品を作っても良いのか?
この店に出す武器は、親父の趣味の塊みたいなもんだし。」
「おめぇ、昨日は勝手に武器作って客にまで売っときながら、今更そんな台詞を吐くのか?
それに仕方ねぇだろ。夏子の奴がおめぇにも作らせろってうるせぇし、俺の作ったカード銃をあそこまで見事に作り直されたんじゃ、俺としても立場がねぇ。」
・・・あらら。
「まあ、そういうことなら、適当に幾つか作ってみるよ。」
「ああ、それとだ・・・おめぇ、武器失くしたんだろ?代わりの武器も作っておけ。」
「えっ、良いの?いつもあんなに・・・」
「どうせまた行くつもりなんだろ。あのボスん所へ。」
「えっ、何で知ってんの?」
「おめぇの様子を見てりゃあ、猿でも分かるってんだ、そんなこたぁ。」
親父の方から、こんな事言ってくるとは、予想外にして好都合・・・頼む手間が省けてしまった。
「おっ、おう、そっか。サンキュ、親父。凄ぇ、助かる。」
「うむ、あぁ~、一応言っておくが、店に置くやつぁ、ちゃんと売れるもんを作ってくれよぉ。」
なに照れてんだ?いい歳した親父が。
それに、自分が売れるもん作ってから言ってくれ。。
「うちの店の客層は、知ってんだろ。バカみたいに高スペックな武器なんて、需要がねぇし、うちの客は貧乏探索者が殆どだからな。がっはっは。」
「はいはい。」
おっし、これなら今晩あたり、プロちゃん奪還に向かえそうだ。
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修理仕事を終えると、俺は店舗用に2つほどアイテムを作成してみた。
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『魔鉄の剣』
説明 :高純度な魔鉄製の剣。ATK+6。
状態 :160/160
魔力耐久度 :1
魔力伝導率 :1
術式スロット数 0/0
組込術式 :なし
価値 :★
補足 :通常武器。
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『魔鉄鋼の剣』
説明 :高純度な魔鉄鋼製の剣。ATK+9。
状態 :180/180
魔力耐久度 :2
魔力伝導率 :2
術式スロット数 1/1
組込術式 :なし
価値 :★★
補足 :通常武器。
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店に置くのは、取り敢えず最初だし、こんなもんで良いだろ。
鞘に楽輝の銘も入れておいたし、完璧。
このスペックなら魔鉄の剣は15万、魔鉄鋼の剣なら30万くらいに価格の方も抑えられるだろうし、うちに来る底辺探索者にとっては正に御手頃価格。
きっと完売してくれるだろう。
あっ、そうだ。
店の前に張り紙しとくか。
「剣の販売始めました」とか・・・冷やし中華みてぇだな。
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とまあ店舗用のやっつけ仕事は終わったことだし、プロちゃん救出用の武器製作に移ろう。
待ってろよぉ~、プロちゃん。
と意気込んで、作ったアイテムはこれ。
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『魔鉄鋼の棒』
説明 :魔鉄鋼製の棒。長さ1.8m。ATK+8。
状態 :200/200
魔力耐久度 :2
魔力伝導率 :2
術式スロット数 2/2
組込術式 :なし
価値 :★★
補足 :オリジナルアイテム
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まあ本当に何て事ない魔鉄鋼製の棒ではあるが、俺的には多分これで十分なんだよな。
だって『クイックプロセス(極)』なんてスペシャルスキルを取得した訳だし、状況に応じて、形状変化させれば良いだけの話。
それにこれはあくまでセカンド武器としてのポジション、メインの座はプロちゃんの為に開けて置いてやるのは当然だ。
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はてさて新たな武器を作り終えひと段落した訳だが、前回の死地からの生還における立役者であるこいつにも、ここは恩賞を与えておかねばなるまい。
なんて思いつつ、皮革製重力ベクトル固定ブーツに改良を施し、作業はほどなく完了する。
改良のポイントは、この前プロちゃんが輩出したうん・・・じゃなかった。ゴム素材を使って、ブーツのソウルに改良を施してみた。
エアイン構造のミッドソウル、アウトソウルには、魔鉄製の滑り止めスバイクを埋め込むと今回の改良は終了。
と思ってはみたものの・・・
う~ん、この俺の命を救ってくれたこの恩人に対し、名前の一つも授けてやらないのは、あまりにも失礼な気がする。
Gさんが以前、刻印登録したアイテムが増えると、単体としての成長力が低下するような事を言っていた。
俺はプロちゃんの成長を優先し、これ以上刻印登録をしない方針でいくつもりだった訳だが、この恩人を無碍にすることもまた俺にはできない。
やはりこの皮革製重力ベクトル固定ブーツも刻印登録をしてあげよう。
「お前の名前は、『皮革製ブーツ グラビティエンジニア』だ。」
俺の言葉に呼応するかのように皮革製のブーツはぼんやりと輝き出すと、踵の上の部分に刻印が刻まれていく。
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『皮革製ブーツ グラビティエンジニア』
説明 :ブリリアントアリゲーターの皮革で作られたエンジニアブーツ。任意に靴底を向けた方向に重力ベクトルを固定できる。ATK+5。DEF+10。衝撃ダメージ耐性(小)。
状態 :140/140
魔力耐久度 :3
魔力伝導率 :3
術式スロット数 0/2
組込術式 :魔素吸入術式、重力ベクトル固定術式
価値 :★★★★
補足 :オリジナルアイテム
所有者登録 :霧島幸太郎
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はい残念、やっぱり、インテリジェンス化はしなかったか・・・まあ確率1%って話だったしな。
でもまあ、思った以上に性能がアップしてくれたし、こいつが目覚めるのをゆっくり待つとしよう。
『やりましたな、マスター。ネームドアイテムVOL2『皮革製ブーツ グラビティエンジニア』が誕生しました。』
(やりましたなって言われてもだな、グラビティエンジニアはインテリジェンス化はしてないぞ?)
『いえいえ、これは現在ひよっこのマスターが、アイテムマスターとしてまた一歩、一人前に近づいたという事をお喜び申し上げてるだけで御座います。』
ふ~ん。
『ピロリロリーン。ジョブ『アイテムマスター』がレベル5になりました。』
なんだ、自分のレベルアップに繋がるから、喜んでただけだな、こいつの場合。
にしても、またGさんにレベルアップを先行されたか。
魔物を倒さなくてもレベルアップすんのは、何か狡いよなぁ。
『マスター、朗報です。久しぶりのミッションです。』
はい?
次回、第二十三話 二度目のミッション。




