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第十八話 進化する玩具

○霧島ダンジョン3階層○


『父さま。あたちもその石食べたいでしゅ。』


 う~ん、アイテムに食欲があるってのは、どうなんだ?


(ん、どうした、プロちゃん。これは食べ物じゃないぞぉ。)


『でも、とっても美味しそうでしゅ。』


 とはいえ、この魔素クリスタルの珠は所謂強化素材。

 インテリジェンスアイテムにとっては、とても美味しい食べ物みたいに感じるのかもしれない。

 にしても、魔石には見向きもしなかったプロちゃんが、この変貌ぶり・・・結構グルメなのかも。


(分かったよ、プロちゃん。ほれ、ほれ。)


 確かに、異世界への道が経たれたとはいえ、転移アイテム作成の他にも、まだまだ色々と活用できるこの魔素クリスタルの珠。

 しかし、このように強請られては、断れるはずがないだろう・・・だって可愛いし。


『わ~いでしゅ。』


 と俺が魔素クリスタルの珠をプロちゃんに融合してやろうとすると・・・


『お待ちください、マスターッ!』


(どうした、Gさん。プロちゃんにこれを上げるのが、羨ましいのか?)


『そっ、そんな訳ありません。いいですか、マスター。

 その魔素クリスタルの珠をプロフェッショナルに融合すれば、素材強度の低下を招き、プロフェッショナルの耐久度は格段に減少します。

 そのように安易に、パワーストーンを与えるのは、危険と私は言いたかったのです。』


 へぇ~、そうなのかぁ。


(じゃあどうすりゃいいんだ?このままじゃプロちゃん可哀相だろ。)


『はい、ですから世にあるアイテムの多くは、融合ではなく、埋込型にしているものが多いのです。

 融合は原則として同一素材の場合に使用するものだと、ご理解下さい。』


(あ~、言われてれば、そうだな。悪かったよ、Gさん。)


 気を取り直し、俺はプロちゃんのグリップ部に魔素クリスタルの珠を埋め込んでやる。


『うぅぅぅ、漲るでしゅぅ。』


 そうかそうか、漲ったかプロちゃん。

 いや~、一気に気分が晴れたなぁ・・・だって俺の心は今、満たされているから。

 この程度の魔素クリスタルの珠くらい、またいくらでもヒゲモグラを倒して作ってやるさ、はっはっは。


 さてさてプロちゃん、強化素材を埋め込んだ効果はあったかな~?


~~~~~~~~~~~~~~

『カード銃 プロフェッショナルLV2』

説明 :超頑張り屋さん。お喋り覚えたでしゅ。あとは乙女の秘密。

状態 :おなかいっぱ~い。

魔力耐久度 :5

魔力伝導率 :3

術式スロット数 1/3

組込術式 :魔素吸入術式、魔力充填術式

価値 :★★★★

補足 :インテリジェンストイ

所有者登録:父さま


【機能】

『お喋り機能』

種類 :パッシブ

効果 :装備時にいつでも、思念によるお喋りができるでしゅ。

『カード自動回収』

種類 :アクティブ

効果 :散らばったカードを自動回収しちゃうでしゅ。


【必殺技】

『ぐるぐるマグナム』

種類 :アクティブ

効果 :カードにスピンを掛けてぐるぐるさせたら、狙いは絶対はずさないでしゅ。ついでにぐるぐるで威力も上がっちゃうでしゅ。

~~~~~~~~~~~~~~


 うんうん、おなか一杯かぁ、良かったねぇ。

 おっ、よく見れば、術式スロットも一つ増えてる。

 となれば、我が子の為に取って置きの術式を組込んだやりますか。


 と、早速、空スロットに博物館の初代種子島から入手した空圧操作術式を組込んでやると・・・


『でっ、出るぅ~。もう我慢できないでしゅぅ~。』


 えっ、何が?


ボットン


 まるで老廃物を排出するかのように、床に落ちたのは黒い物体・・・これ、うん・・・

 と思ったら、プロちゃんに使われていた、強化ゴム素材だった。


『チャリン。『カード銃 プロフェッショナル』がレベル3になりました。』


『父さま、あたし、いきなり超パワーアップしたでしゅ。』


 そりゃそうだろう、空圧動力なら、火薬を使った銃と同じ原理で発射が可能。

 今までのゴム動力とは、比べものにならない威力でカードを撃ち出すことが出来るはず。


カシャ


バヒュ―-ン


ビュゥ――ン


ザクゥゥッ!


 へっ、こんなに凄くなっちゃうの?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


~~~~~~~~~~~~~~

『カード銃 プロフェッショナルLV3』

説明 :ちょっとおませさん。お喋り機能追加。あとは乙女の秘密。

状態 :もっと遊びた~い。

魔力耐久度 :6

魔力伝導率 :6

術式スロット数 0/3

組込術式 :魔素吸入術式、魔力充填術式、空圧操作術式

価値 :★★★★★

補足 :インテリジェンストイ

所有者登録:父さま


【機能】

『お喋り機能』

種類 :パッシブ

効果 :装備時にいつでも、思念によるお喋りができるでしゅ。

『カード自動回収』

種類 :アクティブ

効果 :散らばったカードを自動回収しちゃうでしゅ。


【必殺技】

『ぐるぐるマグナム』

種類 :アクティブ

効果 :カードにスピンを掛けてぐるぐるさせたら、狙いは絶対はずさないでしゅ。ついでにぐるぐるで威力も上がっちゃうでしゅ。

~~~~~~~~~~~~~~


 ふむふむ、そうかぁ・・・魔力伝導率が倍に跳ね上がったんだな。

 おまけに魔力耐久度も上がっていたりするし。


 でも術式一つ加えただけで、こんなになるもんなのか?


(なあGさん、プロちゃんの魔力伝導率が一気にかなり上昇したんだが、理由は何だと思う?)


『はい、インテリジェンスアイテムがレベルアップ時以外に、理由もなく自身のスペックを向上させる事は、通常ありません。

 そして空圧術式を組込む行為にも、スペックアップする効果が無いのは明らかです。』


 だよなぁ。


『しかしここまで劇的なスペックアップというからには、その原因が必ず他にあるはずです。

 その点を踏まえて考察した場合、やはり一番の要因は空圧操作術式を組込んだ事。』


 いや、それは否定したばっかだろ。


『この術式を組込んだことにより、プロフェッショナルは自らの意思で、不要となった強化ゴム素材を排出し、それがスペック強化に繋がったと見るべきです。

 何故なら、あの強化ゴムという素材は、単体素材としては魔力伝導率がゼロに近い素材でしたから。』


 あ~、はいはい。あのゴム素材が足枷になってたって考えれば、確かに。


『とはいえ、プロフェッショナルの使用素材と今現在のレベルから考えますと、このスペックは想定される数値以上に高いものと言えます。』


 ふ~ん、何か嬉しい。


『その点については、明確な回答はできかねますが、恐らく魔素クリスタルの珠を組み込んだ際の効果もまた、強化ゴム素材により十分にその効果が発揮できていなかったと見るべきかもしれません。』


 お~、なかなか鋭い考察だねぇ。


(流石、Gさん。とても分かり易かったわ。)


『いえ、お役に立てて何よりです。』


『とっ、父さま。あたしは、もっと遊びたいでしゅ。』


 お~、プロちゃんやる気満々だな。


(分かった。分かった。)


 それじゃあそろそろ、この新生プロちゃんの実戦投入と行きますか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 再び3階層の通路を歩きだすと、ほどなく15mくらい前方の床が盛り上がる。


カシャ


『ひっさ~つ。ぐるぐるマグナムぅ~。』


バヒュ―-ン


 見違えるような発射速度、風を切り飛翔するカード、飛距離にかなりの余裕を感じる。


ブォン、ブルブルブルゥー


ぎゅおん


グササササッ


 レベル3ヒゲモグラの喉元を切り裂いたカードはその勢いのまま、ダンジョンの横壁へと突き刺さった。


ザクゥゥッ!


 通常時より数段上の威力・・・

 レベル3ヒゲモグラを一撃・・・

 今迄元の威力が低すぎて、よく分からなかったが、これが本来の『ぐるぐるマグナム』の威力って訳か。


 フッ・・・これはもう玩具とは言えないな。


(やったなぁ、滅茶苦茶凄いぞぉ。)


『えへへ~、ご無沙汰でしゅ。』


 うん、そこは「それほどでもぉ」だ、プロちゃん。

次回、第十九話 変り種のボス。

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