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第十七話 魔素クリスタルの珠と砕け散った夢

○翌日、霧島ダンジョン3階層○


 1、2階層を難なく突破し、3階層に降りて、待っていたのは、グラサンを掛け、顎下の髭がピヨ~ンと10cmほど下方へ伸びた、如何にも経験豊富といった感じのお爺ちゃんヒゲモグラ。


ぎゅおん


グサッ


 そいつ等を『ぐるぐるマグナム』3回で倒すと、ドロップしたのはちょっといつもより大きい魔石。

 恐らくこの大きさなら、極小魔石ではなく、小魔石に分類されるだろう。


 そろそろパワーストーン1個分くらいにはなったかな?


(Gさん、魔石の精錬と融合って『オールプロセス(極)』で出来るよな?)


『そんなの確認するまでも無いですよ、マスター。』


 じゃあそろそろ、スペシャルスキルの力って奴を試してみるか。


 とその前にここで、魔石関連の話を少し。


 魔石というものは、この地球のダンジョン内に於いて、魔物を倒すとドロップする水晶の様な丸い石。

 この魔石の主な利用のされ方としては、錬金士が属性エンチャントを施すことにより、様々なエネルギー源として活用されている。

 通常ダンジョン外では直ぐ使用できなくなってしまうマジックアイテムも、この魔石が埋め込まれたタイプなら長時間使える。

 そしてうちの解析メガネを例に取れば、メガネケースに魔石があしらわれていたりと、まるで魔力の充電機的役割を果たし、その活用形態は様々である。


 一方、魔石の精錬や融合は、魔素含有率が上がり、小粒な魔石であっても大きな価値が生まれるといった夢の様な技術。

 しかし残念ながら、今現在科学的な手段では、その実現には至っていない。

 と言っても他に手が無い訳ではなく、今現在唯一それが可能な方法、それが『錬金』スキルを使うやり方である。

 しかし、この『錬金』スキルを使う方法にも欠点が存在する。

 それは『錬金』スキルで精錬をした時に起こる劣化問題。

 『錬金』スキルの精錬は回数を重ねるごとにその純度を増すことが出来る。

 しかしその反面、精錬を繰り返していくと素材強度が脆くなり、使用に耐え得るレベルを遥かに下回る結果を生んでしまう。

 それ故、強力な魔物と闘って得た天然の高ランク魔石の価値は未だ健在であり、探索者協会の基準範囲を上回る大きさの魔石ともなると、その価値は一気に跳ね上がったりするのである。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 さて今現在、俺の手元には、極小魔石が18個と小魔石が1個。

 アイテムアナライズをしてみると、魔素含有率の方は、多少ばらつきはあるが、極小魔石が2%、小魔石で4%といったところ。

 この国の探索者協会の買取基準では魔石の大きさと魔素純度の2つの基準を採用して査定額を算出している訳だが、この値では魔素純度は最低ランクのDだろう。


 はてさて、そんな低純度の極小魔石を無造作に一つ手に取ると、俺は『オールプロセス(極)』による錬成処理を1回施す。


 すると錬成後の魔石は砂粒程度にまで小さくなってしまった。


 流石にこれ以上錬成を繰り返すのは無理だな。


 そんな感じで少し諦め加減に作業を進め、最後はその砂粒すべてを融合する。

 そうして最終的に出来上がったのは、直系1cmにも満たない小さな無色透明のガラス玉といったもの。


 あれだけあった魔石が、こんな小さいビー玉か。

 まあ最低ランクの魔石だし、こんなもんか・・・・


~~~~~~~~~~~~~~

『魔素クリスタルの珠』

説明 :魔素クリスタルでできた宝玉。魔素含有率99%。

状態 :10/10

魔力耐久度 :2

魔力伝導率 :2

術式スロット数 2/2

組込術式 :なし

価値 :★★

補足 :工芸品

~~~~~~~~~~~~~~


 あ~、道具化現象起こっちゃってるんだ。

 名前まで変わってるし。

 ってあれっ、魔素含有率99%って、有り得なくないか?

 『錬金』スキルの精錬じゃあ、1回で純度が倍になる程度・・・

 まあ質量的にはかなり減っちゃってるけど、錬成は各魔石につき1回づつしかしてないのに。

 それに確か協会基準で最高ランクのSでも、魔素含有率は40%以下だったはず・・・

 ってことは・・・嘘っ!

 これ、『錬金』スキルの遥かに上を行ってるだろ。


(Gさん、この魔素クリスタルの珠は、流石にパワーストーンの代わりになるだろっ!)


『いえ、代わりにはなりません。』


 えっ、そんな・・・


『魔素クリスタルは、正真正銘のパワーストーンですから。』


 そっ、そうか・・・ったく、一々紛らわしい言い回しするんじゃねぇよ。

 でもやはり俺が思った通り、魔石はパワーストーンとしての価値があったって訳だ。


『ですが、その珠の価値としては、その大きさですと、まだそれほど高くは御座いません。

 魔素含有率が高いとはいえ、とても小さいですし、含有魔力の総量は少ないですから。』


 ああ、分かってるよ。


(つまり、もっとたくさん魔石を集めて融合させろってことだろ?)


『はい、そうすれば、その珠の魔力耐久度や魔力伝導率も上昇して行きますし、より高価なパワーストーンになります。』


 よしっ、ビンゴッ!


 くぅ~、俺はその言葉を待ってたんだよ、Gさん。

 つまりこれで俺は、ミスリルなんか手に入らなくても、凄いマジックアイテムが作れる男になった訳だ。

 ムフフ、ようやくスタートラインに立てた気がするなぁ。


 いよ~し、これから何を作ろうか。

 マジックバックとか?

 いやいやそんな訳ないでしょ、幸太郎さん。

 ここは間違いなく、転移アイテム一択、うんうん。

 それで晴れて俺は、憧れの異世界、惑星モースにだって行けるようになる訳だし。

 うぁ~、これまた夢が無限に広がっていくぅ~♪


(なあ、Gさん。前に話した惑星モース。これで向こうに行ける目途がついちまったな。)


『と申しますと?』


(何すっとぼけてんだ?Gさん。転移術式の術式データは取得済み。そしてそれを組込む素材も今回こうして手に入れる目途が立った。

 つまりは、もうちょっと頑張れば、転移石の様なマジックアイテムを作って、惑星モースに行くのも可能って事になるだろ。)


『いえ、無理ですけど、何か?』


 えっ、嘘。

 密かにずっと楽しみにしてたのに・・・異世界転移。

 そしてもう、あそこの岩柱から降りるために、グラビティブーツなんてものまで作成済みだぞ、こっちは・・・


(何で無理なんだ?転移石の説明には、過去に見たことのある場所なら、どこでも転移可能って出てただろっ!

 そして俺は、Gさんが前に言っていたように、あの神殿の外へと足を踏み入れているんだぞっ!)


『あ~はいはい、マスターも少しは冷静に。これからご説明しますから。

 と言ってもその理由はたった一つ、転移術式ですね。一度ご自分でその術式をアナライズしてみて下さい。』


 はぁ、そんなの見ても仕方ないだろ、ったく。


~~~~~~~~~~~~~~

『転移術式』

説明 :物体を瞬間転移する術式。最大転移範囲は同じ星内。

術式ランク :S

~~~~~~~~~~~~~~


 ・・・何、この最大転移範囲は同じ星内って。

 今更ふざけんなよっ!


(なあGさん。この術式ランクSの術式でも、惑星モースに転移はできないって言うのかよっ!)


『そうですね。そう説明に出てますし。』


(出てますし、じゃねぇよ。Gさん前に惑星モースじゃ、ミスリルが取れ放題とか、自慢話してただろっ!

 あれは俺が行けないことを承知で、只単に馬鹿にしたかっただけだったのかってことだよっ!)


『いえいえ、そのような事は決して。

 ですがマスター、あの神殿に行ったことがあるのなら、当然、星間転移魔法陣をお使いになったはずです。

 その魔方陣をお使いになれば、簡単に済むお話でしょう。』


 あっちゃ~、そういう認識だったかぁ~。

 そういやこの件、話が尻切れトンボで、そのままだったし、不味ったなぁ、くそっ。


(Gさん、その魔法陣はもう既に、無くなっちまってるんだよ。)


『そうでしたか。その魔方陣が描かれた床をアナライズして頂けていれば、マスターの欲する術式もまた、手に入っていたでしょうに。』


(そんな事、今更言われてもだな・・・はぁ、ダンジョントラップにも、魔法術式が組み込まれてたりするのか?)


『ダンジョントラップというものが何なのか分かりかねますが、魔力による仕掛けには、魔法術式が組み込まれています。』


 へぇ~、『アイテムアナライズ(極)』はそう言うのも対応できんのか。


 にしても、これで完全に異世界転移の夢は砕け散った訳だ。

 はぁ、なんか一気にやる気無くなっちまったな。


『とっ、父さまっ!その珠、美味しそうでしゅ。』


 へっ?いきなりどうした、我が子よ。

次回、第十八話 進化する玩具。

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