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第十話 カード銃 プロフェッショナル

○霧島ダンジョン1階層○


 地下工房から出て、店に繋がる階段ではなく、ダンジョンの奥へと繋がる通路を進んでいく。

 少し暗い感じだが、うちのダンジョンは、光る苔が所々に生えているので、日の出前の明るさくらいは確保でき、それほど視界が悪いと感じる程ではない。


 20mほど通路を先に進んで行くと、下層へと繋がる階段がある。

 一階層じゃ、たま~に低レベルのヒゲモグラという弱いモグラ系の魔物が出る程度のものだが、8年前に出来たうちの地下にあるこの通称霧島ダンジョンは、今や全4階層まで成長している。

 そして下層へと降りて行けば、同種の魔物ではあるが、それなりにレベルが上がった個体も出現するらしい。


 とまあ俺が知ってるうちの地下ダンジョンに関する事前情報はこんなところ。

 何しろ『不運』スキルの所為で、この地下工房すら立ち入り禁止状態だった俺は、この霧島ダンジョンの奥へと進むのは、初めてなのである。


 周囲に注意を最大限に払いつつ、歩いていると、前方3mの床が、モゾモゾ盛り上がる。


 んっ、これは、ヒゲモグラが出現する前兆か?


 すると盛り上がった床に穴が開き、そこから顔を出したのは、チョビ髭にサングラスを掛けたモグラ型の魔物。


 いらっしゃい。


カシャ


パシュン


ヒュン


サクッ


 穴から外れて右30cmほどに刺さったカードに驚いたヒゲモグラは、直ぐ様穴の中に逃げ込んでしまった。

 しかし、また直ぐ別の場所の床が盛り上がる。


カシャ


パシュン


ヒュン


サクッ


 くっ・・・やるな。


カシャ


パシュン


ヒュン


サクッ


 うっ・・・できる。


カシャ


パシュン


ヒュン


サクッ


 ちっ・・・こんにゃろ。


 それから30分ほどのファイトの結果、最後にはカード銃の柄の部分でぶん殴るという、まるで遠距離武器の特性が生かされない攻撃を敢行し、ヒゲモグラの討伐を終えていた。


 はぁはぁはぁ。


 あいつ段々余裕ぶっこいて、最後には鼻くそほじって寝出したからなぁ。

 この幸太郎さんをあまり舐めて貰っちゃ困る。


 にしても、ちょっとこのカード銃を使った実戦は早すぎたかもなぁ。

 全然思ったとこに行かないし。

 それに一々撃ち出したカードを拾って周るのが、面倒臭過ぎる。


 とそこへ突然、直接頭に語りかける幼女の声が。


『レベル上がったでしゅ。父さま大しゅき。』


 なぬっ、幼女?


『チャリン。『カード銃 プロフェッショナル』がレベル1になりました。』


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 不思議なこともあるもので、俺が自作したカード銃がなんと喋り出した。

 それもGさんと同様、俺の頭に直接語りかけてくる仕様である。

 何でも刻印を通じて、俺とこのカード銃のプロちゃんとは、よく分からんパルスで繋がっているとかなんとか・・・

 とはいえ、この点に関しては、二度目の経験なので、俺の方も免疫が付いている。


 がしかしだ・・・この父さま扱いと幼女言葉は如何なものだろう。

 まっ、まあ言う程嫌いじゃないが・・・何故か後ろめたいものが、込み上げて来てしまう。


 う~む、まっまあ兎に角だ、人間の幼女という訳でもないし、ここはセーフという事で、このプロちゃんの事を改めて調べてみるか。


~~~~~~~~~~~~~~

『カード銃 プロフェッショナルLV1』

説明 :超頑張り屋さん。あとは乙女の秘密。

状態 :いっぱいお喋りした~い。

魔力耐久度 :4

魔力伝導率 :2

術式スロット数 2/2

組込術式 :なし

価値 :★★★★

補足 :インテリジェンストイ

所有者登録:父さま


【機能】

『お喋り機能』

種類 :パッシブ

効果 :装備時にいつでも、思念によるお喋りができるでしゅ。

『カード自動回収』

種類 :アクティブ(現在発動不可)

効果 :散らばったカードを自動回収しちゃうでしゅ。

~~~~~~~~~~~~~~


 ふ~ん、魔力耐久度も上がるんだな。

 いやまあそれは置いといて、喋り出した正体は、この『お喋り機能』が追加されたのが、原因か・・・ふむふむ。

 そして・・・

 おおっ、『カード自動回収』か。

 こりゃ願っても無い機能だな。

 にしても折角便利そうな機能が追加されてるみたいなんだが、現在発動不可ってどういうことだ?


(なぁ、プロちゃん、この『カード自動回収』の現在発動不可ってのはどういう意味?)


『現在は使用できましぇん。』


(なんで?)


『わかりましぇん。』


 自分でも分からないのか・・・


『マスター、お話し中、横から失礼致します。その(現在発動不可)の表示は、魔力の供給機構が構築されていないことが原因で起こっていると思われます。

 その問題を解決するには、そのカード銃の空スロットに魔素吸入術式を組込んでやれば良いでしょう。』


(ああ、そうか、なるほとね。助かったよGさん。)


『いえいえ、差し出がましいマネを致しました。』


 となれば、早速術式を組込んでやるか・・・それっ。


『あっ、『カード自動回収』が使えるようになったでしゅ。』


 よし、旨く行ったみたいだ。

 にしても、このプロちゃん自身、自分のことをあまり良く理解できていないんだな。

 Gさんに聞いた方が早そうだし。


(なあ、Gさん。このプロちゃんをこのまま使い続けて行けば、また今回みたいにレベルが上がって機能が増えていったりするのか?)


『はい、インテリジェンスアイテムの機能を増やす手段には、先ほどの様にマスターが術式を組込んで機能を増やしてやる方法と、アイテム自身が成長し、その意思の赴くまま、機能が追加される2通りが存在します。

 通常のアイテムは術式による機能しか持てないという点を鑑みれば、如何にインテリジェンスアイテムが優秀であるかお分かり頂けると思います。』


 うん、確かにそうだな。


『父さま、あたち頑張って、必殺技編み出してあげるでしゅ。』


(おっ、いいねぇ。必殺技。)


 プロちゃんいい子だなぁ。


『あとマスター、プロフェッショナルには、もっと多くの魔力を貯め込める様な術式を組込んであげた方が良いでしょう。

 多機能化すれば、その分魔力の消費は増えますし、その子はどうやらそっち方面の機能には、興味が無いようですので。』


 あ~なにもAランクの術式を組込んだ場合だけに限らず、魔力供給問題はあるのか。

 そして確かにプロちゃんは、魔力供給についてまるで知ってない感じだ。

 となるとその辺の問題は、マスターであるこの俺が、面倒を見てやらねばならないってことね。


『とはいえ、マスターの現状所持している魔法術式は、魔素吸入術式と中級鑑定術式の2つのみ。

 早急に数多のマジックアイテムの見識を重ね、術式データを収集するところから、始める必要があるでしょう。』


 まあなぁ、確かにGさんの言うように、俺の方にも問題ありだ。

 魔力を貯蓄する術式なんて持ってないし、どんな術式があるのかっつう知識もまるでない状態だしな。

 にしてもどうすっかな。

 うちの店じゃ、マジックアイテムの類は高価だし、ほとんど在庫として置いて無い。

 どっかで術式データを効率よく収集して来れればいいのだけど・・・いや待てよ。


(なあGさん。Gさんの記憶に、術式データは残ってないのか?)


 Gさんの先代の記憶にある術式データが使えれば、問題解決だろ・・・うん、俺天才。


『この件に関しまして、そういった抜け穴を探されても無駄で御座います、マスター。残念でしたね。』


(可能性の模索と言いなさい。)


 ダメかぁ・・・まあ他人の記憶を利用するってのも、虫が良すぎる話だな。

 となれば、この際あそこに行ってみるか。

 親父も一度くらいは、行って来いって何時も煩いしな。

次回、第十一話 国立ダンジョンアイテム博物館(素材編)。

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