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第四十八話 裸の少女が立っている

 ミミネをヒュドラに預けることにした。別にかまわないだろ。ほんとうは、このダンジョンの罠だったんだから。


「うわ、薄情(はくじょう)ですよクランさん!」


 うーん、やっぱりそう思う?


「ミミネちゃん、呪いがかかったままなんだよ」


 ステフまで俺に半泣きするような顔をする。おいおい、泣かないでくれよ。だって、ほかにどうしようもないじゃん。金的狙って来るヤンデレ女ミミックとか。


「ずっと操られてるんだよ?」


「分かってるって。ドリアンを見つけて倒せば解けるからさ。とにかく、あいつを探さないと」


 やれやれ、探しものが増えるな。温泉に、ドリアン。ドリアンも温泉を探しているみたいなこと、ステータス画面に書かれていたような。


 あ、あいつのステータス。まだ俺のところにあるな。ステータスカードって、手のひらに戦闘中は吸いつくように収納されるから。持ってることを、ときどき忘れるんだ。


「うわ、ドリアンのレベルが上がってる。さっき別れたばっかだぞ。――マックスの1000近い!」




【名 前】 ドリアン

【種 族】 人間

【レベル】 900 

【体 力】 1000

【攻撃力】 950

【防御力】 900

【魔 力】 2400

【速 さ】 1700

【固有スキル】『従者の呪い』




 ま、魔物じゃないから魔力以外は、すごいってわけでもなさそうだけど。


 あいつ、ほんとに魔王になるつもりなんだろうか。


 このことを(ホワイト)竜神(ドラゴン)ギルドのギルドマスター、レアさんに報告した方がいい気もするけどなあ。


 俺たちはヒュドラのせいで、地下五階に落とされたからどうしようもないし。最下層だぞここ。


 上るのめんどくさいんだぞ。最難関だぞ。俺ならここまで来たのなら、いっそクリアしちゃうぞ!


 悩んでいると、硫黄(いおう)の臭いが流れてきた。空気もさらに熱くなっている。また汗が流れてくるので、そでで顔をぬぐった。気持ちを引きしめるべく、耳をすます。


 魔王がいるかもと、うわさされる、最下層獄炎(エシュトア)ダンジョン。


 ゴウゴウと風の音。ギイギイという不気味な音に、ガウウウという叫び声。あれらはすべてSランク級のモンスターの存在をしらしめている。長く同じ場所に留まり続けるのは、きわめて危険だ。


「ヒュドラ。ミミネが正気に戻るまでよろしくな!」


 ギャウギャウ!


『おう、任せとき』


 いい、ヒュドラだったな。




 温泉を探るべく壁に目をこすりつけるようにして透視する。


 うは! いきなり見えました。少女の裸!


 なんでだ! 誰だ! まっすぐ伸びる背筋! きゅっとしまる腰。美白ううううううう! 天使かあれは! ああああん、もうふざけんな! 腰から下が見えないじゃん。


 岩が邪魔! 


 壁の厚さ十センチの向こうに、ピンポイントで裸の少女が立っているなんて奇跡だ! 


 ドストライク! 最下層獄炎(エシュトア)ダンジョン万歳! 


 う、うわ、こっち、振り返ってくれないかな。穴が空くほど見つめてやるからさー。


 む、胸……。手で隠すなよ。そこは、赤裸々に行けよぉ。一人なんだろ? でも、恥じらった感じできょろきょろ周りを見まわしている。みぐるみ、はがれたのかなぁ?


 うわああああああああ、だ、誰が、そんな……。大胆なことををををおおおおおおおお!


 俺だって恐れ多くてできやしない! 服を引きはがしてもいいって相手に言われたとしても、できっこない! 


 自分で目隠しして、そこからチラ見するわー。そう、のぞきの神髄(しんずい)って。丸見えじゃ駄目なんだよ。


 チラ見するからいいんだよ。


 俺が見てるぞって実感がわくことと。誰にも見られてないよな? っていうスリルを味わうもんだろう! 誰が、彼女を丸裸にしやがった!


 か、壁の向こうに急いで回らなければ。えーっと、壁沿いを伝えば行けるのか? なんとしても彼女の元へ! 


 俺が救いの手を差し伸べる! 急げ俺! 俺のローブで彼女の裸をくるんでやれ!


「今、会いに行きます!」


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