ショートストーリー 男のロマン
「真っ赤なー、マーラに、アイツが口づけー……んんんんんーっ……たとえるならー空をかけるー裏筋ーの流れ星ー!」
僕は大好きな歌を口ずさむ。男のロマンの歌だ。有名なフィクションの泥棒の孫のアニメの歌だ。それを魔改造したのを歌っている。
なぜ僕がこんなに上機嫌かと言うと、僕は今日は1人っきりなのだ。なぜかいつもしつこく付き纏うミコもネネも居ない。だから今日は男のロマンを実現しようと思う。
男のロマン。男なら一度は夢見たことがある事。透明人間になってか、または女の子になって女風呂に入る事。影の世界の風呂も女風呂と言えない事も無いが、あれはノーカンだ。基本的に水着着用だからあそこはスパというものだろう。
もっとも当然ながら覗きは犯罪だ。けど、女の子が女風呂に入るのは当たり前の事だ。今の僕はさっきシャワーを浴びたから体は女の子だ。僕の元ネタのキャラはお湯に入ったら男に戻るけど、僕は反対だから女の子のまま暖かい風呂に入れる。けど、水を浴びたら男に戻るからそこだけは気をつけないと。この変な呪いにかかってから良いことはなんも無い。だから、今日は女風呂に入るというスリルを味わってそれをチャラにしよう!
携帯でターゲットを絞る。そばに大学があってここから三つ先の駅。さすがに知り合いとバッティングしたら気まずいから、少し遠出する。今の僕は確かに可愛いけど、男の僕の面影を残しているから知り合いにはバレるかもしれない。あと、大学のそばというのは若い女の子が居る可能性を上げるはずだ。サウナが好きな女の子も最近多いらしいからな。
僕はドキドキしながら電車で移動する。僕は女ものの服はセーラー服しかもって無い。ミコとかサクラたちの前ではなんとも無いんだけど、こういう公共の場だとなんかビクビクする。このスカートってまじで不便。すぐ捲れる。正直女の子って凄いなと思うこれ、常に気を張っとかないと、すぐパンツ見えるぞ。
そして、駅から出て目的地に向かおうとしたとこで、いきなり肩をガシッと掴まれる。げっ、もしかして痴漢?
「タッキちゃーーん。何してんのー」
振り返るとミコ。なぜここに!
「用事があるんだよ」
「用事って何?」
「お前には関係無いだろ」
「大ありよ。信じてたのに。ヘタレだって」
「んー? 誰がヘタレだ。で、なんなんだよ」
ミコはバッと僕のバッグを奪うと、開けて中身を見る。げっ、見られちまった。中はお風呂セットとタオルと下着だ。
「これ、なんなの?」
「スポーツジムに行こうと思ってだな」
「ジムにはシャンプーもボディソープもあるわよ」
「いやー、初めてだから知らなかったよ。それに僕は自分の気に入ったやつじゃないとね」
「タッキの家じゃみんな共用でしょ、それとは違うやつじゃない。それに、逆になんであたしがここに居ると思う?」
そうだな。なんでここに居た? つけられてた訳じゃないし。偶然にしては出来すぎだ、こんなの予知能力でも無いと無理だ。ん、予知能力? そう言えばさっきからこっちを見てるサングラスの女の子が。あれってサクラじゃねーか。と言う事は、全部バレてる? サクラがこっちに向かって手を振っている。
「分かったでしょ。サクラがね。もしタッキが1人になったら女風呂に覗きに行くって言ってたのよね。けど、あたしは絶対そんな事無いって思うからサクラと賭けたのよ。一万円……」
まじか、なんでそんなしょうも無い賭けを。
「しょうが無いだろ。ほら、一度は行ってみたいものだろ。そうだ、もし、ミコが男になったら男湯に入ってみたいだろ」
「いやいや、それはないわー。もし男になったとしても、おっさんとは一緒に入りたくないわ」
「ほら、そうだろ。僕もおっさんとかとお風呂はいるよりは、女の子との方がいいんだよ」
「そっかー。それならしょうがないわ。ってならないわよ。だーめー。そんなに女風呂入りたいならサクラ達の基地に行けば良いじゃない。じゃ、帰るわよ」
それからも僕が女風呂に入ろうとするのはミコにことごとく阻止された。こりゃ日本じゃなくてラグナフェンで隠れて行ってやる。あっちなら、なんか高性能なマジックアイテムとかでなんとかなるんじゃないだろうか? 僕は頑張る。男はずっと夢とロマンを追い続けるものだからな!
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