第八話 出発
「なぁ、あんた達、荷物放り出して来たって言ってたけど、美味い食いもん入ってたのか?」
さすがに違うものを食べたい。
なんか彼女らはやたらゴブリンにビビってるが、僕からしたらガンで一撃だ。ウルルは格闘では僕よりかなり強いが、実際何でもアリで戦ったら、多分僕はウルルを倒せるだろう。しないけど。やっぱ、飛び道具、しかも銃は偉大だ。
「お前、何言ってるんだ? コロスぞ」
ウルルが超ガンくれてくる。マジ狂犬だな。つい目を逸らす。
「私達の荷物には3日分の保存食と、テントと寝具とかが入ってたわ。保存食はここにあるのよりはずっといいわ」
ライラが答えてくれる。
「おい、ライラ、こんなクズとは話すな。信用ならん。コイツはなんか隠してる」
うん、確かに隠してるけど、普通隠すよな。
「まあ、けど、私には悪い人には思えないわ。助けてくれた訳だし。それで荷物がどうしたの?」
「まあ、荷物を投げ捨てたのは不可抗力だな。もしかして、お前、私達の荷物を持ってきてくれるって言うのか? それなら助かるな。上手く行っても、お前が死んでも私達にはメリットしか無い」
「ウルル、何言ってるのよ。こんな子供より弱そうな人をここから放り出すって、見殺しにするようなものよ」
子供より弱そうは言い過ぎだよな。けど、薄々気付いてるけど、ここはいわゆるファンタジーのような世界っぽい。ここでは子供もめっちゃ強い可能性もあるな。
「確かにそうだが、ゴブリンの目から我々を逸らす事が出来るし、コイツに食べ物をやらないなら、ここに籠もれる日数が増える。生き残れる可能性が増える」
逆に僕はここに籠もったらウルルと揉めまくっていつかはぶち切れるかもしれない。
けど、今の、めっちゃ弱いように見えて、実は隠し持った凄まじいスキルで強いってムーブはなんかいい。ロマンのうちの1つだ。ウォーターガンのスキルは本当に必要に成らない限り隠しとこう。
「じゃあ、僕がなんとかしてあんた達の荷物を探してくる。どこら辺にあるんだ?」
まあ、コイツらの荷物を持ってきたら、少しはウルルの心証を良くする事が出来るのでは? ガツガツ殴られなくなるはずだ。
「さっきお前と会ったとこのそばだ。ゴブリンに持ち去られてるかもしれないが、まあ、行って見てくれ。死んでも私を恨むなよ」
「ダメよタッキ。多分さっきここに来たゴブリンが仲間を連れてやって来るわ。鉢合わせたら、あなた、口に出すのも躊躇われるような目に合うわ」
「だから、その前にあんた達の荷物を取ってくるんだよ。飯だけじゃなくて着替えとかも入ってるんだろ? 荷物あった方がいいだろ」
「そりゃそうだけど、そのためにあなたに命をかけさせられないわ」
「大丈夫だ。さっきゴブリンは三匹倒したって言ってるだろ。まあ、なんとかなるって」
なんとかライラをなだめ、説得した。ウルルが言うには彼女たちは僕たちが出会ったとこより少し奥に荷物を投げ捨てたそうだ。帰って来た時の合図を決める。魔法が切れて会話出来なくなってるので、扉を3度叩いて、「ライラライラライラ」と3回言う事にした。
「じゃ、行ってくる」
僕は棍棒1本だけ手にしている。
「なんだか悪いな。肉まで貰って」
ウルルが少し悲しそうな顔をする。まさかあの臭い肉で感謝されるとは。多分、ウルルは僕とは今生の別れだと思ってるんだろう。
「本当に、本当に気をつけてね」
ライラの目は潤んでいる。多分彼女は、僕が食料を減らした事を気にして荷物回収に行くと思ってるんだろう。彼女も僕が死ぬって信じてるな。なんだかなー。
「これ、僕が帰って来たら返してくれ。戻って来なかったら好きにしてくれ」
財布をライラに渡す。
「えっ、でも……」
どもりながらも、ライラはすぐに財布を受け取る。
「あと、もし、僕が帰って来たら、1食分だけ贅沢しよう。美味いものをたらふく食わせてくれ」
僕はウルルをジッと見る。
「ああ、任せてくれ。美味いもの食わせてやるよ」
ウルルが僕に初めての笑顔を向ける。一瞬、時を忘れてしまう。コイツは乱暴だから気付いて無かったけど、なんか可愛いな。
ウルルが閂を空けて、僕は扉を開く。外には何も居ない。外に出て左手を上げる。振り返らないのがハードボイルドだ。扉が閉まり閂をかける音がする。大きく息を吸い、ズボンのジッパーを下げる。ここからは戦闘だ。僕の事を腹を空かせて待ってる少女たちのために僕は戦う。まあ、夢じゃなかったら、絶対にこんな事しない。ウルルに土下座して小屋に籠もってた事だろう。
森に向かう前に、弾を補充にいく。要は川で水を飲むだけだ。これからの計画は単純。まずは警戒しながら荷物を探す。敵は出来るだけ遠距離から狙撃する。今は撃てる弾は4発だ。水をがぶ飲みする事で、まあ1時間後くらいには弾数が増えるだろう。
警戒しながら川の水を飲み、森へと向かう。スライムを一匹見つけたので、棍棒でぶっ潰してやった。やっぱ素手より攻撃力有るな。
そして、森に入ると、十メートルくらい先に生き物。ん、ウサギ? 角が生えてる。こっちを見て鼻をヒクヒクしてる。多分、こっちが動いたら逃げられる。ガンをスタンバイしてて良かった。
バシュッ!
ウサギの額に穴が空く。一撃だ。近づいて角を手に持ち上げる。モフモフで可愛い。なんか可哀想だけど、貴重な肉を手に入れた。一端戻ろうかと思ったが、荷物を回収してからだ。
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