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第七十話 異能


「それでは、皆さん、恨みっこなしですよ」


 サクラが厳粛に言う。モノクロの世界の中、便所にはピチョンピチョンと水滴の音しかしない。こたつの上に乗った竹筒に入ったコンビニの割り箸に座っているサクラ、シノブ、エマ、サリナが手をのばす。

 コイツらが何の儀式をしてるかと言うと、今日、僕と迷宮に入る人が誰か決めている。割り箸の先に黒い印が入ったのが当たりだ。迷宮には三人までしか入れないそうで、僕、ヒーラーのミコは確定で、あと1人しか行けない。今日は土曜日で休みだから4人とも暇らしく、豚と戦う僕を誰が撮影するのかで揉めている。僕的には誰もついて来ないがベストなんだけど、迷宮に送ってくれるのはエマだから、その要望は飲むしかない。


 クジに使ってる竹筒はシノブのコップだ。彼女は今日も黒づくめで、その持ち物は和風っぽいもので揃えている。そろそろ『ござる』とか言い始めそうだ。あと、僕とミコが来た時にはコイツらコンビニ弁当食べていた。やっぱコイツらやべーわ。幾ら自分らの基地と言えど、僕は便器眺めながら飯は食えない。転移する前はコイツら少し変わってるなくらいだったのに、今は間違いなく変態だ。力を持つと人間変わるものだな。僕はそうはならないようにしよう。


「やったわ。当たった、当たった!」


 サクラが嬉しそうにクジを掲げている。最悪だ。コイツとだけは一緒に行きたく無かった。サクラはミコ同様何をするのか行動が全く読めない。ミコとサクラ、2人が絡んだらカオスな未来しか見えない。


「ふわぁ。なんか眠いわねー」


 サクラが目を擦る。エマとシノブはこたつに突っ伏し、寝息をかき始めた。サクラもそれに続き頭をこたつに乗っけると目を閉じた。


「あらあら、皆さん、休み前だからって夜更かしし過ぎたんじゃないですか?」


 白々しい事を言ってるのは、錬金術師のサリナ。見りゃ分かる。コイツ仲間に一服盛りやがったな。


「しょうがないですわね。気は乗らないけど、私がついて行くしかないですね」


「気が乗らないなら、来なくていいよ」


 僕はサリナに答える。コイツとはあんまり絡んだ事無いけど、ヤバい奴だと言うのだけは分かる。なんせ、女体化の薬を作った奴だから。他にどんな麻薬を持ってるのか予想だにつかない。

 エマが魔法陣はもう用意してるから、あとは行くだけだ。出来れば置いて行きたい。


「ダメですよ。タッキさんの勇姿を撮影しないといけないですから」


 そう言うとサリナは立ち上がる。制服はしっかりアイロンかけてカチッとしてて、眼鏡にポニーテール。めっちゃ真面目そうにしか見えない。実際学校では大人しく成績も良く、ぱっと見常識人にしか見えない。


「なぁ、ミコ、今日はオーク狩りだから女の子にはちょっときついかも知れないよな」


「そうね、って、あたしも女の子よ。けど、アンタ、戦えるの? 錬金術師なわでしょ?」


 ミコはなめ回すかのようにサリナを見る。


「確かに私は戦闘職では無いですけど、そこそこに戦えますよ。試してみます?」


 ミコとサリナが睨み会う。なんかこれデフォルトだよな。ミコはなんで誰とでも拳で語り合おうとするんだろうか? 動物なのか? 目が合ったら襲いかかるような。


「止めとくわ。今日は戦うかもしれないから余計な事したくないわ」


 ん、なんだ? ミコがおかしい。


「じゃ、行きましょう」


 サリナが魔法陣に入り僕らも続く。なんか甘い香りがするな。ラベンダーのような。



 転移した先は岩を掘ったような洞窟。金属で出来た扉が一つある。今回は明るい。光源は無いけど、昼間みたいに照らされている。


「良かったですわー。硬い壁で。柔らかい材質の壁だったら匂いを吸い込みますから」


 サリナは何を言ってるんだろう。壁の材質って多分サリナはここに来た事あるから知ってるはずだろ。何かを僕に伝えようとしてるんだろな。と言う事は匂い。相変わらずラベンダーのような香りがする。なんかさっきミコが静まったのはもしかしてこれのせいじゃないのか?


「おい、ミコ、なんか変な臭いしないか?」


「ん、もしかしてオナラ出たの?」


「違うわ。僕は女の子と一緒の時は屁はこかねーんだよ。なんか雑誌じゃ人前でオナラする男はモテないとか書いてあるだろ」


「その前に女子の前でそういう話してる時点でモテないわよ。ばっかじゃないの?」


「おい、お前がふってきたんだろ」


「あたしだって男子の前じゃそんな話しないわよ」


「そんな話は置いといて、ほらするだろ花のような香りが」


「するわねー」


「それだけか? おい、サリナ、なんかお前やってるだろ」


「何もしてないですよ。ただ、良い匂いがするお薬を使ってるだけで。ねー、良い匂いがするとみんな穏やかになりますからねー」


 そうだな。いつの間にか僕も今日は豚をぶち殺すっていきり立ってたのに、今は穏やかだ。という事は、こいつ穏やかになる匂いのする薬を使ってるって事か? ヤバいこいつ。飲ませるだけじゃなく、嗅がせる事でも色んなバフ、デバフを使えるのか。しかも今みたいに匂いで思考誘導も出来るようだし。何も考えて無いミコの天敵だな。





 読んでいただきありがとうございます。


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