第五十七話 連携
「まあ、そうね。長沢、眼鏡は弁償して欲しいって言ってるのね。で、幾ら?」
ミコはべちゃっとした髪をかき上げる。悪そうな顔してるなー。
「……二万……」
まあ、妥当な金額だろう。エマは僕らの方を向いてスカートを押さえている。スカートは所々溶けて、手を離すと危険なものが見えそうだ。ブレザーとシャツも溶けて白いブラジャーは見えてるが
そこはガードされてない。ミコ、ありがとう。
「じゃ、これは幾らで買う?」
ミコの手にはパンツ。新品のビニールに入ってるものだ。黒くて小さい。間違いなく布面積が少ないやつだろう。
「おい、お前、いつもパンツ持ち歩いてるのか?」
「まーね。また変態に盗まれたら面倒だから」
そうか。あの多分『アポート』の件、「ミコ、ノーパン事件」の事か……あれは僕に大ダメージを与えた。いかん、ガンが……
「……三千円……」
妥当な金額なのか? 女物のパンツの値段なんか分かんないな。けど、エロいの程高いらしいからな。
「ふーん。あなた、顔に似合わず、ノーパン好きなのね」
「……五千円……」
「そうねー、穿いて無かったら、トイレ行く時脱がないでいいから便利かもねー」
「……いっ一万円……」
「分かった。そんな顔して、あなた、痴女なのねー。タッキにお尻みせたいのねー。へー、痴女って実在するものなのねー。怖い。怖い。」
「分かったわ。まだるっこしいわねー。眼鏡とパンツ交換でいいわよ!」
あ、エマが切れた。そりゃそうだ。パンツと眼鏡じゃ金額が合わない。けど、どっちもどっちだよな。僕は背を向けて、エマはミコに貰ったパンツを履く。
「……うう、帰りたい……けど、スライム……」
エマがぐずってる。コイツは撮影と邪魔しかしないから帰ってもらったり方がいいんじゃ? あ、そう言えばコイツ、スマホどうしたんだろう。撮影出来ないなら帰るんじゃ。
「エマ、スマホは?」
「……無事……」
「けど、もうお前、撮影どころじゃないだろ。先に帰ったら?」
「帰ったら、召喚リストに入らない。パーティーの誰でもいいから倒さないとうちのものにならない」
そうなのか。だからこだわってるのか。
「あと、倒した時の経験値ってどうなるんだ?」
「倒した人にいっぱい入る。けど、パーティーにも入る」
そっか。なら止めを刺さなくても大量の経験値を見込めるんだな。
「じゃ、お前ら痛み分けって事で、まずはシルバースライムを狩るぞ」
「ま、あたしもレベルアップできそうだから手伝ったげるわ」
「……やむなし……」
なんかギスギスしてるけど、最初よりは打ち解けたんじゃないかな。
僕は二人がじゃれてる間に作戦を考えた。
今までうろついたのを参考にすると、ここの構造は正方形の部屋が5×5、碁盤の目みたいな形をしてる。それに一つから四つの扉がついて隣に行けるようになっていて、一つか二つ、扉が一つしか無い部屋があった。そこに上手くシルバースライムを追い込んで、タコ殴りにしたら、例え防御力が高くてもやれるんじゃないだろうか? 一つの部屋を追い込み場所に決めて、そこにミコに待機してもらう。ミコは意気揚々と棍棒を手にしている。シルバースライムが入ったら扉を閉めてと頼んでは居るが不安だ。エマにスライムの位置を聞きながら、部屋の空いた扉を二つだけにしてルートを作って行く。多分追い込んだら奴は空いてる扉に逃げるはず。まさかスライムがドアノブ掴んで引っ張ったりはしないだろう。
そして、目の前にシルバーが現れる。空いてるのは僕らが来た方の扉だけだ。こっから追い込めばミコの部屋まで誘導出来るだろう。部屋の奥をヒュンヒュンとスライムが駆けている。落ち着きねーな。それに、なんか思ったのと違う。涙型で進む方が丸っこくなってる。頭がデカいナメクジのようでキモい。まあ、速度に特化したらお饅頭型じゃなくてこういう型になるのかもしれないな。
「たっちゃん。うちが行く!」
エマが駆け出す。制服のスカートは溶けてパンツ丸見えだ。しかも黒のTバック。ミコのような奴が穿いてても何とも思わないが、こういう可愛い系の女の子が装備すると破壊力抜群だ。けど、どうやら彼女は僕を完全に女の子って思ってるように感じる。んー、また乳首と股間がかゆい。夏じゃないのになー。
エマに追われたシルバーが壁際をギュンギュン移動する。僕は扉から離れると、高速でそこをくぐり抜けていく。そして僕らは扉を閉めながらシルバーを追い込んでいく。幾つもの部屋を通り過ぎながら、上手い事ミコの居る部屋に追い込んだ。僕とエマは扉へ走り込み、扉を閉める。
「うわ、なにこれ。ナマズ?」
ミコが言うとおり銀色のナマズに見えない事もない。
「ミコさん、ソイツをぶったたいて」
「えっ、無理無理早すぎるわ」
ミコが棍棒を振り回すが、全く当てらない。踊ってるようにしか見えない。それにエマも加わるがなんかもうドジョウすくいにしかみえない。二人とも服はボロボロで、破けてるとこが酷くなっていってる。
「タッキ、なにしてんのよ。手伝ってよ!」
ほぼ下着のミコが僕の方を向く。
「いや、誰か扉を守っとかないとだろ」
僕は扉を守っている。サッカーのゴールキーパーのように腰を落として手を広げて。スライムが来たら掴んでやる。
「たっちゃん、危ない」
シルバースライムがこっちに来る。掴まえちゃる。えっ、跳ねた!
「ふごっ!」
スライムの一撃は僕を弾き飛ばす。固いまるで鉄球をぶつけられたみたいだ。よりにもよって、股間にファンブル。ヤバい熱い。これは間違いなく潰れた。エマ知ってたな。サクラか。女の子になるってこういう意味だったのか。僕は余りの痛みに気が遠くなってきた……
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