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第四十八話 異界


「うわ、マジゲームみたい」


 ミコはスマホでポーズ取って自撮りしてる。ここは迷宮の中。石壁に囲まれた小部屋で木の扉が一つついている。なんか牢獄みたいだな。


「遊んでる暇ねーし、それアップ出来ねーだろ」


「少しよ、少し、記念よ。うーい」


 ミコは僕に肩組んで、スマホを向ける。せっかくなんで上目づかいで控え目なポーズをとる。せっかくなんで可愛く写んないと。


 カシャッ。


 見せてくれた写真は素晴らしかった。闊達に笑う美少女と、なんか照れてるみたいに笑ってる美少女。背景は石壁だけど、なんかそれがいい。まあ、これ見てここがダンジョンだと思う人居ないだろ。ミコはパジャマで、僕はセーラー服。どういうシチュだ?


 僕とミコは、召喚士に迷宮まで飛ばして貰った。時間は1時間。それ以内にネネを見つけないといけない。元の世界に戻るには1時間経つかキーワードを言う事。ちなみにネネは片道切符で僕らが一緒に連れて帰るまで帰れない。僕かミコが抱き着いて連れて帰るしかない。


 ここは地下三層。なんか地下迷宮の事は地下一層、地下二層と、階じゃなくて層と数えるのがラグナフェンの習わしだそうだ。地下一層はスライムの世界、地下二層はゴブリンの世界、地下三層はオークの世界だそうだ。


「じゃ行くぞ。あ、写真あとで送ってね」


「じゃ、登録するから携帯出せ」


 そういえば、女の子とアドレス交換するの初めてのような。コイツが初めてっていうのは何でも嫌だ。


「番号教えるからメールで送ってくれ」


「やだよ。めんどい」


 僕もめんどいから携帯を渡す。まあ、エロ動画とか入って無いからな。直接サイトで見るからダウンロードしてない。


「タッキ、つまんないわ。猫の写真しかないの? エッチなのないの?」


「勝手に見るなや」


 テンプレしやがって。


「分かった。エロい画像が欲しいんだな。じゃ、お前が脱ぎやがれ」


「嫌よ。五万、五万円ね」


 五万か、高いが両親に土下座したら。


「分割でいいか?」


「何言ってるのよ。冗談、冗談に決まってるじゃない」


「僕も冗談だ。五万は高い、一万にまけろ」


「一万なら、そうね下着で良ければ」


「ほう、いいのか? 今の下着ならいいぞ」


 今ミコが着てるのは母さんのエロ下着だ。それなら一万は安い。裸並みにエロいからな。家に帰ったら、母さんにもっとエロいの持ってないか聞いてみよ。もしかしたら、大事なとこが空いてる神器を持ってるかもしれない。


「えっ、キモ。何本気にしてるの? だから冗談だって冗談」


 ミコが引きつった顔で、僕から離れる。くそ。芋引きやがったな。


「お前、往生際が悪いぞ、お前が口にした事だろ。後で一万やるから今すぐ脱げ」


 ラグナフェンの未来で僕は変わった。あそこまで人が死ぬのを体験したら、恐怖というものに耐性がついた。そのついでにメンタルが強くなった。コイツへのお仕置きはエロ下着画像を拡散してやる。現役JKのヘビーローテーション。バズるぞ。


「なんかグイクイくるわね。今日は。けどダメー。後金は認めません。先払いでお願いします」


「うるせー。四の五の言わず脱げー。て言うか脱がしたる」


 僕はジリジリと左に移動しながらミコににじり寄る。命がけの戦いを繰り返した僕には今ならわかる。ミコはレベルが高く身体能力が高いだけの素人だ。初撃は右ストレート。それを掴んで脱がす。口紅食わされた恨みここで晴らす。


「ちょっ、何本気になってるのよ。あたしレベル17よ」


「それがどうした。かかって来いや」


「ナメオ。いや、ナメコの分際で生意気だわ。脱がす、脱がして泣かす」


 よしっ。ミコは右手を伸ばして僕を掴もうとする。左にかわしたら、その手が邪魔になって何も出来ない。ここでタックル。ミコに抱き着いて脇をくすぐり地面に押し倒す。


「きゃー、きょきょきょきょきょ」


 壊れた笑い袋みたいにミコは騒ぐ。どうでもいいけど、あの押したら笑う笑い袋って昔流行ったらしいけど、使い途が分かんないな。


 バタン。


 扉が開く音。見ると、誰かが飛び込んで来た。


「ぶっ殺す豚ヤロー」


 血まみれのやたら目がギラギラした少女。ネネだ。


 僕らの時間が止まる。


「何してんの?」


  ネネが冷たい目で僕を見る。


「く、くすぐり?」


「お前、ゲイボーイ。ミコに何してんだ?」


「ゲイボーイじゃない。女装男子だ。勘違いするな。僕は男なんか全く興味ない」


 ヤバい。見てるだけでなんかビリビリくる。今僕の前にいるのはデカゴブリンを遥かに凌ぐ化け物だ。受け答えを間違えたらミンチにされる。僕はゆっくり立ち上がる。


「ネネ。無事だったのね。やっと会えた。帰ろう」


 ミコはヨロヨロと立ち上がり、ネネに近づく。ネネはペタンと床にすわる。シューッと殺気みたいなのが消えたように感じる。


「さすがにボクは疲れたよ。タッキ、本当に君は分からない。さっきはいきなり消えたと思ったら、女装して床で変な事してて、ボクを助けたと思ったら、ゲジゲジ女たちとボクを変なとこに飛ばしたり。何がしたいんだ?」


「んー、僕もわかんないよ。逆に教えて欲しいくらいだよ」


 サクラたちとの事をネネに話す。コイツが暴れ始めたら手に負えないから納得してもらわないと。



 読んでいただきありがとうございます。


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 とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。

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