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第四十二話 無理


「キャーーーーッ!」


 裸のマリンがデカゴブリンに舐められている。

 また戻った。無理ゲーすぎるだろ。今度はウルルは下がれって言ったら素直に下がり、ライラも手伝ってくれない。どういう事だ? そして、デカゴブリンと戦いさくりと殺される。さっきとの違いは? やる気? そうか、僕が絶対になんとかするという意思、それが無いと2人は手伝ってくれないのか。次は気合いを入れ直していく。そしたら2人とも手伝ってくれた。

 マリンを助けてウルルとゴブリンと対峙する。マリンのファイヤーボールがゴブリンに炸裂する。


「僕から行く!」


 ウルルを先行させたら秒殺される。さっきウルルがやられた状況から、ゴブリンの攻撃は突進からの横薙ぎ。受けても殺される。前に出て、大きく後ろに下がる。僕の前を剣が通りすぎ、なんとかかわす。次は僕が両断されたから、上段からの振り下ろし。横薙ぎをかわされたゴブリンはくるっと回ると剣を振り上げる。見えたっ。横に移動してかわしたと思ったら、視界がグラリと揺らぐ。お腹が熱い。今度は僕は横に両断された。


 何度も何度もぶった切られる。ゴブリンの攻撃は横薙ぎ振り下ろしから僕に合わせて変わる。棍棒で応戦しようとしても全てかわされる。ガンを撃っても全てかわされる。

 身体能力が違いすぎる。それに足場が悪いのがさらに状況を悪化させている。ゴブリンは膝下まで水があるのにも関わらず、まるで普通の地面のように動く。けど、僕らは気を抜くと滑って転ぶ。

 流れを変えようと、ウルルと連携してもぶった切られる。ウルルに先行させてもぶった切られる。

 時間は1時間ってサクラは言ってた。けど、毎回殺されるまでに1分も経ってないと思われるから時間はまだあるはず。心が折れそうになる。痛い。痛すぎる。それに女の子たちが惨殺されるのが心を抉る。僕は自分の弱さが嫌になる。

 けど、無駄じゃない。少しづつゴブリンの動きが見えるようになってきた。川の中だから、必ず奴が動く前には水音がする。接近戦では秒殺されるから、距離を取って、一発目、二発目、三発目まではかわせるようになった。けど、その次は突進じゃなくジリジリ距離をつめられてぶった切られる。逃げてるだけじゃやられる。どうにかして、ゴブリンの動きを止めて、フルバーストを叩き込めば倒せるはず。一発目の横薙ぎ、二発目の振り下ろしまでは毎回一緒だ。そのどちらかを受け止め、その硬直時間にゴブリンにガンを叩き込む。これならいけるはず。ウルルから剣を借りて受け止めようとするが、受け止めたら、剣が折れ斬り殺される。受け流したらすぐに次の攻撃で斬り殺される。次は棍棒で試してみる。普通に受け止めたら棍棒ごと叩き斬られた。ならば棍棒を縦に綺麗にゴブリンの剣に合わせる。正解だ。剣は棍棒の中程で止まった。


「フルバーストハイメガウォーターカノン」


 その一瞬の硬直時間に全ての弾を叩き込む。


「ギャアーーーーッ」


 デカゴブリンは叫びながら大きく吹っ飛ばされ、川の深いとこに落ち流されていく。


「なんだ今のは? やったのか」


 ウルルが隣に来る。目の前の川にノーマルゴブリンが堰を切ったかのように飛び込み始める。


 バシャッ。


 大きな水音がする。くそっまじか。デカゴブリンが血液を撒き散らしながら、こっちに鬼のような形相で走ってくる。その左手は失われてる。瀕死だろうけど、それでも僕らじゃ無理だ。


「逃げるぞ」


 僕らは駆け出す。


「うっ!」


 バシャッ。


 隣でウルルが転倒する。


「大丈夫か?」


 引き起こすが、川に大量の血が流れている。


「何かが足に」


 見ると血塗れの白いもの。骨?


 ビュン!


 僕の頬を何かがかする。飛んで来た方向を見ると、デカゴブリンが右手で左手から何かを千切ってなげてくる。やばすぎだろ。ぐちゃぐちゃになった左手の骨を毟って投げてやがる。


「私は置いていけ」


「肩を貸す。急げ。グウッ」


 足に激痛が走る。


「大丈夫ですか!」


 ライラとマリンがこっちを振り返る。


「来るなライラ」


 ウルルの言葉は遅かった。飛んできた何かが、ライラの頭に当たり水の中に倒れる。


「ライラ!」


 駆け寄るマリンも頭に何かが当たって水の中に倒れる。振り返ると、川の浅い所から、デカゴブリンがしゃがんで何かを拾うとこっちに向かって投げる。石か? 頭に激痛が走り、水に倒れ込む。なんとか立ち上がる。近づいてくるデカゴブリン。その後ろには普通のゴブリンがワラワラとついて来ている。もう逃げられ無いな。戦うしか無い。僕はゆっくりとゴブリン達の方に向かう。そして僕はゴブリンに動けなくされて、目の前で三人を殺されたあと、首を刎ねられた。殺す。絶対にコイツら殺す。



「キャーーーーッ!」


 裸のマリンがまたデカゴブリンに舐められている。


 もう、逃げ出すか? いや、諦めない。あと少し、あと少し上手くやれば……


「もう、限界。時間よ」


 サクラの声がする。辺りが白く濁っていく。体の回りがあったかい。やっと終わったのか? なんとも言えない気分だ。どうにかして、仲間と生還したい。けど、もう勘弁してほしい。多分、どんだけ頑張っても僕には無理なんだろう。


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