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 第四話 蛮勇


「かかってこいやー!」


 頭の上で拍手しながらゴブリンに走って行く。まあ、大きな音を立てたら僕に少しは気を取られるだろう。僕は素手だけど、上手く剣の少女と連携取れば2対3、なんとかなるんじゃないか? これは夢だから僕がやられたりする事は無いだろう。

 少女と対峙してたゴブリン一匹がこっちに向かって来る。


 ヒュン!


 後ろのゴブリンが石を投げてくる。これは来るのが見えていたから簡単にかわす。目の前に立ち塞がるゴブリン。棍棒を掲げて振り下ろす。それを斜め前に出ながらかわして、突進力が乗った右ストレートを思いっきり叩き込む。


「グギョーッ」


 ゴブリンは思いっきり吹っ飛ぶ。次はさっき石投げてた奴が棍棒を片手にこっちに向かってくる。それだけじゃなく、女の子と対峙してた奴もジリジリと女の子から離れるとこっちに向かってくる。僕がぶっ飛ばした奴も立ち上がる。


「おーい、手伝ってくれ」


 僕は女の子に手招きをする。言葉が違うみたいだけど、この状況なら意味は伝わるだろう。


「ダー……」


 剣の女の子はそう言うと、ジリジリ下がり、白い女の子に肩を貸して背を向けて走り始めた。そして木々の中に消える。ゴブリンたちはそれを一瞥すると、こっちを向く。


「えっ、まじっ、見捨てられた?」


 そりゃそうだ。命の危険がある時に身代わりが来てくれたらそりゃ逃げるよな。けど、なんていうか悲しいものがある。


「グキョッ」


「ゲッゲッ」


「グワッ」


 3匹のゴブリンがニパーっと笑いながら近づいてくる。丸腰のあまり強そうじゃない人間が1人。楽勝だと思ってるんだろう。

 こりゃまずいな。多分一対一だったら楽勝で倒せたと思う。二対三だったら、女の子が剣を手にしてたから、まあ倒せたと思う。けど、棍棒もった奴3匹相手は厳しい。しかも石投げてた奴は手に石を持ってる。逃げるのもリスキーだ。背を向けたら石を投げつけられそうだ。敵は3匹。弾はあと5発はいける。けど、逆に女の子が居なくなって良かった。見られなくて済む。

 僕は躊躇う事なく、ジッパーを降ろしガンを出す。ゴブリン共が動きを止める。そりゃそうだいきなり何してんだって思うよな。ガンは夢じゃなかったら縮こまって使いものにならなかったかもしれない。だが所詮夢。僕は安全だ。ガンを取り出して手前のゴブリンにゆっくりと狙いをつける。


 バシュッ!


 バシュバシュッ!


 さすが夢の中の僕。百発百中。スライム相手に修行した成果が出た。こきたねーゴブリン共は何が起こったのか分からないって顔で額に風穴を開けている。


『ウォーターガンがレベル4になりました』


 僕はガンを軽く振って収納し、ジッパーを上げる。

 まだまだ強くならないと。せめてゴブリンを素手でワンパン出来るようにならないと話にならない。

 アンモニア臭がするゴブリンたちの所持品を漁る。棍棒三つはいただきだ。あと、僕がぶん殴った奴は腰蓑にきたねー革袋を吊り下げてた。開けてみると、百円玉みたいなのが三枚と十円玉みたいなのが五枚はいってた。石を投げてた奴は腰蓑の中にきったねー鞘にはいったナイフを持ってたからこれもいただく。もう一匹は革袋の中にくっさい干し肉を入れてたのでこれももらう。

 まだ魔物がいるかもしれないので、森に長居はしたくないから、小屋に戻る事にする。



「ガレバッ!」


 僕の小屋の前にはさっきの剣を持った少女がいる。こっちに剣先を向けている。もしかして、ここの小屋は彼女たちのものだったのか? て言うかさっき助けてやったのに警戒してるのか? 戦利品を地面に置いて、両手を上げて近づいてみる。少女は剣で軽く空を突く。「近づくな!」って意味だろう。困ったな。あそこを利用出来ないのなら食うものがゴブリンが持ってた臭い肉だけになる。なんとかコミュニケーション取れないものか。なんだかんだで、ゴブリンから彼女たちを守ってやった恩人なはずなんだけどな。普通だったら、感極まって僕に抱き着いてきて恋が芽生えてハーレムルートまっしぐらでもおかしくないんだけどな。


「ウルルッ」


 部屋の中から白い服の女の子が顔を出す。


「仲良くしよう。僕は敵じゃないよ」


 出来るだけ優しい声をかける。女の子2人とも小首を傾げている。やっぱ言葉通じないみたいだな。


「ラーイ、ルーム、ライ、ライラー」


 なんか白服が歌い始めた。手にステッキみたいなものを持ってる。


「ライル、ライラー、ライラライラライラ」


 おお、杖から白い光が。もしかして、これって魔法か? まあ、夢だから魔法も有るだろ。ん、杖から放れてこっちにユラユラ飛んでくる。もしかしてこれなんか攻撃されてるのか。僕はジリジリと下がる。逃げるか?


「ケラ! ケラ!」


 白服が手を前に出す。僕には待ってって言ってるように見えた。白服は可愛い。可愛い女の子だから信じてみよう。さすがになんか攻撃魔法だと嫌だから、棍棒を手にしてその光に差し出す。棍棒に当たった光は棍棒に吸い込まれていく。そして、なんかが手に入ってきたような。驚いて棍棒を落とすが、暖かいものが手から広がっていく。


「もしもーし」


 白服がなんか言う。聞いた事がない言葉だけど、確かに僕には『もしもーし』って聞こえた。


「ガザン、バ?」


 剣の方は何言ってるか分かんない。


「何したんだ?」


「魔法でーす」


 おお、なんと白服とは意思疎通出来ている。


「あなた、誰なんですかー?」


「二ノ宮、二ノ宮達樹だ」


「『二つの祠に届く木』ですかぁ? なんか長い名前ですね。森人みたいな名前ですねー。私の名前は『ライラ』、彼女は『ウルル』です」


 多分、翻訳アプリのような魔法なんだと思うけど、いい仕事してないな。森人ってなんだ? オラウータンの事か? まあ、それは置いといて。


「ライラとウルルか、よろしくな」


 僕は最高の笑顔を放つ。彼女たちには色々教えて貰わないとだからね。



 読んでいただきありがとうございます。


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