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第三十九話 ノーインチパンチ


「うぐっ!」


 口から息が漏れて声が出る。僕はお腹と頭をしっかり固定され浮遊感を味わう。まずい! このままだと脳天を叩きつけられて負けてしまう。けど、この少女の足で挟まれているという初めての体験が僕の判断を鈍らせた。あ、手伸ばせばいいじゃん。浮遊感が落下感に変わった。僕は両手を伸ばすと、確かな畳の感触。僕は両腕で体を支える。


「中々やるわね。けど、2人分の体重をいつまで支えられるかしら」


 サクラの足が邪魔で、僕の両腕は曲がっている。こんな不自然な格好では力が出ない。


「お前が重いんだよー」


「何よ失礼な。きゃっ」


 顔からサクラの足が離れる。ローションのおかげだ。頭がすっぽ抜けたんだ。僕は両足をつく。目の前にはなんとか着地したサクラの足。考えるより先に体が動いていた。サクラの足の間に頭をねじ込み持ち上げる。


「パイルドライバー返しじゃい!」


 僕はサクラの頭を足で挟み込み、尻もちをつくように倒れる。これで、終わりだ。


 ん、動かない。なんとサクラがさっきの僕のように両手で支えている。しぶとい奴だ。だけど、終わりだ!


「ノーインチパンチ!」


 適当に思いついた技名を叫ぶ。密着したガンからクォーター弾をサクラに放つ。さすがに後頭部を殴られたらこの化け物も動かなくなるだろう。


 ゴッ!


 足の間に確かな衝撃。ローションまみれだから、飛沫の心配はしなくていいだろう。


「きゅー」


 サクラの口から聞いた事がない声がする。なんの鳴き声だ? げっ歯類?


 そして、サクラの抵抗がなくなり、その脳天を畳に叩きつけてやる。


 ボスン。


 地味な音で勝負が決まる。気を失ったのか、サクラの体は力が抜けている。目の前で大股開きだ。スク水の細い処をめくってやりたい誘惑に駆られるが、ダメだそれは犯罪だ。ちなみに彼女の名誉のために一言言うが、全く臭くはない。むしろなんか甘い香りがする。ローションの匂いだろうか?


「勝者! タッキ!」


 シノブがやって来て、僕の右手を上げる。


「いつまで、しがみついてるの」


 シノブが白い目で見ている。なんかやり過ぎた感があるから、優しく動いてサクラを横たわらせる。一応胸が上下してるから生きてはいるだろう。もし、女の子をパイルドライバーで殺したりしたら、新聞の一面を堂々と飾る事だろう。それだけ嫌だ。


「サクラ、起きなさいよ」


 ビタビタビタビタビタビタビタビタ!


 激しくシノブがサクラにビンタを放ちまくる。もしかして恨みでもあるのか?


「ああ、うううーっ」


 焦点が合わない目でサクラが身を起こす。女の子座りで頭をコキコキ鳴らす。タフだな。ほっぺが真っ赤に腫れている。


「うう、いったー。まだ頭がズキズキするわ。ところで、今のはなんだったの?」


「僕の必殺技『ノーインチパンチ』だ。ゼロ距離から物理攻撃する技だ」


「ゼロ距離攻撃って、さっきあなたは手も足も塞がってたわよね。何で攻撃したの?」

 

「企業秘密だ」


 サクラの目線が僕の股間に移る。


「まさかね……」


「奥の手は詳細が知れ渡ったら困る。だから詮索はしないで欲しい。それより、僕が勝ったから、何か言う事を聞いてくれるんだよな?」


「いいわよ。エッチな事以外ならなんでもいいわよ」


 んー、なんでもじゃないじゃないか。確かにスク水巨乳は魅力的だけど、僕も今の望みはそんなのじゃない。僕はサクラの前に座る。


「ラグナフェンに戻ったらどうなるのか知りたい」


「じゃ、その前に、私の予知のスキルについて説明した方がいいわね。スキルを使った者に、可能性が高い未来を経験させるもの。分かり易く言うと、例えば、あなたをあっちに戻る時間に送ったら、それから一定時間、その可能性が高い未来の世界であなたは行動する事になるわ。けど、それは本当の未来ではなくて、イドの海の情報で作られたもの実際に存在するものじゃないけど、全ての五感は働くわ。それにそこで起こる事はほぼそうなる事。だから実際に未来を見るのと変わらないわ」


 ん、要は、コイツのスキルは自分か他人をシミュレートした世界で好きに行動させられるって事か? じゃ、あっちに戻った時にどうやったら上手くやれるか試せるんじゃないか?


「例えば、戻った時間に送ってもらって、僕が失敗したって思ったら、また時間を戻す事は出来るのか?」


「可能よ。私の今のマナだと1時間。その間セーブポイントを決めて、何度もそこに戻れるわ」


 なんだと……


 なんて便利なスキルなんだ。もしかしたらコイツ最強なんじゃないか?


「それで、あなたにお願いなんだけど、このスキルの事は誰にも言わないでね。情報が漏れると、私は狙われるから」


「ああ分かった。けど、そんな重要な事をなんで僕に話すんだ?」


「あなたと敵対したら、私は抹殺される。逆にあなたと敵対さえしなければ、なんとか生き残れるからよ。私たちの事を隠さずに話さないと、逆上したあなたにやられる世界線は幾つも体験したわ。だから、最初に聖書を見せたの。数多の世界線であなたに聖書を見られて仲間たちが散って行ったわ。みんな生存するためには、あなたに最初に聖書を見せる事だったのよ」


 なにが何だか分からないうちに、奴らに聖書を見せられたから、プチおこで済んだけど、普通だったら、あんなもの目にしたら絶対に作者を炙り出して復讐するよな。

 


 読んでいただきありがとうございます。


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