第三十七話 舌戦
「ふざけるな! 人には言って良いことと悪い事があるぞ! 言うに事欠いて、女子のデリケートゾーンが臭いなどと……」
サクラが立ち上がって目を見開いて叫ぶ!
「いや、言ってないし、書いてるし」
つい言い返しだが、あ、これって煽ってる?
「関係あるかボケェ! なにがすそわきがじゃ! 生で匂ってみるか? クサないぞ!」
サクラはスカートに手をつっこんでパンツに手をかける。これってラッキースケベってやつか? なんかラッキー感がないけど。
「サクラ、ダメだダメだ。それだけはダメだ!」
忍者が止めにかかる。
「そうだよな。シノブも匂い嗅ぎたくないもんな。脱いだら臭うもんな」
もう一押しだ。もう一押しで奴は脱ぐ。お宝晒し出しやがれ!
「サクラ騙されないで、大丈夫よ! 臭く無いわ。多分」
「多分?」
「そりゃ誰だって下着は少しは臭うものよ。だってそういうものでしょ? 当たり前よ」
サクラはすーっはーっと深呼吸するとペタンと座る。
「そうよね。当たり前。自分で自分が臭いって感じた事無いし。で、実際はどうなの? 確認してみてよ」
「嫌よ」
「なんで、親友でしょ?」
「じゃ、サクラ、私を嗅いでくれる?」
「嫌よ。なんでよ」
「ほらほら、お互い様だよ。けど、心配しないで、大丈夫だって臭わない臭わない」
忍者とサクラは手を取り合う。つまんねーな。百合展開かと思ったのに。なかなか冷静だな。
「けど、自分の臭いは、自分じゃ分からないって言うぞ」
再点火してやる!
「ムッキー! まだ言うか、このイカレトンテキがっ! 止めるなシノブ、あいつの顔に私のパンツ押し当てて無実を証明するんだ!」
それ言うなら『イカレトンチキ』じゃ? けど、『イカレトンテキ』ってなんかいいな、その言葉いただこう。
サクラは立ち上がり、またパンツ脱ごうとする。それをシノブが必死に止めようとする。醜い争いだな。学校で見る時には大人しい少女だったはずなのに。何が彼女を変えたのだろうか? 力が彼女を変えてしまったのかもしれない。怖い怖い。
「はいはい、もう止めろよ。そんな汚いお前のパンツなんかには興味ないから、脱ぎたいならあとで好きなだけ脱いでいいから。おい、シノブ、デオドラントスプレーもってないのか? それ貸してやったら解決だろ」
シノブはなんかいい匂いがした。多分制汗スプレーの匂いだろう。
サクラの頭がギギッとこっちを向く。
「デオドラントなんかいらんわ! もう許さん! このチービチンカスソチンタンショーカントンホーケーソーローコンジローマキレジイボジジロウアナルフィストファック野郎!」
おお、すげぇ、今コイツが女子の口から出てはいけない汚い言葉がほとばしりまくった。ホーケーじゃなくカントンホーケーという言葉を選んでるのが通だ。ヤツは仮性じゃなくて真性変態だな。
「ほらほら、これでおあいこだ。僕の言葉より、今のお前の言葉の方がより人を傷付けるやつだろ。ネットに書き込んだら即バンされるぞ」
「そんなん知るか! 痴漢で捕まるのはほとんど男だろ。女の子よりも男の方が下品な事いうことの罪が重いんじゃい! お前の言葉の方がより私を傷付けたんじゃ! この腐れネコヤロー」
「ネコだと……? ネコ? ネコ? ネコ?」
つい反復してしまう。さっきの薄い本の悪夢が頭に蘇る。それはそれだけは許されない。サクラの顔にパッと花咲く笑顔。このゲスヤローがっ!
「オドレはネコじゃい! ネコネコ、ニャーニャー、ヌコニャーニャー、ヌコでヌコー、ニャーニャーニャー」
サクラは握った手をクイクイして、ネコダンスを踊り始める。しれっと下品を混ぜやがる。
「ゆるっさん! いてこましたる!」
僕の頭の中で何かが切れた。僕はこたつに駆け上がり両手を広げてサクラに襲いかかるかかる。コイツだけは泣かしちゃる!
「待ちなさい!」
僕を忍者が押しとどめる。
「待てねーよ。こいつを裸にひん剥いても思う存分しょんべんかけてやる!」
僕の頭に浮かぶ最高の尊厳を踏みにじる行為だ。
「それはあなたが勝ったら好きにしなさい。私たちは人間。けものじゃないんだからルールを決めるべきよ。あなたでもサクラでも傷つくのはデメリットしかないわ」
そうだな。そこまでするつもりは無い。サクラを泣かしたらそれで十分だ。
「それなら、ブフで勝負よ。負けた方が勝った方の言うことを1つ聞く」
サクラが何かほざく。ブフ? なんだそりゃ。何をやっても一応僕は男。元ガリ眼鏡陰キャ女子に負ける気はしない。
「おう、ブフだろうがブタだろうが、なんでも来やがれ! 何をしてもお前をコテンパンにぶっ倒してやる!」
「じゃ、決まりね。ブフって要はモンゴル相撲。ルールは二大流派の1つハルハ・ブフのスタイル。ひじ・ひざ・頭・背中・お尻のどれかが、先に地面に着いたら負け。反則は無し。目潰し金的、噛み付きアナル攻め魔法やスキルなんでも有りでいかがかしら?」
ん、シノブの口からもさらりと下品な言葉が。コイツら僕の最悪な本を書いてただけあるな。だが、多分口だけだ。俗に言う耳年増ってヤツに違いない。僕が本物の地獄を見せてやる!
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。




