第三十五話 バイブル
「素晴らしいでしょう」
アイマスクの口角が上がる。素晴らしい事あろかい! 僕は手にした汚物を床に叩き付けそうになったが、なんとか踏みとどまる。曲がりなりにもコイツらは聖書と言っていた。聖書と言うか性書だけど。僕にとっては有害以外のなにものでもないゴミクズでも、彼女たちにとっては大事なものなんだろう。僕は震える手で、忍者に本を返す。
「素晴らしいかは置いといて、このモデルは誰だ? なんかなんとなく僕に似てるような気がするんだが?」
アイマスクが首を傾げる。
「おかしな事を……似てるも何もあなた様に決まってるじゃないですか」
いかん、何かが心の中を渦巻いている。
「じゃ、背が高い2人は?」
「決まってるじゃないですか。西園寺さんと、高倉さんですよ」
ああもうダメだ。我慢できない。
「お前らブッ殺す! 何が悲しくて、西園寺とカズマにほられにゃアカンのだ! そんなにヤられたいんなら、お前らが好きなだけヤられろ! 想像の中ででも人を肉便器にすなや!」
アイマスクは口に手をあてる。
「まあ、恥ずかしがり屋さんなのですね。ふふっ。勘違いされては困ります。私たちは西園寺さんや高倉さんには一切興味は無いです」
「じゃあ、そないなもん作るなや!」
「いえいえ、私たちは、あなたが激しく攻められる事に無償の喜びを見出してるのです。小柄で可愛らしいあなたが、屈強ないけ好かない男共になすがままに弄ばれる。その事を考えるだけで、今日もご飯が美味しい! ああ明日がんばろう! って気分になれます。あなたは私たち影に住む者の希望の光なのですよ」
それに、忍者もコクコク頷いている。コイツのあっち側の人間なのか? 僕が甚振られるのが好きって、まじで腹立つなー。暴れそうになる。という事はコイツらが僕をここに呼んだのはもしかして、僕を西園寺やカズマに生贄として捧げるためなのか? いや、そんな事は無いだろう。カズマは間違いない女好きだ。トチ狂わない限り、さっきの漫画のようにはならないだろう。
とにかく、ここにいたら命じゃないものの危険を感じる。早く切り上げよう。落ち着け、落ち着いて話をしよう。深呼吸して息を整える。
「ふぅ。その話は、まあ、お前らの趣味の話だからもうとやかく言わん。で、お前らがここに僕を呼んだのはどういう理由なんだ?」
「つまんないですわね。もっとゆっくり話をしたいのに、せっかちですわね」
「おいおい、今夜中だろ。それにネネだってまだ戦ってるから、急ぎたいんだ」
「大丈夫ですよ。聖女の魔法が切れたら、豚騎士にはあのゴリラビッチの後ろの穴を開発するように指示を出させてますから。殺しはしません。アイドルとしては死ぬと思いますが。残念ですねー。あなたもあそこに残れば良かったのに」
危ねー、あそこに残ってやられたら、豚相手にさっきの薄い本みたいになるとこだったのか? コイツら敵? 敵だろ。まあ、ネネが豚に易々とやられるとは思わないが、コイツらはネネの安全を交渉材料になにか求めてるって事か?
しょうがない。話をするしか無いか。ネネには借りがあるからな。あいつを甚振るのは僕だ。豚の好きになんかさせない。それに、コイツらも僕を一度は船で見捨てた訳だし。その借りはお釣りをつけて返してやる。
とりあえず畳の端で靴をぬいでこたつに入る。
「分かった。何をすればあの豚騎士を止めてくれるんだ?」
「えっ、何言ってるんですか? 止められませんよ」
「はぁー?」
「ほら、そこにミスズとミサキがころがってるじゃないですか。あんな強い豚、私たちでは呼び出すだけでやっとですよ」
「はぁーっ? じゃ、あいつが駐車場から出たらどうすんだよ」
「大丈夫ですよ。時間が来たら戻ります」
「時間ってどれくらい?」
「頑張って貰ったから、多分1時間くらい?」
なんじゃそりゃ、コイツらあんなヤバい生き物を制御出来て無いのか?
「じゃ、お前ら、あそこに行って責任とって豚を倒してこいよ」
「無理ですっ。ほられるだけ。私が好きなのはほられるのを見ること」
アイマスクは首をふるふるする。
「私も無理だ。私が得意なのは自分より弱い者を甚振る事。格上には全く無力。そんな事より、上を見ろ」
コイツらそろってウンコみたいな奴らだな。まあ、便所を基地にするくらいだからな。
急に上が明るくなる。天井がぼやっと霞む。
「駐車場には私の影カメラを設置した」
天井一面がガラスのように透明になったように見える。僕らの上に豚騎士の斧をかわして、拳を叩き込むネネが見える。
「えっ、なんだこれ?」
「映してるだけだ、上で戦ってる訳じゃない」
忍者はそう言うけど、上はちゃんとカラーで、足音もして、息づかいも聞こえる。上で実際に戦ってるようにしか見えない。うわ、戦うの下から見るのって何とも言えないな。ネネの胸がブルンブルン揺れる。けど、上手に破れたパジャマが先が見えるのを邪魔している。あと、一瞬ズボンが食い込んだり、お尻が揺れたり凄まじいな。その景色がまた天井に変わる。まだ、見たいって。
「ゴリビッチしぶといわね。撮影はまだ後ね」
もしかしてアイマスク、動画を売るつもりか?
「そう、そう言えば要件ですよね。私と取引しましょう」
「取引? 僕には出せるものは
無いぞ」
「あるじゃないですか。私たちが持ってなくて、あなたがもってる素晴らしいものが」
なんか嫌な予感しかしない。このアイマスク、下ネタ以外口から出せないのだろうか?
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