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第二十六話 妖怪


「まさか、あいつがドロップアウトしてなかったとはな。城スタートの俺らですら、地獄だったのに、アイツ、どうやって生き残ったんだろな」


 タケシが呟く。そこら辺の話も聞いてみたかったけど、自分たちは一度タッキを見殺した。あの時は、恐怖に心を蝕まれていて見てる事しかできなかった。だが、逆の立場だったら自分は復讐する。ラグナフェンで学んだ事、やられる前にやる。それは鉄則だ。様子を見てから決められるような生易しい世界では無かった。


「おい、ミノ、起きる前に揉め。起きてから揉んだら、ミコを説得しにくくなる」


「写真いいの?」


「好きにしろ」


「じゃ遠慮無く……」


 暗い笑顔を浮かべながらミノがマコトに支えられているミコに近づく。ポケットから携帯を出す。


「おい、起こすなよ。起きたら面倒だからな」


「分かってるよ」


 ミノは携帯で、下着姿のミコを撮影し始める。


「今から、クラスメートのミコちゃんのおっぱい撮影しますー……」


 ボソボソとミノは実況している。


「けど、その前に、もっと恥ずかしい所を撮影したいと思いますー……」


 ミノは左手の指先をミコの臍の下に伸ばしパンツに指を引っ掛ける。


「おい、まじかっ! それはやり過ぎだろ」


「え、タケシ君見たく無いの? あとで動画送るよ……」


「見たい。わかった。起こさないようにしろよ」


 タケシは意思が弱い。


「ん、んんーっ」


 ミコが唸る。ミノはそろそろと指をパンツに引っ掛けたが、ミコはその刺激で目を覚ます。


「アンタ、何やってるのよーっ!」


「ひっ!」


 ミコの大声にミノは怯む。けど、指は外さない。


「チッ! 起きちまったか」


「えっ、あたし、下着? タケシ、なにしてんのよ!」


 ミコはタケシを睨む。


「アンタ、その指なんなの? 何するつもりなの!」


 パンツに触れているミノにミコは恫喝する。


「ごめんなさい。ごめんなさい。ミコちゃんの生殖器を撮影しようとしてるだけです」


 ミノはビビってミコを触ってた手を戻す。


「……」


 ミコが言葉を失う。えっ、何を撮るって?


「ミノ、そのまま引きずり下ろして撮影しろ。ミコ、お前の恥ずかしい動画、拡散されたく無かったら、俺らの言う事を聞け」


 タケシはダメ元で言ってみる。ミコはビッチだから、効果薄いなと思いながら。


「やっ、やだ、止めてー。撮らないで、脱がさないで」


 ミコはビッチムーブしてるだけで、実はそう言う経験は全く無い。


「えっ、恥ずかしいのか?」


 タケシは素でリアクションする。100人斬りとか言われてるミコのその反応に呆気にとられる。大声に驚いたミノが我に返り、ネトッとした笑みを浮かべ口を開く。


「ダメだよ。二ノ宮君を海に飛ばした報酬なんだから、君は大人しくしてないと……」


 ミノが縛られてモゾモゾ動いているミコに手を伸ばす。


「だめー。止めて、止めて、なんでもするから、許してー」


 ミコは暴れる。体を結んでるのは魔法の縄で動かないが、手首、足首の縄は普通の縄でミコの怪力で緩み始める。


「そう、なんでもするんだね。じゃ抵抗するの止めて。乳頭と生殖器を出した写真を撮らせてね……」


「だから、それは勘弁して。他ならなんでもするから」


 ミコの目から涙が溢れる。それを見て、顔を歪めながら、ミノがミコにのしかかりパンツに指をかける。暴れ疲れたミコの動きが弱まる。


「助けてー。誰か助けてー!」


 ミコが叫ぶ。廃工場に響き渡る。


 ピチョン。


 ピチョン。


 工場の奥から水がしたたる音。


「はぐっ!」


「おげっ!」


 ミノとマコトが変な声を上げる。2人は倒れて動かなくなる。ミコはその2人に挟まれる。なんか生暖かい液体がミノから垂れてかかる。


 ピチョン。


 ピチョン。


 水音がする。そちらから足音も。


「誰っ! 助かったわ」


 もしかして、白馬に乗った王子様? 自分を助けてくれたヒーローに期待しながらミコは首を回して音の源を見る。


「よ、妖怪……」


 そこには、ホラー耐性が低いミコの意識を刈り取るには十分な生き物がいた……


 


「助けてやったのに、妖怪は酷いな」


 僕はミコに向かって歩く。走ると転びそうだもんな。


 海に落ちた僕は、ハイメガウォーターカノンをぶっ飛ばし、なんとか海中から脱出した。しかも海中から飛び出し、運よく防波堤に跳び乗る事が出来た。あと少し威力が強かったら大怪我、弱かったらまた海中だった事だろう。けど、激しくぶっ放し過ぎたので、ズボンもパンツも足を縛ってる縄も飛び散ってしまった。スマホも財布もサヨナラだ。

 そして、近くのボロい建物からミコの声がしたので、覗いてたら、なんか楽しそうな事をしてた。ミコがキーキー言ってて、そういうプレイなんだろなと見てたけど、ミコが泣いてるのを見て、気が変わった。女の子が泣いてるのは可哀想だ。

 さすがにガンで撃ったらアイツらをぶっ殺すかもしれない。確かに奴らに殺されそうになったが、僕は外道ではない。あと弾は2発。僕ならもっと微調整出来るはず。普通弾で、ゴブリンを爆砕したから、ハーフで半殺し、クォーターなら丁度いいだろ。工場に入って仰け反って、ミノとマコトをシュートした。


「お、お前、タッキなのか?」


 タケシが絞り出すように口を開く。


 まあ、ミコに妖怪って言われるくらいだから。そこそこ酷い格好なんだろう。濡れた髪は顔に張り付き、下半身は丸出しで、堤防で転がったから、足は何ヵ所も擦りむいていて泥まみれ。ガンを振る事でいつでもシュート出来るようにガニ股だ。妖怪に見えなくも無いかも……


 けど、格好悪くても生きてればいい。

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