第二十五話 尋問
「お前のスキルは何だ?」
カズマとミコと同じでいこう。
「フォースだ」
敢えて強気に言う。有能なスキルだと勘違いしてほしい。
「なんだそれは?」
「謎のエネルギーを放つものだ」
「謎のエネルギー? お前、自分のスキル詳しく知らねーのか。バカだな。けど、遠距離攻撃出来るのか。そりゃ厄介だな。で、魔法は使えるのか?」
「使えない」
「あっちの金は持ってるのか?」
「持ってない」
「とことんクソだな。金も持ってないのかよ。役立たずだな。どう思うマコト」
「遠距離攻撃は誰も聞いた事無いな。西園寺や高倉に有効かもしれんな」
高倉ってカズマだな。苗字で呼ぶ奴は珍しいな。ん、もしかして、クラスにはガンナー系のスキルを持ってる奴は居ないのか? もしかしてウォーターガン、レアスキルなのか?
「マコト、コイツ、俺らの奴隷になると思うか?」
「いや、ならねーだろな。コイツを俺らが使ったら、そのスキルで寝首を掻かれかねないな。あっちでぶっ殺してもいいが、こっちで生かしとくと、やられかねないな。ミコのシールドを壊したとか言ってたよな」
「じゃ、決まりだな。魚の餌だな」
ん、魚の餌?
「待てよ、どういう事だ?」
タケシがニヤニヤ僕を見る。
「そのまんまだ。おめーは海に沈める」
「おい、待てよ。そんな事したらお前ら捕まるぞ」
「分かって無いなー。お前は誤って海に落ちるんだよ」
カズマに殴られて海に沈んだ事を思い出す。背中に氷を入れられたような、嫌な感じ。恐怖を感じてるのか?
「楽しそうだな。また、お前は溺れるんだよ」
「止めろ。どんな事してでも生き延びて、お前らに後悔させてやるぞ」
僕は怒る事で、恐怖を押さえ込もうとする。
「面白いな。寝ていて、しかも手足を縛られてておめー、どうやって生き延びるんだ?」
「おい、縛ってたら、この紐でお前らの仕業ってわかるぞ。日本の警察は優秀なんだ」
「おめー、おめでたいな。スキルがあるだろ。そこで寝てるミノ。そいつのスキルは『空間魔法』だ。アイテムボックス、テレポート、あと、物を手元に引き寄せる『アポート』」
倒れてた男が立ち上がる。あいつがミノか。あ、やっぱクラスメートだ。いつも1人でほとんど喋らないやつ。確か苗字は三田。ガリガリで顔色が悪いのが特徴。で、なんで三田でミノなんだ?
それよりもテレポート、アポートだと! じゃ何か、僕を海にテレポートさせて、縛ってる縄を引き寄せるって事か? それなら、手足に縄で縛られてた跡は残るかもしれないが証拠は残らない。まじか、コイツら本気で僕を……
「まっ、待てっ。お前、人殺しする気か? 気は確かか?」
「ん、おめー、あっちで殺してねーのか? 俺らは何人も殺してるぞ。西園寺側の奴以外、ほとんどみんな人を殺してる」
なんだそりゃ、コイツらあっちで人を殺しまくってたのか?!
「いたいな……」
小さくボソボソした声。ミノが呟く。
「おい、ミノ、ソイツを海の底に送れ」
タケシが事も無げに言う。
「そしたら、二ノ宮死ぬんじゃないか?」
「おい、ミノ、おめー殺されたくないだろ。見ろ、ソイツの目、おめーがここで殺さないと、おめーが殺されるぞ」
僕はミノから目を逸らす。そんな目つき悪かったのか。
「いいけど、報酬は何……」
「おっぱい。ミコの生乳揉ませてやるぞ」
「そっか、そりゃいい……」
そう言うと、ユラリとミノが近づいてくる。その足取りはゆっくり。音がしない訳だ。
「ま、待てっ。頼む助けてくれ。なんでもするから」
「なんでもするの……」
ミノの動きが止まる。
「ミノ、ソイツがお前に出来る事ななんもねーよ。それに、お前、お前のスキルは凄いが、俺らのチームから外れたらあっちじゃ生きていけねーだろ、マコト」
「ミノ、見ろよ。デケーぞ」
マコトが寝ているミコの上体を起こしてこっちに向けている。下着だけのミコの胸はデカい。それをミノが見ている。
「生で……二ノ宮君ごめんね。なんでもするんだよね。じゃ死んでね……」
「おいっ、謝るな」
僕の命は生乳以下なのか。
どうする。ガンを打つか? いや、打ってもやれるのは1人か2人。ミノを撃ったら、マコトに眠らされて殺される。マコトを撃ったら、ミノに飛ばされて溺れる。タケシを撃ったらミノかマコトにやられる。上手く2人撃つとしても、どうしてもタケシかマコトが残る。タケシのスキルは分からないし、あと3人仲間が居るかもしれない。
「君は危険かもしれないから……」
ミノが僕の後ろに回る。まずい。これでミノをやれなくなった。
「頼む。助けてくれ」
情けない声だと言うのは自分でもわかる。
「男の命乞いはつまんねーな」
タケシが笑ってる。
「ミノさっさと捨てろ」
マコトは憮然とした顔で見てる。
「テレポート」
頭にミノの手が触れる。目の前がチカッとしたと思ったら、全身が冷たくなる。
「ゴボッ、ゴボゴボッ」
まじか。口に水が入ってくる。しょっぱい。嘘だろ。海の中? 暗い中、手足は動かない。息を止め首を回すと、遥か上がキラキラしている。耳が痛い。クソっ! 死んでたまるか! どうにかして、水面に上がったら、生き延びれるかもしれない。僕は必死に足を動かして浮かび上がろうとする。体に服が貼り付いて上手く動けない。クソっ! 体が上手く動かない。上に進もうとしても手足を縛られてるおかげで、グルグル回ってしまう。息が、息が保たない。空気が欲しい。ダメだ。手足の縄が食い込んできてるような。
もうダメだ……
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