第二十四話 裏切り
「おい、ミノ、解いてやれ」
「アンタ、ドーテーのきったない手で触らないでよね。お金取るわよ。ったく。昨日から散々だわ」
カタンと音がする。ミコが立ち上がったのか? ここにはあとミノって奴が居るみたいだけど、足音も声もしないな。
「ほらよ。受け取れ」
この足音はタケシか?
「ちゅうちゅうたこかいな。確かに十万円、まいどありぃ。こんなに儲かるなら、また拉致ってくれてもいいわよ」
弾むようなミコの声。
「勘弁してくれ。あっちのアクセサリーを売ってなんとか稼いだ金だ。俺たちの血と汗の結晶だ。お前とは敵対したくないから止むなしだ」
タケシの声は弱々しい。そりゃ十万円だもんな。けど、そこまでして『アフターピル』が欲しいのか。どこまでドスケベなんだ。
「おい、ミノ、送ってやれ」
「ちょっとー。何触ろうとしてんのよ」
「しょうがねーだろ。お前も受け入れただろ。ミノのスキルは直接触らないと使えねーんだ」
「やっぱ、気が変わったわ。アンタたちのようなザコに命令されるのってやなのよね」
ドカッ!
何かを殴る鈍い音。
「うぐおぁっ」
ドサッ。
呻き声の後に何かが地面に落ちたような音。
「ミノっ。何しやがる」
「大丈夫。死んでないわ多分」
「おいっ、裏切る気か?」
「裏切るも何も、あたしはアンタたちの事はどうでもいいわ。あたしはそこのブリ助くんとは組んでるのよ。約束は守らないとねー大事だから」
「おめー、俺とも約束しただろ」
「さぁ、知らないわねー」
ミコ恐るべし。理屈が全く通用してない。自由すぎだろ。けど、どうやら僕を助けてくれるみたいだな。助かったのか?
「おいおい、おめーバカだろ。なんでおめーが捕まったのか全く分かってねーみてーだな」
「スリープアロー」
ん、聞いた事が無い声?
「えっ、ホーリーシット!」
「残念だな。物理盾は魔法は防げねーよ」
「あ、うあ」
ドサッ。
え、ミコやられたの? あっさりやられ過ぎだろ。おいっ、レベル17じゃねーのかよ。テンプレだな。敵で強かった奴ってなんで味方になった瞬間に弱体化するんだよ。まあ、味方って訳ではないけど。
スリープアローって事は人を眠らせる矢って事か? さっきの物理盾無効って事は、壁とかなんでもすり抜けるって事なのか? じゃ、バスでミコと僕が寝てしまったのは魔法。さっきの声の主の魔法なんだろう。けど、厄介だな。貫通する眠らせる魔法の矢。チート過ぎるだろ。
まあ、けど、ここは日本だ。どんな事があっても死んだりする事は無いだろう。
「マコト出てきていいぞ。ミコをまた縛ってくれ」
マコト? って事はアイツか? 金髪で目つきが悪い小っこいやつ。アイツは最悪だ。あまり喋んないけど、いつもナイフを隠し持ってるとか言われてたやつだ。噂では動物を切り刻んでるとかも言われてた。
「んだよ。お前がやれよ」
「いや、俺はゴッキーを見張ってるからな」
「しょうがねーな」
ゴソゴソ音がする。
「おい、もう我慢できねーよ。どうせコイツらやるんだろ。脱がせてもいいか?」
マコトの声は若干イライラしてるように聞こえる。
「ダメだ。まて、ミコは殺すには勿体ない。どうにかして、俺らの言う事を聞かせないとな。っておい、待てって言ってるだろ」
む、もしかして、言う事聞かずに脱がせ始めたのか?
「分かった、分かった。ここで止めとくよ。ってお前も見たいだろ」
「そ、そうだな。下着、下着くらいまでならオッケーだよな」
タケシ、意志よえーな。下着でも十分ミコは怒るだろ。協力関係築けなくなればいい。
「さすがタケシ話がわかるーっ。ってコイツやっぱり乳デケーな」
うん、確かにデカい。けど、僕は何とも思わない。だってあのミコだからな。だけど、なんか声だけでこういうシチュエーションってなんか、モヤモヤする。なんかずっと僕はほったらかしだな。用が無いなら、解放してくれればいいのに。
「マコト、そこまでにしとけ。ちなみに矢はあと何発撃てる?」
「ラス1だ」
「構えとけ。このクソと話するぞ」
クソはお前らだろ。無抵抗な女の子を脱がしたりして。
「おい、クソゴキブリヤロー。動くなよ何もするなよ。何かしたら、ぶっ殺す」
なんで、昨日から殺害予告されまくらないといけないのだろうか。僕は何かしたか?
バサッ
視界が級明るくなる。皮かなんかのバックを頭に被せられてたみたいだ。急に光に晒されて眩しい。視界に2人の男が入る。タケシとマコトだ。マコトはこっちに右手の手のひらを向けている。スリープアローで狙われてるって訳か。マコトの足元には倒れた男、多分ミノって奴と下着姿のミコ。仰向けでこっちに足を向けている。クークー寝息を立てている。以外な事にミコの下着は白色だ。奴の心と同じくまっ黒だと想像してたのに。けど、見てもなんとも思わない。うちの親父がパンツ一丁で歩いてるのを見たような気分だ。
タケシが前に出てきて口を開く。
「おい、ゴキブリヤロー。今からお前の口をはずす。喋ってもいいが、スキルや魔法を使おうとしたら、即眠らせる。話は聞こえてただろ」
口を外すってなんだよ。猿ぐつわって言葉を知らないのか? ツッコんでやりたいとこだけど、ムゴムゴとしか言えない。タケシが近づいて来て、猿ぐつわを外す。
「今から俺から聞かれた事だけ答えろ」
「ぐぼぉ!」
腹に激痛が走る。問答無用に殴ってきやがった。ヤバい口から何かが溢れそうだ。
「正直に答えないと、ぶん殴る」
ぶん殴るも何も今殴ったじゃねーか。
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