第二十二話 同盟
「あたしたちのパーティー、前衛ばっかで後衛が居ないのよ」
後衛が居ない? そんなの知らんがな。やっとミコが動き出す。急がないと遅刻だよ。バスに乗り遅れると確定だ。
「だから、アンタがあたしたちを手伝ってくれるなら、成果次第じゃ他にも報酬出すわ」
ミコは信用ならない。けど、変態として捕まらないだけじゃなく、何か報酬まで貰えるのなら悪くない。それに同盟がライラたちを助けるために何か役立つかもしれない。
「具体的に報酬は何が払えるんだ?」
「うちには、エリカとネネも居るわけじゃん」
エリカ、読者モデルとかしてるという噂の抜群スタイルの女子のトップカーストの一人。ネネ、日本人形のような黒髪パッツンのアイドルを兼任してる美少女、これもトップカーストだ。
「そうなんだ」
めっちゃ美少女パーティーだな。美少女2人を紹介でもしてくれるのか? ちなみにあと3人は誰なんだろう?
「報酬は、その2人にもおしっこぶっかけていいわよ。リーダーはあたしだから文句は言わせないわ」
「ぶふっ!」
息がむせる。いきなりこいつは何を言い出すんだ。なにを!
「いらんわ。そんな報酬。報酬になってないわ!」
つい声が大きくなる。人をなんだと思ってるんだ。そんな事したら美少女2人から死ぬほど嫌われる事だろう。ウンコ扱い確定だ。
「遠慮しなくてもいいよ。だってアンタ、命がかかってるような時にでも人にぶっかける人でしょ? これ以上にアンタが喜ぶものは思いつかないわ。もしかして、ぶっかけた後舐めたいの?」
ミコの中で、どんどん僕の変態度が強化されている。どうやって誤解を解こう? なんとか停留所についてバスを待つ。間に合った。僕はミコに引っ張られてバスの一番後ろに乗る。僕は小声でミコに話す。
「ちょっとー、ミコさんそれ全部誤解ですよ。僕はそこまで強力な変態じゃないですよ。報酬とかあっちのお金とかの方が助かります」
「えっ、そんなんでいいの?」
「僕ですね。田舎に居たんであっちのお金の価値とか基準とか知らないんですよ。まず、そこから教えて貰えたら助かります」
「なんか気持ち悪い。アンタその話し方止めなよ。あたしたちつき合ってるんだから、もっと自然にしなよ」
「なんでそうなるんだ?」
「アンタのためよ。みんなアンタの事狙ってるのよ。復讐されるんじゃないかって。けど、アンタを潰すのはあたしよ。あたしがそばに居たら、そうそうみんな襲いかかって来ないわ」
「なんだそりゃ。僕が狙われてる? けど、さすがにこっちで襲撃してくる馬鹿は居ないだろ。下手したら犯罪者だ」
あ、目の前にその馬鹿がいたか。
「タッキ、何言ってるの? 犯罪者はアンタでしょ? 露出狂の放尿魔」
なんとかナメオって名前からタッキに戻ったけど、二つ名が進化している。何だよその「露出狂の放尿魔」って。けど、ほぼやった事は事実だもんな。
「で、いつまで、僕にくっついてるんだ?」
「出来る限りよ。別に好きでくっついてる訳じゃないわ。今日だけよ。みんなにアンタの所有権をアピールしたら、そうそうアンタは襲われなくなるわ。あたし聖女だから」
なんか調子狂うな。コイツの事は嫌いだけど、復讐はお仕置き程度でいっかなーって思い始めた。なんかずっとべったりくっつかれてたら、不本意ながら愛着が湧いてるもかも。
「わかった。、じゃ、通貨の事教えてくれよ」
ミコが言うには、金貨がだいたい一万円、銀貨が千円、銅貨が百円くらいだそうだ。あと、銅貨の下には銭貨というものがあって、それは品質次第で、五円から十円くらいの価値だそうだ。あと、魔物から獲れる魔石もお金の変わりとして用いられる事もあるそうだ。ファンタジーだなー。
「じゃ、しばらくお前のパーティーと共闘って形でいいか?」
あっちでの窮地を逃れるまでは、仲間は多いに越した事無いだろう。
「分かったわ。今日の放課後にでも、あたしのパーティーと顔合わせしようよ」
「ああ、頼む」
ん、ミコが僕にしなだれかかってくる。え、寝てる。さっきまで話してたのに、だらしない奴だなー……
「おい、起きろ」
ん、声がする。何も見えない。体を動かそうとするが動かない。手はきつく後ろに縛られている。どうやら椅子に座ってるみたいだ。そして、両腕の上からグルグル巻きにされてる。多分。そして、足首も縛られている。口には猿ぐつわだろう。
何が起こってるんだ? 確か、朝、バスに乗って、ミコがしなだれかかって来て。
「んー、んんー、」
呻く女の子の声。ミコか?
「呑気なもんだなー。お前、3時間は寝てたぞ」
若い男の声。聞いた事がある。クラスメートの誰だっけ?
と言う事は、僕とミコは誰かに拉致られたんだろう。けど、登校中のバスの中でどうやって? ミコは誰も襲いかかって来ないとか言ってたのに早速やられてるじゃねーか。つくづく疫病神だな。
あっ、思い出した。タケシ、確か水なんとかタケシだ。なんて言うかDQN系のあんまり関わりたく無い奴だ。白い教室や船では、カズマに従ってたけど、なんか暴走してるみたいだな。
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