第二十話 聖女?
「あ、あと、さっきなんであんな事したんだ?」
まだ少し時間が欲しい。あんまりビビり過ぎてガンが萎縮してしまっている。
「あんな事って?」
「僕のここを舐めただろ」
僕は身を起こし、自分の頬を指差すなんかヒンヤリしてるような気がする。鳥肌案件だ。
「ああね。だってアンタ、必死で舐められる画像見てたじゃない」
「だからって普通舐めないだろ。その前に、お前、僕の事嫌いだろ。嫌いな奴を舐めたり普通はしないだろ」
「嫌いな食べ物でも、あたしは1回は舐めてみるわ。それにあたし、汗の味でその人が嘘ついてるのか分かるのよ」
僕は食べ物ちゃうわ。おいおい、さっきの漫画のネタかよ。あの漫画、嫌いじゃないけど。
「そうなのか? じゃ、嘘ついてる奴の汗ってどんな味がするんだ?」
「ふふっ、嘘ついてる人ほ汗って多分しょっぱいのよ。アンタみたいにね。ってもう時間稼ぎは終わったの?」
多分って言ってるし。それに、時間稼ぎバレてるや。バカッぽいのにな。けど、今の時間で恐怖で縮んだガンがニュートラルに戻った。
「アンタのスキルのクールタイムでしょ。もう回復したんでしょ? いいわよ。ぶっ放してみなよ」
やっぱり何か、僕のフォースを防ぐスキルをもってんだな。ダメ元、聞いてみるか? 単純そうだから意外に答えてくれるかもしれない。
「なー、ミコ、お前のスキルって何なんだ?」
「聞きたいの?」
「ああ聞きたい」
「どうしても?」
「どうしても聞きたい!」
「どうしょっかなー」
うぜーな。なんか恋人同士の会話みたいで、鳥肌たちそうだ。怒鳴り散らしたいとこだけど、機嫌損ねない方がいいな。我慢だ。
「頼む、どうしても知りたい」
「聖女。聖女よ」
お、やっぱあっさり答えやがった。
「ん、性女? エロい女の事か?」
なんて打って付けなスキルなんだろう。そりゃ人のほっぺたくらい舐めるし、大事な玉を潰そうとするわ。
「違う。聖なる女の事よ」
「性なるって、あのクリスマス的なあれか?」
性なる夜って、みんなエッチな事しまくる日の事だよな。
「違う。なんてかなー。あの聖人とか聖徳太子のしょうの字の方よ。要はあたしはとっても偉いのよ」
「エロいの間違いじゃないのか?」
「あたしねー、こう見えて下ネタばっか言う男嫌いなのよ。そろそろ、ぶっ殺していい?」
ミコが笑いながら近づいてくる。攻撃する気か? なんとか僕は立ち上がり距離をとる。
「うおっ!」
ブッオン!
僕は大きく下がりミコから距離をとる。僕がいた所を太い何かが風切る音とともに通り過ぎる。ミコが動いたと思ったら目の前にいた。見えなかった、早い。人間の動きじゃない!
「あっれー。当たれば腕くらい折れるのになんでかわすのよー。優しくぶっ殺してあげようって思ってたのにー。ナメオの癖に生意気ー」
にこにこなミコの手にはいつの間にか棍棒が握られている。しかも、黒い血みたいなものがこびりついてる。という事は、何度も使われてる?
「おい、待て、僕を殺してどうするんだ。お、お前だって警察に捕まるぞ」
「大丈夫だって、あたしは捕まらないわよ」
「そっ、その棍棒はどこから出したんだ?」
「アイテムボックスだよ。アンタ持ってないの? 格好わるー。上級職の人はみんな持ってるわよ」
なんだそりゃ。そんなものもあるのか? なんか聖女っていう人権のようなスキルだけじゃなく、そんな反則なものも持ってるのか? しかも上級職はみんなって事は、他にも持ってる奴は何人もいるのか。僕と待遇違い過ぎだろ。
「だから、安心して、アンタの死体くらい入るから。死体が見つからなかったら、殺人事件って無かった事になるんでしょ?」
なるんでしょじゃねーよ。という事は、コイツ、僕を殺して、そのアイテムボックスにしまう気なのか? 確かアイテムボックスって、色々なものを入れる事が出来るやつだよな。
よく、考えろ。多分、ミコはあっちでレベルアップしていて僕より格段強い。アイテムボックスという、アイテム出し入れ自由なものを持っていて、更に『聖女』という彼女の言では『上級職』のスキルを持ってる。あ、これ詰んでるじゃん。普通に戦って勝てる気がしない。
だからと言って、ガンをヒットさせたら逆にミコを殺してしまうかもしれない。そしたら、間違いなく僕が警察に捕まる。謎の爆発物でミコを殺した者として。そしたら拘束されてラグナフェンに行けなくなる。勝つ事も負ける事も出来ない状況。最悪だ。
「ナメオくーん。どこがいい、頭? お腹? それともお尻? どこからぶん殴られたいのー」
血糊がついた棍棒をユラユラさせながらミコが聞いてくる。なんか違和感を感じる。殺す殺すと言ってるわりには、なんかその気が無いように思える。何が目的なんだ?
「はーい、タイムアーップ。頭に決まりー」
ミコが棍棒を振り上げて襲いかかってくる。早い! 逃げられない! 僕は大きく左に移動してかわす。振り下ろす攻撃は攻撃が点だ。横にかわしたら当たらない。あ、足に何かが引っかかる。
「フェイントってやつよ」
ミコの声がする。僕は足をミコに引っ掛けられて盛大に転がる。立ち上がろうとする僕に影が覆い被さる。
「ナメオ退治ーっ!」
見上げると両手で棍棒を振り上げたミコ。風を切って棍棒が僕の頭に迫る!
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