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大学生日記  作者: 江戸銀(エディ)
退寮後編
61/61

2025/12/6

誕生日が過ぎて二日。

今年は嬉しいことばかりだ、この年になってくると段々と過ぎ去っていくもののことを想う。昔のように色々な親戚から祝われるようなことは無くなったし、そろそろ大人になるときで子供として祝われるのは府成長の証のように捉えてしまう。けれども、私は私の予想とは違ってこれまでたくさんのものを積み上げてきたらしい。友人が誕生日会を開いてくれた。まぁ、それは私と同じ日に誕生日な男がいたおかげもあるのだろうが、こうして同年代だけの誕生日会が開かれるのは何気に初めてな気がした。


 誕生日会以外でも大学の友人や小中の時の友人からプレゼントを貰ったり、ラインのクーポンを貰ったり、或いはおごってもらったりしてもらった。これまでの人生でここまで多くの人に祝われたのは久しぶりな、初めてな気がした。


 私は随分幸せになってしまったのだな、と思う一方その幸せをまるで膜の外側から触れているような脳みその弱さに飽き飽きする。何かに夢中になることもなく、短期的な目標を繰り返してきた人生は何か筋の通った一つのことを成し遂げはしなかった。こうして小説を書くのがなしたことなのかと言われるとそれは違う気がしてならない。


 私の友人は本気で小説家を目指していた。世間に認められるような、文芸誌に乗るような小説家だ。私の方はと言えばここで永遠に書いていてもいいと思ってしまう。賞を取ることを絶対必要な目標と思っていない。これだから私のやることは手ぬるくて、過ちを直すようなことをしないのだろうな。


 自分の成果物を見直すようなことはほとんどしない。その時に楽しければそれでいいと思うような刹那主義性は自慰的ですらある。一時の快楽をずっと追い続けてしまっている。私は我慢できないのだ。私は自分がニンジンにつられる馬に成り下がってしまったことに辟易する。易い方に流れてしまうこの体が年を重ねればより鋼鉄のように変化しなくなるのだろう。


 いつだってどうにかしたい。

 この日記はそんな憤りに塗れている。憤りに塗れて、嘘の励ましをして、希望を見出した気になる。けれども今の私は励ましも希望も持たない。但し合わせを思い出すことにする。自分の気づき上げてきたものは短期的な快楽よりも激しい輝きを持っているから、だから何かに流れたくなった時は自分が何者かを思い出せというサインなのだと思う。私はネガティブで、卑屈で、カラ元気で、それでも、と嘘でも言って自分にまだ自由意思的に世界を遡上する力を持つ存在だと思い込ませている舞台上のキャラクターの一体でしかないのだ。


 そうはいっても人生は必要以上に豊かで自分が豊かさに肥えた蠅でしかないことを時に思い出す。ザムザのなった虫というのはきっと蠅ではないだろうか。ッ豊かさに胡坐をかき、鈍麻した神経でひたすらに豊かさにたかる蠅。それが何なのかも知らない蠅。



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