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2019年8月17日 エンドレス留音ちゃんのお誕生日エイト

2019年8月17日


真凛(まりん)「留音さん、お誕生日おめでとうございます」


あの子「(*゜▽゜)/゜・:*」


衣玖(いく)「おめでと」


西香(さいか)「おめでとうございます……」


 パカン!と真凛(まりん)は疲れたように、あの子は元気にクラッカーの紐を引いた。衣玖(いく)は無感情に、西香(さいか)は不貞腐れたような表情でその言葉を派手な三角帽子を被った留音(るね)に送った。


留音(るね)「な、なんだよみんな、祝ってくれるのは嬉しいけど……妙に暗いぞ!」


 あの子以外の様子がおかしいと思った留音(るね)は三角帽子を取りながらみんなを見回したその瞬間、西香(さいか)が机を叩いて立ち上がった。


西香(さいか)「あなたのせいでしょう!!一体何のプレゼントが欲しいってのよ!!!こんなにお祝いもしてあげたのに!!」


留音(るね)「お、おぉ西香、お前どうしたってんだよ……キャラ変わってんぞ……?」


 西香(さいか)の様子は明らかにいつもと違う。疲れ切った様子で、エセお嬢様口調はどこかへ飛んでいってしまっている。留音(るね)もたじろいでしまうほどの気迫で迫った後、静かに席に崩れてしまう。


衣玖(いく)「悪いわね。こっちの話よルー。じゃあ、お誕生日プレゼント……真凛……」


真凛(まりん)「はい……留音さん、ほしいのはこれですか……?」


 そうして真凛(まりん)の手から大きな包が手渡される。留音(るね)は「あ、あぁありがと……」と状況がわからずとりあえず受け取った。


衣玖(いく)「あけて」


留音(るね)「な、なんだよ、みんなさっきから怖いぞ……?」


 留音(るね)は怯えるような気持ちとちょっとしたワクワクを原動力にその包を開けた。その大きさと重さから、ある程度の予想はついていて、中からは巨大なパック型のプロテインが出てきた。留音(るね)の予想通りである。


留音(るね)「おっ!!1kgのプロテイン!?ホエイの結構高いやつじゃん!うわー!いいのかよー!高いじゃんかー!やったぁ!みんなありがとな~!!」


 留音(るね)は袋を掲げ、裏面にあるタンパク質量を目にして、そこから更にBCAAなどの成分に目を輝かせ、何かを思い出したように一瞬目を伏せた。だがみんなの手前、もらったプレゼントを100%嬉しがるように見せられるのは留音(るね)のお姉さんらしさの現れなのだろう。


真凛(まりん)留音(るね)さん……本当にそれでいいんですね?嬉しいんですね……?」


留音(るね)「嬉しいよ!さっきからどうしたんだよみんな、なんか様子がおかしいぞ?」


西香(さいか)「誰のせいだと……!」


 西香(さいか)の口を衣玖(いく)が抑え、たしなめるように首を振っている様子に留音(るね)は眉を寄せている。


真凛(まりん)「それじゃあ……昨日作ったケーキを持ってきますので……」


 そうして切ったケーキをみんなで食べるのだが、衣玖(いく)留音(るね)が食べ終わるのを見届けると、自分はケーキをほとんど食べずに「ごめん真凛(まりん)、食べられない……」とため息をつく。いつもならそんな事を言ったら「なんでですかぁー!」と抗議する真凛(まりん)だが、何故かこの日は「そうですね……」と自分のケーキも残していた。


 そしてその日は留音(るね)にとっても一応の誕生日パーティという程度に、釈然としないまま一日が終わる。留音(るね)はみんなどうしたんだろうと思いながら布団に入り、あの子は留音(るね)以外の部屋をひと部屋ずつ回って事情を聞こうとするのだが教えてもらえず、心配な気持ちを持ったまま眠りについた。


 夜遅く……真凛(まりん)衣玖(いく)西香(さいか)の三人が衣玖(いく)の研究室に集う。


真凛(まりん)「今回こそ成功……したんでしょうか」


衣玖(いく)「やめましょう、何度期待して裏切られたか」


西香(さいか)「いっそもう全てを終わらせたい……」


 彼女たちは今日この日、留音(るね)の誕生日である8月17日をループしている。回数は15000回を数える。それを知らないのは留音(るね)とあの子だけだ。


 衣玖(いく)の解析によってそのループの原因は留音(るね)へのプレゼントにあることはわかっていたのだが、その正解が何なのかがわからない。彼女たちはもう何回もこの日のループを繰り返し、留音(るね)にプレゼントを贈り続けていた。


 スポーツ関連用品 約7000回

 古今東西のプラモデル、あるいはプラモ用ツール 約3000回

 実は隠している少女趣味に関するもの 約5000回

 イケメン 1回 (留音(るね)逃亡)

 

衣玖(いく)「ルーは私達にあまり高いものは求めてないという予想は間違ってないはずよ。昨日ルーが自分で買ってきたプロテインシェイカーの事を考えれば、このプロテインという可能性は非常に高いはずなの……」


真凛(まりん)「でも、これまでも缶型、袋タイプ、錠剤型、味もチョコから抹茶まで色々買ってきましたけど……」


西香(さいか)「うっ……うぅ……ただでさえ他人を祝うなんて地獄なのに……いっそ命を終えてしまったほうが……」


 ループ脱出の道筋はまだ見えない。答えはもう見えるところにあるにも関わらず。


 一方で留音(るね)は布団の中で、今日もらったプロテインの事を考えていた。


留音(るね)「(あぁ、粉プロテイン、あんな良いのもらっちった……嬉しいな……あぁでも……)」


留音(るね)「(昨日買ったシェイカー、蓋の締り悪いんだよな……振ってたら漏れてきちゃったのショックだったな……わざわざ奮発して1000円以上もするの買ったのになんで漏れるんだよ……)」


留音(るね)「(おとなしく前使ってた500円のヤツまた買えばよかった……でもまた買い直すのもあれだし……かと言ってみんなが買ってくれたプロテインが、また振ってる最中にこぼれちゃったらめちゃくちゃもったいないし……)」


留音(るね)「(はぁ……昨日の自分に選ぼうとしているプロテインシェイカーは不良品だぞって教えてやりたい……買い直すのは癪だし……あーくっそ。500円くらいだしみんなに言ったら買ってくれないかな……いやそんくらい自分で買えって話だよな……あーでも1000円も出した高級な不良品シェイカーがあるんだよなぁ……なんで3倍も払った上で前のとおなじの使わなきゃならないんだよ……はぁ)」


 正解の500円のプロテインシェイカーにたどり着くまで、3人はあと400回以上のタイムループを繰り返したとかなんとか。


*

 今日はあの有名作品で起きたエンドレスエイトのループ開始日です。

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