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夜道を歩く脚
脚は夜道を歩く
ひっそり光る桜の木の下
じっとり張り付く熱風の横
こっそり縮まった落ち葉の中
がっちり固まった氷の上
ただ靴音が夜道に沈む
ただ人波にぶつからないように
ただ脚を縺れさせないように
それが義務とも権利とも言えず
脚にはわからない
脚には考えられない
考える場所がない
ただ歩いている事だけが真実
赤く輝く星を見つけることも
街の灯の温度に触れることも
たったの一人になりたかった
たったの一人になりたかった
脚は夜道を歩く
昨日も明日も今日も同じ
この道が朝に続くことさえわからない
ただのパーツでしかないのだから
でもここに心浮かんでいたとして
さまざまな思いを馳せていたとして
けれど歩くことさえ出来ないのなら
脚は夜道を歩く
ただのパーツ
されどパーツ




