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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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ごちそう


 桃を食べ終えた辺りで、役所の職員達が駆けてきて……色々と必要な手続きをしようとしてくるが、


「ま、今回のことは神様案件ってことでな、面倒くさいことは勘弁してやってくれや。

 必要な手続きは全部俺がやるからよ、それで良いだろ?

 だからって報酬なしってのは許さねぇぞ、手出し出来ずに傍観してたのもちゃんと見てんだからな」


 金太郎のそんな言葉で動きを止めて、苦虫を噛み潰したような顔になる。


 ハクトにとってもユウカにとっても役所の手続きは慣れたもの、そのくらいはしても構わないという顔をするが、金太郎は苦笑しながら、


「せっかくの休暇に戦わせた俺の言うことじゃーねぇが、休暇中に仕事なんてするもんじゃねーぞ」


 と、そう言って手を振り、ハクト達に帰れと示してくる。


 帰れと言われてもと困った顔になるハクト達だったが、ふと気付けば熊が帰りの熊車の準備を終えて後ろで待機をしていて……それにハクト達が乗り込むと、すぐさま宿へと運んでくれる。


 宿についたならハクト達は、汚れを落とし着替えを済ませ……ブラッシングをするなり風呂に入るなり、身支度を済ませて……それから夕食が到着するのを待つ。


 空調の効いた部屋で、戦闘の疲れと、体に残る風呂の温かさで気だるい気分に浸って……本当にこのままなら寝てしまうぞとなった時、玄関の呼び鈴がなって一同は覚醒する。


 夕飯が楽しみで楽しみで、つまみ食いもおやつもなし、夕食をこれでもかと楽しむためにお腹はペコペコで……ついに来てくれたぞと、勢いの良い早足で玄関に向かう。


 そうして玄関ドアを開けると広がっていた光景は予想外のものだった。


 大量の真鯛料理、これは想定内と言うか予定通りだったのだけども、それ以外にもフルーツの盛り合わせやら、随分と豪華な海鮮サラダやら、全く想定も予定もしていなかった料理が……料理を運ぶための車輪付きタンスといった、何段もの引き出しトレーに所狭しと押し込まれていた。


「テレビでご活躍を拝見いたしまして、地元を救ってくださった方々へのせめてものお礼としていくらかのオマケを用意させていただきました。

 もちろんあのお方にもお贈りいたしましたので、遠慮することなく楽しんでください」


 と、料理を運んできた5人ほどのスタッフを率いた管理人さんがそう言ってきて……それからすぐにスタッフ総出での配膳が始まる。


 こんなたくさんの料理、どうやって配膳するんだと思ってしまうが……管理人達も部屋の構造を理解した上での用意で、壁の中から臨時用のテーブルを引き出した上で、料理を並べていく。


 元々大人数の宿泊用の宿ということもあって、その広さはかなりのもので……あっという間に全ての料理を並べた一同は、最後に氷がたっぷりと入ったボトルクーラーを持ってくる。

 

 ワインなどを入れるそれを見てハクトは一瞬顔をしかめるが、すぐに中に入っているものが少しお高めのフルーツジュースであることに気付く。


 それならば言うこともなしと何も言わず、配膳が終わったならそれぞれここだと思う席につく。


 真鯛のアクアパッツァに塩釜焼き、野菜たっぷりの真鯛スープに、天ぷらなどなど各種揚げ物。


 揚げ物も甘酢がけのようなものから、野菜たっぷりバーガーにしたものもあって、本当に多種多様。

 

 炊き込みご飯ももちろんあって、サラダもありカットフルーツもフルーツサラダも、フルーツヨーグルトなんかも用意されている。


「いただきます!」

「クッキュン!」

「プッキュン!」

「わふーー!」


 ハクトが何かを言ったりしたりする前に、さっさとそう言ってしまうユウカ達。


 そしてそれぞれ箸なりクチバシなりを構えて……立食形式のような形で料理に襲いかかる。


 とは言え、食器を手に持っての立食形式になっているのは、ハクトとユウカだけだった。


 グリ子さん達はフリースタイル。


 リビング中央や壁際など、4箇所のテーブルの周囲を駆け回り、気に入ったものがあれば襲いかかって食べてしまう。


 テーブル中央など、届きにくい所にある場所に関しては、


「言ってくれれば取り分けるから」


 と、ハクトがそう言ってくれていたのだが、そんなのを待っている暇はなし、食べられる所から食べていくぞと、テーブルの外周にある料理から攻め立てていく。


 どれもこれも美味しい、噛めば噛む程真鯛の旨味が広がる料理ばかりで……どうしたらこんなに美味しくなるのかと驚かされてしまう。


 ハクトの料理の腕前はかなりのもので、出前なども一級品のものをとってくれている。


 今回の旅行でも美味しいものばかりを食べさせてくれが、今日のこれは別格だとグリ子さんの目が強く開かれ、毛が逆立ち、四本の足がしゃかしゃか動く。


 普段は動きの少ない尻尾までが元気いっぱいで……ユウカ達も同じように元気いっぱい、食事を堪能していく。


 そんなグリ子さん達の食事の様子は、マナーが良いとは言えなかったが、この場にいるのは身内だけ……戦いの疲れもあるのだからとハクトは何も言わず、自分の食事に集中していく。


 そうやって食欲をある程度満たすと、段々と皆が落ち着きを取り戻してきて……それを見てハクトは、空になった食器を引き出しに戻しての片付けを行っていく。


 片付けたならテーブル中央にある皿を端へと寄せて、食べやすいようにしてやって……それを受けてグリ子さん達は、先程よりは落ち着いた様子で食事を楽しんでいく。


 食べても食べてもお腹が空いていく、真鯛を食べすぎて飽きてしまってもサラダやフルーツ、ドリンクを楽しめばすぐに食べたくなってくる。


「……うん? 気付かなかったけどクーラーボックスもあるな……。

 ああ、中身は氷菓子か……手の込んだアイスクリームに、かき氷かな? それとシャーベットと、色々なアイスがあるようだけど……これは一体何人前のつもりで用意したんだろうなぁ。

 10人分とかそれ以上はあるんじゃないか……?」


 と、そこへハクトのそんな声。


 食後にはアイスデザートが待っている……そう聞いてグリ子さん達はより食欲を爆発させて……そうして食べ尽くせばアイスが待っているぞと、残りの食事へと猛然と襲いかかるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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