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毛玉幻獣グリ子さん  作者: ふーろう/風楼
第三章

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 金太郎が無双の軍勢と評したハニワの強さは、確かにそう呼ばれるに相応しいものだった。


 スズメバチ幻獣が刺すだけでなく噛んでみたり、掴んで飛び上がってから落としてみたりと、様々な方法で破壊をしても怯むことはなく……行動不能になるまで破壊されると、破片が集まり組み上がり、再生するというとんでも能力まで有していて、実質的に倒すことは不可能らしく、巣への攻撃の手が止まることはない。


 そんな攻撃の破壊力は金太郎とほぼ同等で、どんどんどんどん巣を破壊していって……しかもその数は1万近く。


 高層ビル並の大きさの巣とは言っても、それだけの強さと数で迫られたなら為す術はないようで、どんどん崩れていくことになる。


 崩れた破片はハニワ達がしっかりと、その口でもって吸い上げて回収していて……そのついでとばかりにスズメバチ幻獣もどんどん口の中に吸われていく。


 生きたままだったり、倒されて破片になった状態だったり、どちらにせよハニワが吸い始めたならスズメバチに抵抗する術はないようで……巣がどんどん削られていくと同時に、スズメバチもその数を減らしていく。


 そんな光景をハクトは愕然としながら眺めていて……そしてユウカとグリ子さん達はワクワクとしながら眺めていた。


 グリ子さん達はなんて面白くて素敵な光景なんだろうとワクワクしていた訳だが、ユウカはアレと戦ってみたい、神様の眷属とはどのくらいの強さなんだろうか? 自分の腕はどこまで通じるんだろうか? と、そんなことを考えながらのワクワクで……表情を横目で見て、そのことに気付いたハクトは、冷や汗をかきながら余計なことはしてくれるなよ、と心の中で強く願う。


「まだまだ、俺達の本気はこれからだぜ!!」


 そこに響く金太郎の声、ずっと張り手の体勢を維持していた金太郎は、駆け寄ってきた熊と合流し……その背にまたがり、まさかりを担ぎ直し、それから巣へと向かって熊を駆けさせる。


 ハニワ達の援護のおかげで立て直しが出来たということなのだろう、空を駆け上がり、巣の真上に陣取り……まさかりを振り上げて魔力をまさかりに集中させていく。


 それを見てハクトは、何をしようとしているかを察し……グリ子さん達に指示を出し、巣から距離を取るため移動を開始する。


 戦いの光景に夢中になっているユウカも腕を掴んで無理矢理退避させ、幻獣達に結界を改めて張らせたなら、糸を展開してその時に備える。


 そうやってハクト達が備えたのを見てなのか、十分に魔力が溜まったからなのか、振り上げたまさかりを両手でしっかりと掴んだ金太郎は……熊と一緒に急降下をする。


 先程まで空中を当たり前のように駆けていたのに、急に重力に捕まったかのように、急落下。


「うぉっしゃぁぁぁぁぁぁあぁ!!」


 なんて声を上げながら、その位置エネルギーと魔力と、自分の持ち前の力全てを巣に叩きつけて……それを受けた巣は凄まじい轟音を響かせながら砕け散っていく。


 砕けた巣の破片は周囲に飛び散り、ハクトの糸とグリ子さん達の結界はそれが直撃するのを防ぎ……ハニワ達もまた、破片が周囲に被害を与えないよう、口を大きく開けての吸い上げを行い始める。


 それで決着か……と、思われたが砕け散った巣の中心に蠢くものがあり、そこから光り輝く石が姿を見せる。


「……水晶か?」

「宝石ですかね?」


 ハクトとユウカがほぼ同時に声を上げる、その石はダイヤモンドのカットのような加工がされていて星型となっていて、それ自体が輝いているのか、この世界の極彩色を吸い込んで輝いているのか……中に浮かんで動いているものだから、どちらか上手く判別出来ず、元々の色が何色なのかもよく分からない。


 大きさとしては3mかそれ以上……距離があってはっきりとは分からないが、かなりの大きさのようだ。


「えっと、先輩、無機物の幻獣って存在するものなのですか?」


「するしないで言えばする、そもそも無機物、有機物という分け方自体、こちらの学問が勝手にやったことだからね。

 ゴーレムのような呪術的、魔術的な存在である可能性もあるし……見た目がああなだけで有機物の可能性だってある。

 擬態とか、そんな感じとか……幻術とかで外見をごまかしているとか」


 ユウカの問いにハクトがそう返すと、ユウカは「なるほどー」と言いながら頷く。


 それから正体を見抜こうとしているのか、目を細めてそれを凝視し……そして金太郎とハニワ達が、その輝く石に襲いかかる。


 明らかに本体、あるいは核、これを砕けば解決と考えているのだろう、勢い良く魔力もかなりの量が込められていて……それを石は何もせずに受け止める。


 それで砕け散ると思われたが、攻撃が当たったその瞬間、石の輝きが強くなる。


「魔力を吸い取った!?」


 そう声を上げたのはハクトだった。


 遠目に見ていたからか、攻撃の際に放たれた魔力の流れが完璧に見えていて……その全てが石の中に吸い込まれていた。


 これは厄介なことになったと、ハクトが厳しい表情となる中……ハクトの言葉を耳にして決断をしたのだろう、地面を蹴ってユウカが飛び出す。


 それを見たハクトは、結界から出るなんて無謀な!? と、一瞬思うが、既にスズメバチは全滅状態、複数のハニワが護衛のような形で周囲に待機もしてくれていて、結界から出たとしても危険はないだろう。


 それよりも考えるべきは、ユウカの攻撃があの石に通じるかということだったが……それもまた問題はない。


 ユウカの身体能力の高さは、魔力のおかげではある。


 ……が、魔力がなくても普通に動けるし、通っている道場の面々相手なら勝てる程度の強さは有している。


 更にユウカの装備は幻獣素材のもの……拳を保護するためのナックルガードや、靴も幻獣素材で出来ていて、魔力どうこう関係なく、異次元の強度を誇っている。


 人並み外れた身体能力でもって、それらを振るったなら相応の破壊力にはなるはずで……金太郎とハニワ達が苦戦する中にその破壊力が突撃していく。


 まっすぐ、魔力を使わず駆けて駆けて跳んで、まるで鉄砲玉のように一切の躊躇なくまっすぐ。


 そうして輝く石に辿り着いたユウカは拳を構え……金太郎やハニワが唖然とする中、凄まじい衝撃音を響かせる一撃を石に放ち、石全体に悲惨なまでのヒビを走らせるのだった。



お読みいただきありがとうございました。

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