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94 スライムさんと明日の紙

 よろず屋に入ろうとしたら、きらっ、となにかが太陽の光を反射した。


 それは青くて透き通ったものだ。

 店の奥の方の草原にある。


 行ってみると。



「スライムさん?」

 私が言うと、ゴロリ、と転がったスライムさんは、私を見た。


「えいむさんですか……」

 力なく、私を見るスライムさん。


「どうかしたの?」

「どうもしていない、といったら、うそになりますね……」

 スライムさんは、ゴローリ、と一回転した。


「これからぼくは、やくそうを、10こくらい、あつめようとおもいます……」

「そうなんだ」


 見れば、近くにはかごがあった。

 これに入れるんだろう。


「でも……」

「でも?」

「……めんどくさいです」


 スライムさんは、草の上を、ゴロゴロした。


「やりたくないの?」

「だるいです」

 ゴロリ。


「やるんでしょ?」

「そうです……」

「じゃあ、やらないと」

「うーん」


 スライムさんは、草の上を、ゴロゴロゴロゴロした。


「えいむさんは、どうしてもやりたくないときって、ありませんか?」

「あるよ」


 スライムさんがピタリと止まった。


「そういうときは、どうしてますか?」

「明日の紙に書く」

「あしたのかみ、ですか?」

 スライムさんが起き上がった。


「紙でもなんでもいいんだけど、それに、明日やることをちゃんと書いておいて、一番にやるの」

「なるほど……」

「むりやりやると、つらいでしょ?」

「でも、あしたやるなら、きょうやったほうがいいんじゃないですか?」

「だって、今日はやりたくないことってあるじゃない?」

「あります!」


 スライムさんが、ぴょーん! と力強く、はねた。


「あしたやります!」

「……いちおうきくけど、明日でも間に合うんだよね?」

「はい! だいじょうぶです!」



 私たちはよろず屋に入った。

「紙は?」

「あります!」


 スライムさんが持ってきた紙に、私が代わりに書いた。


『あした、薬草をあつめる』


「これでいい?」

「いいです! ありがとうございます!」

 スライムさんが、はねた。


「じゃあ、安心だね」

「あんしんです!」

 スライムさんがお店から出た。


「どこ行くの?」

「ちょっと、やくそうのようすをみてきます!」

「どうして?」

「ちょっと、きもちが、かるくなったので!」


 スライムさんが、にっ、と笑った。

 それから、真顔になる。


「でも、あしたにしたほうが、いいですかね……?」

「どうして?」

「あした、やくそうをあつめるのに……」

「いいんじゃない?」

「そうですか!?」


 私は、スライムさんと一緒に、裏庭の薬草を見に行った。


「すくすく育ってるね」

「すくすくそだってます!」


 スライムさんは薬草に近づいていった。


「これなんて、ちょうど、とりたいですね!」

「とる?」

「え? ……」

 スライムさんは薬草をじっと見た。


「でも、これは、あしたのやつですし……」

「今日やってもいいんじゃない?」

「いいんですか!? ……そんな、いほうでは?」

 違法?


「私も、明日やるつもりで、ちょっと、今日のうちにやることもあるよ」

「えいむさんもですか?」

「うん。ちょっとやっておくと、明日、楽になるでしょ? 明日の私のために」

「なるほど! あしたのぼくのために、ちょっと、やっておきます!」


 私は、置いてあったかごを持って、ついていった。


「あ、えいむさん! たすかります!」

「私も、スライムさんのお世話になってるしね」

「たすかります!」

「どれがいいの?」

「これなんて、いいですね!」


 緑が、はっきりとしている薬草選んだ。


「これは?」

「いいです!」

「これは?」

「いいです!」



 そんなことをしていたら、10個、薬草を集めてしまった。


「スライムさん、終わっちゃったね」

「あっ、ほんとうです! しまった!」

 スライムさんが目を見開いた。


「でも私も、明日の予定、やっちゃったことあるよ」

「えいむさんもですか?」

「うん」

「いいんですか? あしたのよていなのに!」

「うん。どうせ明日やるんだし」

「なるほど……。あしたのよていは、おくがふかいですねえ……」

 スライムさんは、遠くを見ていた。


「やることがなくなったら、すっきりするでしょ?」

「はい!」

「じゃあ、お店に持っていこう」

「はい!」

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