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93 スライムさんと天気予報

「明日は雨が降りそうじゃない?」


 よろず屋で話をしていて、私はふと思い出してそんなことを言った。

 するとスライムさんが不思議そうにした。


 スライムさんは、ちょこちょこっ、と外を見て、もどってくる。


「くもってませんよ?」

「うん」

「はれてます」

「うん」

「どうして、あめがふりそうだって、おもったんですか?」

 スライムさんはふしぎそうだ。


「ええと、お父さんが、今日は空気がしめってるって言ってたから」

「えいむさんのおとうさんは、みらいのてんきが、わかるんですか?」

「はずれることも多いけどね」

「いやあ、それは、とてもいいですよ」


 スライムさんはしみじみと言った。

「みらいのてんきがわかると、べんりですよね!」

「うん」

「そういえば、そんなしょうひんが、ありましたね」

「え? 未来の天気がわかる商品?」

「はい。みたいですか?」

「うん」

「ちょっとまっててください!」


 スライムさんはお店の奥に消えた。



「はあ、はあ、これです……」


 スライムさんが息を切らせながら持ってきたのは、くつだった。


「スライムさん、だいじょうぶ?」

「だいじょうぶです……、はあ、はあ……」

「なかなか見つからなかったの?」

「みつかったんですが、ちょっと、きれいないしをみつけて、うっとりしてしまいました……!」

「うっとりしてたんじゃ、しょうがないね」

「はい! では、さっそくやってみてください!」


 スライムさんは、くつ、を私にすすめた。

 スライムさんによると、このくつをつま先に引っかけて飛ばすと天気がわかるのだという。


「ただしくたったら、はれます! よこにたおれたら、くもりです! ひっくりかえったら、あめです!」

「やってみていいの?」

「はい!」


 私はくつを脱いで、スライムさんが持ってきたくつに、つま先を引っかける。

「いくよ!」

「はい!」


 足を振って、えいっ、と飛ばした。


 くつは、ちょっと先に落ちて、転がって横に倒れた。

「くもりだね」

 と思ったら、起きた。


「はれです!」

 スライムさんは、ぴょん、とはねた。


「スライムさん、いま、くつが動かなかった?」

「うごきましたよ。はれのばあいは、ただしいかたちに、なりますので!」

 動く?

 どういうことだろう。


「これって、もう一回やったらどうなるの?」

「おなじですよ! みらいのてんきは、おなじですので!」


 私はくつを拾ってきて、もう一度やってみた。

 ぴょーん、と飛んだくつは、今度はくつの裏が地面にちょうど着地して、ぴたり、と止まった。


「はれです!」

 スライムさんは、ぴょん、とはねた。


 私はちょっと思いついた。

「スライムさん、変なやり方してもいい?」

「いいですけど、どんなやりかたですか?」

「ふふふ」


 私は靴を拾ってきた。


 つま先に引っかけて、と……。

 今度は遠くに飛ばさないで、すぐそばに、横向きに落とした。

 これは、くもりだね、とスライムさんに言おうとしたら……。


 横向きになって止まったはずのくつが、ぴょこんっ、と立つように向きを変えた。

 私はびっくりして、息が止まった。


「スライムさん、くつが勝手に動いたよ」

「そうですね」

 スライムさんはなんでもないように言った。


「これって、おまじないみたいなものじゃなかったの?」

「ちがいますよ! みらいのてんきがわかる、くつです!」

 スライムさんは、ぴょんぴょんぴょんぴょん、と私のまわりをはねていた。


「そうなんだ。ごめんね。私てっきり……」

「いいんですよえいむさん! そういうまちがいは、だれにでもあります!」

「ありがとう」

「ふっふっふ!」


 スライムさんはにこにこしていた。


「ということは、これは、未来の天気がわかるんだ。すごく便利なんじゃない?」

「そうですね」

「売れそうじゃない?」

「! そうですね!」

「いっぱいあるの?」

「そんなにいっぱいはないですけど、にゅうか、しましょうか?」

「いくらくらい?」

「100ごーるど、としましょう!」


 としましょう?


「じゃあ、売ってみる?」

「そうですね!」


 私たちがこのくつを、お店の売れ筋商品に指定しようとしたときだった。


「わっ」

 ぴょこん、とくつがひっくり返った。


「スライムさん、これ、どういうこと?」

「あめですね」

「それはわかるけど」

「これから、あめがふってくるということです」

「変わったの? ……あ」


 ぱら、ぱら、と雨が降ってきた。


 空は晴れている。


「はれてるのに、ふってます!」

「こういう天気、たまにあるよね」

「たまにあります!」


 そのとき、くつが、ぴょこん、とまた立った。


 ちょっとしたら、雨がやんだ。


「……スライムさん、もしかして、未来の天気がわかるって、本当に、すぐ未来ってこと?」

「そのようですね!」

「明日の天気じゃなかったんだね」


 そういえば、スライムさんは一回も、明日の天気なんて言ってなかった。


「じゃあ、あんまり売れないかもね」

「そうですか……」

 スライムさんはがっかりした。


 でも、せんたく物を干しているときに便利かもしれないと買って帰って、母に説明したら、近所で何人か、買ったみたいだった。


 居間のはしっこに置いてある。

 すごく便利ではないけど、ちょっと便利だと言っていた。

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