90 スライムさんとお金
よろず屋に向かって歩いていると、建物の横になにかが積み上がっているのが見えてきた。
石だろうか。
すぐ近くまでいくとわかった。
円形の石が積んであった。円の一周は、私がちょうど抱えられるくらいの長さで、厚さは私の手の大きさくらいある。
まんなかに、穴があいていた。
それが……、100個くらいあるかもしれない。
ひとつ持ち上げてみようとしたけれど、見た目よりもずっと重くて、ちょっとずらすだけでも大変だった。
「どろぼう!」
「えっ、ちがいます」
そう言いながら振り返ると、スライムさんがいた。
「おどかさないでよ」
私が笑うと、スライムさんは首を振った。
「わらいごとではありませんよ! これはおかねですよ!」
「どういうこと?」
「ぼくは、つねづねかんがえていました……。おかねは、べんりすぎます! だから、どろぼうに、ねらわれます!」
「どういうこと?」
「おかねは、もちはこびが、しやすすぎるからぬすまれるんです! もっとおおきくして、もちはこびにくくすれば、どろぼうもぬすめません! ちょっとしか! おかねが、ひとをくるわせなくなるのです!」
「なるほど……」
たしかに、これだけ重いお金だったら、盗まれにくいだろう。
「これ一個でいくらなの?」
「1ごーるどです!」
「えっ!?」
これが。
こんなに重くて1ゴールドだとしたら、さすがの泥棒も持っていく意味がない。
「……たしかに、名案かもしれないね」
「! そうでしょう!」
「うん。盗まれることはないよね」
「えいむさんもほしいですか!」
「えっと……」
「いらないですか……?」
スライムさんが不安そうに言う。
「じゃあ、7つもらおうかな。その7つで、薬草を買ってみよう」
「ぜひ、かってください!」
「じゃあ、これ」
私はスライムさんに10ゴールド硬貨をわたした。
「まいどありがとうございます、10こ、どうぞ!」
スライムさんが、ぴょん、とはねた。
「えっと、じゃあ、これをお店の中に運んで、買えばいいんだね?」
「はい!」
「よいしょ……」
私は、積み上がっていないうちから一個選んで、持ち上げようとした。
けれどもやっぱり重いので、転がすことにした。
円は、ちょっとガタガタしている。私は気をつけて転がした。
「あっ」
小石に乗り上げて大きく傾いてしまった。
お店の入り口前で、石が倒れた。
「だだだいじょうぶですか!」
「私はだいじょうぶ。石は……、割れてないね。……ん?」
私は思いついて、石が積み上がっているところにもどった。
「えいむさん? おかねが、とちゅうですよ?」
「よいしょ、よいしょ」
転がして、またお店の入り口に転がしてくる。
そして、さっきの石の近くに倒した。
「えいむさん、なにしてるんですか?」
私は続けて、4つ、6つ、とならべていく。
そうすると見えてきた。
よろず屋の前から、通りへと向かっていく短い道。
それほどちゃんとした道ではない。
その道の両端に、この石をならべてみると……。
「なんだか、いつもよりも、しっかりした道に見えない?」
「見えます!」
「全部ならべてみようか」
「みます!」
スライムさんは、ぴょんぴょんと石のところへ向かった。
そして、押そうとするけど……。
「うーん! うーん!」
「スライムさんは、無理しなくていいよ」
「やります!」
とりあえず、石を立ててあげたら、スライムさんは、転がし始めた。
「あ、むずかしいですね……」
スライムさんがよたよたと押していって……。
「あぶない!」
「うわー!」
スライムさんが、転がしていた石に乗ってしまった。
乗ったまま転がった石が、スライムさんをつぶしてしまう。
それだけではなく、つぶれたスライムさんが石にはりついて、またつぶされた。
「スライムさん!」
私はなんとかスライムさんに追いついて、石を止めた。
「えいむさん……」
平べったくなったスライムさんが、私をうつろな目で見ている。
「だいじょうぶ、スライムさん!」
「ぼくは、もう、だめです……。がくっ」
「スライムさーん!」
しばらくしたら、スライムさんがまたふくらんできた。
「いやあ、あぶなかったです!」
「気をつけないとね」
「おかねって、こわいですね」
スライムさんはしみじみと言った。




