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89 スライムさんと2分の1

「えいむさん、ぼくは、なやんでいるんです……」


 スライムさんは薬草を食べながら言った。

 私も、スライムさんにわけてもらって食べていた。


「ふうん。薬草おいしい?」

「おいしいです!」

「私もおいしい。今日の薬草、ちょっと味がちがうよね」

「わかりますか! じつは、あまみが、おおめなんです!」

「だよね」

「そのかわり、きずをいやすせいぶんは、すくなめです!」

「ふうん?」


 それは薬草なんだろうか。


「……」

「……」

「はっ! えいむさん、ぼくは、なやんでいるんです!」

「ふうん。薬草おいしい?」

「おいしいです!」

「私もおいしい」

「……」

「……はっ! えいむさん!」

「なに?」

「ぼくのなやみを、きかないようにしてますね!」


 スライムさんが、ぴょん、ととびあがった。


「ばれたか」

「えいむさん!」

「ちょっと今日は、静かに薬草食べてたいなと思って」

「えいむさん!」

「なあに?」


 スライムさんは、私を正面から見た。


「なにかもんだいがあったとき、それからめをそらすのは、かんたんです。でも、それにたちむかうときは、いつかくるのです。だったら、いますぐ、たちむかいませんか!」

「……たしかにそうだね」

「わかってくれましたかえいむさん!」

「うん!」


「じゃあ、スライムさんのなやみを聞こうか」

「はい!」



「えいむさんは、これをどうおもいますか?」


 スライムさんは、カウンターの上で、ころころした石の上に箱をかぶせた。

 横に、同じような箱を持ってくる。


「ちょっと、めをつぶってください」

「いいよ」

「あけてください」

 スライムさんはすぐ言った。

 

目を開けると、変わらずそのまま箱がならんでいる。


「ふたつのうち、どちらかにいしがはいってます。いしは、どっちにはいってますか?」

「え? うーん、こっち」


 私は、いま石が入ってたほうを指した。

 入れかえる時間なんてなかったと思うし。


 スライムさんは、もう片方の箱を開けた。

 からっぽだ。


「あたったね」

「そう思いますか?」

 スライムさんが言う。


「うん」

「でも、こっちはまだあけてませんよ」

 スライムさんは言った。


「そう? でも、さっき入ってたし、どっちかに入ってるんでしょ?」

「そうです」

「じゃあ、あたりでしょ?」

「でもぼくは、このはこをあけるまでは、なかにはいってるかどうかは、わからないとおもうんです」


 スライムさんは真剣な顔で言った。


「なるほど。たしかに、見るまではわからない気もするよね」

「そうでしょう!」

「なんでかな。自分を信用できないのかな?」

「ぼくはえいむさんのこと、しんじてますよ!」

「ありがとう。じゃあ、なんだろう……」


 スライムさんがこっそり石を捨ててたりしないかぎり、石は箱の中にある。

 私はスライムさんを疑っているわけじゃないのに。

 絶対入ってると思うけど、もしかしたらないような気もする。

 ふしぎだね、とスライムさんと言い合っているような気もするのだ。


「うーん」

「ふしぎですよね」

「うん」


「だから、ぼくはこうおもうんです」

 スライムさんは、奥から別の箱を出してきた。


「このなかには、おいしいやくそうがはいってました」

「うん」

「ぜんぶたべました」

「そっか」

「でも、ぜんぶたべたようなきがする、かもしれません。はこは、とじてから、かなりのにっすうが、たっています」

「ふむふむ」

「どうおもいますか?」


 スライムさんは言った。


「スライムさんは、もしかしたら入ってるかもしれない、って言いたいの?」

「そうです!」

「もしかしたらね?」

「そうです! もしかしたらです!」


 私はそっと、箱に手をのばした。

「いけませんよえいむさん!」


 スライムさんが、箱と私の間に立ちふさがる。

「どうして?」

「なかをみてはいけません!」

「でも中を見ないと……。見たら、入ってないって、わかっちゃうから?」

「そうです! あけなければ、もしかしたらはいってるかもしれないんです! そうしたら、たべようとおもえばたべられるかもしれない! というきもちでいられます!」


 私は手を引っ込めた。


「そっか。じゃあ、ふつうの薬草食べようか」

「はい!」

「でもたぶん入ってないよね?」

「はい! ……あ、わかりません!」

「ふふふ」

「えいむさん!」

「ふっふっふ」

「えいむさん!」

「薬草食べちゃおう」

「ちょっと! だめですよ!」


 私たちは、開けない箱を見ながら、ちょっとおいしい薬草を食べた。

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