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85 スライムさんと川

「これは、ちょっと……」


 私の一歩一歩が重い。


 太陽が熱い。

 空気が熱い。


 今日の暑さはちょっとすごい。

 どうしてしまったんだろう。


 頭がくらくらしそうなほどの暑さだ。

 スライムさんのよろず屋が見えてきた。

 でも、もう私は力が出ない。

 さようなら……。



「ふう」

 生き返る思いだった。


 近くを流れていた小川にひざから下を入れると、体からどんどん熱が流れていってしまうみたいだ。

 もやもやしていた頭の中が、すっきりした。


「えいむさん、なにをしてるんですか?」

「え、スライムさん?」


 見ると、川の上流からぷかぷかと、箱が流れてくる。

 金属の箱だ。

 それにスライムさんが乗っていた。

 端からちょっとのぞいている目で、私を見ていた。


「とまれないので、とめてもらっていいですか!」

「わかった!」


 私はちゃぷちゃぷと川に入って、スライムさんを止めた。

「スライムさん、どうしたの?」

 私は川から、スライムさんの乗った箱を引き上げようとしたけれど、重くてうまくいかなかった。


「えいむさん。きょうはあついですよね」

「うん」

「じつは、かわは、ほかのばしょより、すずしいんです!」

「そうなんだ」

「あしを、かわにいれなくてもですよ!」

「そうなの?」

「そうなんです!」

「どうして?」

「ふっふっふ」


 スライムさんは、もったいぶるように笑う。

「ぼくが、わかりません! というと、おもっていますね」

「まあ、うん」

「じつはですね。みずのほうが、あたたまりにくく、さめにくいのです」

「ほうほう?」

「だから、かわのちかくは、すずしいんです。それに、みずというものは、じょうはつするとき、まわりのねつをうばうんです」

「蒸発するとき熱を奪う?」

「そうです。かわは、みずがたくさんあるので、ねつをうばいやすいばしょです。そして、うっ!」

 スライムさんが、箱の中でうずくまった。


「どうしたの!」

「ちょっと、あたまを、つかいすぎました……がくっ」

「スライムさーん!」



 私は箱を小川の岸に固定して、中からスライムさんに自分で出てもらった。

 それからなんとか地面の上に持ち上げたけど、とても重い。


「よいしょっ!」

「おつかれさまです」

 スライムさんが言った。


「ぼくは、すずしさをもとめて、かわにむかいました。りゆうはさっきいったとおりです!」

 スライムさんは力強く言った。

 まだ続きがありそうだったけど。


「きんぞくのみずぎで、すずしくなることもかんがえましたが、それはえいむさんといっしょにいこうとおもいまして」

「ありがとう」

「いえいえ。えいむさんにはおせわになっていますので」


「かわりに、つかわなくなったしょうひんのはこが、ちょうどよさそうなので、あれにのってみたんですけど」

「涼しかった?」

「はい! でもおりられなくなりました!」

「おりられなくなった?」

「おりるのはできます! おりられないんです!」

「どういうこと?」

「あー」


 スライムさんが、地面にぺたん、と倒れた。


「スライムさん?」

「あついー」

 スライムさんはそう言うと、なんとか起き上がり、ぐい、ぐい、と箱を押して、小川に向かう。


「スライムさん、また川に行くの?」

「はい……。あついので……」

「どこまでも流れて行っちゃったら困るよね」

「でも、ぼくがとびおりたら、はこだけが、どこまでもいってしまうのです……」

「そうだねえ」

「あつい……」

 スライムさんは、なにかにとりつかれてしまったように、必死で箱を押していく。

「じゃあ、こうしよう」



「これはきにいりました!」

「でしょう」


 私は、小川の岸に座って、ひざまで水につかった。

 それで、スライムさんが乗っている箱を浮かべて、すぐ近くに引き寄せたら、私のひざに引っかかって流れていかなくなった。


「すずしいです!」

「涼しいね」

 小川の水もそうだけど、風も、他の場所よりも涼しく感じられる。それに風がさっきより多く吹いているような気もした。


「スライムさん、川って風も涼しいね」

「それにも、りゆうがあります!」

「なに?」

「すずしいですねえ……」


 スライムさんは、ぺたん、と箱に体を押しつけた。

 ひざに伝わる金属の温度はとてもひんやりしていて、気持ちよかった。

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