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84 スライムさんとたんさん

 歩いていたら、よろず屋が見えてきた。

 今日はなにをしようかな。

 なんて考えていたら。


「え、なに……?」


 変なものが見えてきた。

 草原の上で、ぼよんぼよん、とはずんでいる。


 水のかたまりみたいなものなんだけれど、一部がぱん! と小さく弾けると、その反対側に飛んだ。

 着地すると、ぼよんぼよん、として、またしばらくすると、ぱん! と弾けてはずむ。


 なんだろう。

 近寄らないほうがいいんだろうか。


 すると、そのぼよんぼよんが、こっちを見た。


「えいむさん!」

「え? スライムさん?」

「はい!」

 ぱん!

 横が弾けて、反対側にスライムさんが転がっていった。


「あ!」


 そのまま坂を下っていってしまった。


「スライムさーん!」




「いやあ、びっくりしましたねえ」

「私がびっくりしたよ」


 転がっていったスライムさんは坂の下でへこみにすっぽりはまって、動けなくなっていた。


「いま引っ張り出すからね」

「あ、まだぼくにさわらないほうがいいですよ!」

 そう言ったかと思ったら、ぱん! という音がした。


「うわあ!」

 スライムさんが飛び出してきた。


 顔にぶつかってきて、私とスライムさんは道に倒れて、別々の方に転がった。


「えいむさん! だいじょうぶですか!」

 スライムさんがやってくる。


 そして、ぱん! という音がして、また私に突っ込んできた。

 ぶよん! と私にめり込んだスライムさんを抱えて、私は地面を転がった。


「ぶほっ!」

「えいむさん!」

「……、もう、スライムさん?」

「すいませんでした!」

 スライムさんが言う。


 そして、またパン! となって、スライムさんは転がっていってしまった。

「スライムさん!」



「落ち着いた?」

「はい……、だいじょうぶそうです……」


 私たちはよろず屋から離れた、坂の下のほうにある、木陰で座っていた。


「どうしたの?」

「じつは、たんさん、というものをのみまして」

「たんさん?」

「あまくて、さわやかな、しゅわーっ、とするおいしさで、とってもいい、のみものでした!」

「へー。私も飲みたいな」

「いけません!」


 スライムさんはぴょん、とはねた。

「わっ」

 また!


「あ、これは、たんさんのやつではなく、ぼくの、じりきのやつです」

「そっか。よかった」

「あんしんです!」


 スライムさんはぴょん、とはねた。


「それで?」

「はい。たんさん、というものは、おそろしいわながはられていました」

「ワナ?」

「しゅわしゅわしているので、おいしいとおもいきや」

「ふむふむ?」

「みずのなかに、ばくはつするせいぶんが、はいっていたのです」

「おお……」

「そのため、みずといったいかする、たいしつのぼくは、からだのいちぶがばくはつし……、こんなことになってしまったのです!」

「なるほどね……」


 私は大きくうなずいた。


「スライムさん」

「なんですか?」

「とってもおいしかった?」

「あじは、とってもよかったです!」

「なるほど。じゃあ、私が飲もうか?」

「どういうことですか?」

「スライムさんは、体が水だから、たんさんの影響を受けやすいと思うんだけど、私だったら平気そうじゃない? そんなにおいしいなら、飲んでみたいし」

「そう、ですね……」


 スライムさんは、しょんぼりした。


「どうしたの?」

「たのしみに、していたんですけど……、もう、のめません……」

「そっか……」

「じゃあ、もどりましょうか……」


 スライムさんは、とぼとぼと歩き始めた。


「あ!」

「どうしましたか?」

 スライムさんが振り返った。


「思い出した! 私、たんさん、嫌いだった!」

「えいむさんは、たんさん、のんだことあるんですか?」

「あった気がする」

「すごい! たんさんは、めずらしいものなんですけどね!」

「ふっふっふ。私を誰だと思ってるの? エイムさんだよ!」

「えいむさん、さすがですね!」

「ふっふっふ。だから、飲むのはやめておくね」


 私が言うと、スライムさんは元気を取りもどした。

「えいむさんはのんでもいいんですよ?」

「やめとく。嫌いだもん」

「しょうがないですねえ! では、べつのおいしいものを、さがしましょうね!」

「うん!」


 スライムさんは、ぴょん! と大きくはねた。

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