73 スライムさんとガチャガチャ
「なにがおきるかわからない。だから、じんせいはおもしろい……」
スライムさんはよろず屋の前のちょっとした広場を歩きながら、そう言った。
「そうでしょう?」
キリッ、と私を見るスライムさん。
「えっと。スライムさん、これはなんなの?」
よろず屋の前には、私の腰くらいの高さの箱が置いてあった。
金属製だろうか、銀色だ。
そして下の方に、なにかが出てくる口があって、その上にレバーがある。
レバーの近くには、穴があいていた。細い、小さな縦の穴だ。
「ちょっと、ればーをまわしてください」
「これ?」
「そうです。でも、まわすまえに、そのあなに、おかねをいれてください!」
「お金っていっても、私、おつかいのお金しか持ってきてないよ」
「なら、これをいれてください!」
スライムさんが10ゴールド硬貨を持ってきた。
「これを入れればいいの?」
「そうです!」
私は、穴に硬貨を入れた。
それからレバーをまわす。
ぐぐぐ、っと一回転させると、大きな箱の中からころん、と丸いカプセルが出てきた。
「あけてください!」
カプセルは、半球がふたつくっついて、球体になっていた。
ちょっとひねると、開く。
中には薬草のようなものが入っていた。
「薬草?」
スライムさんに見せると、スライムさんは目を大きく開いた。
「あ! こ、こ、これは、おおあたりです!」
「え?」
「これさえあれば、ひとがしんでしまうようなどくでも、たちどころにけしてしまう、げどくのもり、というやくそうです! あー、これはすごい、さすがえいむさん!」
スライムさんが大げさに言う。
「じゃあ、はい」
私は解毒の森、をスライムさんに返した。
「なんですか?」
「これは、スライムさんのお金で出したから」
「でもえいむさんがだしたものですから、あげますよ?」
「ううん」
私は首を振って、あらためて、大きな箱を見た。
「つまりこれは、なにが出てくるかわからない、っていうのが楽しいものなんだね?」
「はい!」
「じゃあ、ちょっと自分のお金でやってみようかな」
「いいんですか? おつかいのおかねなのでは? いえのおかねに、てをつけるんですか? えいむさんも、なかなかのわるですねえ」
ふふふ、とスライムさんが笑う。
「ちがうよ」
「でもそれは、いえのおかねですよね?」
「一回帰って、自分の10ゴールドでおつかいすればいいでしょ?」
「なるほど」
私は、10ゴールドを入れて、レバーをまわした。
コロン、と出てきたカプセルを開ける。
中にはキラキラと光る石が入っていた。
スライムさんがまた目を大きく開いた。
「こ、こ、こ、これはー! つきよのいし、だー!」
スライムさんが、ぴょーん、と飛び上がった。
「月夜の石?」
「そうです! これはつきよにみると、とてもしんぴてきなかがやきをはなつ、きちょうないしですよ! じか、100まんごーるどくらい、するかもしれません!」
「ふーん」
「……おや? えいむさん、あんまりうれしそうじゃないですね」
「スライムさん。これ、もしかしてだけど、高価なものしか入ってないんじゃない?」
「な!」
スライムさんは、ぴょーん、と飛び退いた。
「なななな、なにをこんきょに! そんな!」
「高いものばっかり入れて、喜んでもらおうとしてるのかな、って」
「ち、ち、ち」
「ちがうの?」
「……」
スライムさんは、ぐったりとした。
「すべて、えいむさんには、おみとおしだったんですね……。ぼくが、やりました……。たいほしてください……」
「逮捕はしないよ」
「よろこんで、ほしかっただけだったんですよ……」
「それはわかるけど、高すぎない?」
「え?」
「もうちょっと、ささやかなほうがいいよ」
私は言った。
「どういうことです?」
「だって、10ゴールドで遊んでたのに、100万ゴールドのものなんてもらっちゃったら、びっくりするし、なんだか悪い気がしちゃうもん」
「そういうものですか?」
「うん」
「ははあ……」
「だから、当たりは、30ゴールド分くらいでいいと思うんだよね。薬草がいっぱい入ってるとか」
「そんなものでいいんですか? にんげんのよくぼうは、そんなものですか?」
「うん」
「そうだったのですか……。よくぼうとは、それほどに、ふくざつかいきだったのですね……。まだまだ、べんきょうがたりませんでした。これから、いれかえます……」
「私も手伝うよ」
「はい!」
そして、私はスライムさんと一緒に、カプセルの中身を詰め直した。
お店の前に置いておいたら、お店が開いているときも、いないときも、ちょっとずつお金が入っているらしい。




