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71 スライムさんとつむじ風

 道を歩いていたら、落ちていた葉っぱがくるくると渦をまきながら飛んでいた。私のひざくらいの高さだ。

 そのくるくるの風が私に近づいてくる。

 脚にからみついてくるようにやってくると、葉っぱはくるくるしたまま、通り抜けていった。

 くるくるしながら、離れていった。

 ああいう風って、なんていったかな。



「それは、つむじかぜですね」

 スライムさんは言った。

 カウンターの上にいて、なぜか薬草をふんで、平べったくしている。

「つむじ風か。なるほど!」

 私は納得した。

 めずらしく、スライムさんが正解を言っている気がする。


「えいむさん。あなたはいま、ぼくに、しつれいなことをかんがえましたね?」

「え? わかるの?」

「そうだったんですかえいむさん! しつれいですよ!」

 スライムさんがぴょんぴょん。


「あれ、スライムさん、もしかして、だましたの? わからないのにわかったふりしたの?」

「むむ。えいむさん、そ、そんなこといってるんだったら、つむじかぜをつくれるほうほうを、おしえてあげませんよ!」

「え、つくれるの?」

「どうしましょうかねー」


 スライムさんは、もったいぶるように私を見た。

「つくるって、風を?」

「そうですよ!」

「かぜをつくるって、どういうこと?」

「つまりですね」

 スライムさんは、カウンターの奥に降りるとそのあたりをごそごそと探っていた。



 頭に杖をのせたスライムさんはお店の外に出た。


「こうします」

 スライムさんが、体で包むように持った杖をくるりとまわす。

 すると。


「わっ」

 私の足の近くで、空気がくるくるまわった。

 でもすぐ消えて見えなくなった。


「つむじ風だ!」

「すごいでしょう」

「すごい!」


 私が言うと、スライムさんは満足そうに、にこにこしていた。


「その杖の力なの?」

「はい。これは、かぜかんけいのつえです!」

「風関係」

 手広くやっている杖のようだ。


「大きいつむじ風もつくれるの?」

「おおきくまわせば、できます! たくさんまわすと、つよいかぜになりますよ!」

「へえ」

「やってみますか?」

「え?」

「どうぞ」


 杖をわたされてしまった。


「どうしました?」

「うーん。なんか、ちょっとこわいかもしれない」

「だいじょうぶですよ。さいあく、まちがほろぶくらいです」

「大変だよ!」

「えいむさん。きをつけていれば、さいあくなことには、ならないものです。さいあくとは、さいあくをわすれてしまったひとに、おこるものです……」

 スライムさんは遠い目をした。


「えっと?」

「つまり、こわいなら、そっとやればいいんです」

「なるほど」

 私は深呼吸をした。


 空中で、さっきスライムさんがやったよりも、さらに小さいくらいの円を描いてみる。

「あ」

 足の近くで空気がちょっとだけ、くるりとまわった。


「出た」

「はい!」

「もう一回、やってもいい?」

「はい!」


 私は、同じくらいの大きさの円を今度は、くるくるくる、と三回やってみた。

「お」

 私のひざくらいの高さしかないけれど、葉っぱや土を巻き上げたのが、はっきり見えた。


「まだまわってる」

「えいむさん、もっとだいたんになってみましょう」

「大胆に?」

「もっと、こころをときはなつのです……」


 それはよくわからないけど、私はまた、小さな円を描いた。

 でも今度は、何度も何度もくるくるやってみる。

 くるくるくるくる、と十回くらいやってみた。

 するとしっかりとその場に残っている。


 落ちていた葉っぱを上から落としてみたら、風に巻き込まれてくるくる一緒にまわっている。


 止まらないように、私は追加でまたくるくると杖を回しながら、スライムさんにきく。

「スライムさん、これ、さわったらどうなるの?」

「すずしいんじゃないかとおもいますけど」

「ふうん」


 そう言われたので、私は軽い気持ちで、足をその小さなつむじ風に足をふみいれてみた。

「わっ!」


 足が押し返されて、私は尻もちをついていた。


「えいむさん! だいじょうぶですか!」

「うん、平気だよ」

 私はすぐ立ち上がった。

 痛みもない。


「ちょっとびっくりした。なんだか、誰かが、私の足をぐいっ、て押し返したみたいだった」

「そうなんですか?」

「うん」

「……じゃあ、ぼくもやってみますね!」

「え?」


 なにが、じゃあ、なの? ときこうと思ったら、スライムさんはもう、つむじ風に向かって、飛びこんでいった。

「えいっ!」

 と入っていったスライムさんは、つむじ風の中でくるりと回転した。と思ったら、よろず屋の屋根くらいの高さまでぴょーん、と回転しながら飛び上がった。


 そして同じ場所に落ちてくると、つむじ風に受け止められた。

 受け止めた勢いでつむじ風は消えてしまったみたいで、スライムさんは、ふわりと着地。


「だ、だいじょうぶ、スライムさん?」

「はい! ちょっと目がまわりましたけど、おもしろいです! もう一回やってください!」

「ええ?」


 スライムさんがせがんでくるので、私はもう一回つむじ風をつくった。

 そこへスライムさんが飛びこみ、ぴょいーん、と高く上がって、つむじ風にもどってくると、ふわりと着地だ。


「おもしろいです!」

 スライムさんの目がちょっとくるくるまわっている。


「私もやってみようかな」

「おもしろいですよ!」

「じゃあ」


 杖をくるくるまわして準備。

 ちょっとこわいけど、そこに飛びこんでみた。

 そうしたら、ふわっ、としたけど、それだけ。

 すぐ着地してしまった。


「あれ?」

 もう一回風を準備してやっても、同じだった。


「あの、いいにくいんですけど……」

 スライムさんが言う。


「えいむさんは、その、たいじゅうが、おもいじゃないですか……? だから、だと、おもいます……。あしだけなら、あがると、おもいますけど、ぜんしんは、ちょっと……。どうしてもやるなら、もっとつえをまわすと、とびあがれるようになると、おもいます……」

「ちょっとスライムさん! その言い方だと、私がものすごく体が重いみたいでしょ!」

「あ……、えっと……、そんなことは、ありません……」

「スライムさん!」

「えいむさんがおこった!」


 スライムさんは、私が準備したつむじ風を巧みに利用すると、ぴょーん、とよろず屋を飛び越えて、お店の裏の方へ飛んで逃げていってしまった。


「スライムさーん!」

 なにそれすごーい!

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