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70 スライムさんと早押し

「もんだいです」

 よろず屋に入ったら、急にカウンターの上にいるスライムさんがそう言った。


「え?」

「せかいで、いちばんたかいやまのなまえを、こたえなさい」

 スライムさんはまじめな顔で言った。


「なんの話?」

「そのぼたんをおしてから、おこたえください」

 スライムさんは、すっ……、と四角い小さなものを、前に押した。

 手のひらくらいの大きさで、上の面に、ぽちっ、と黒いものが出ていた。

 それを押してみる。


 ぽーん!


「わっ」

 元気な音がした。


「はいえいむさん!」

「え?」

「おこたえください!」

「ええと」

 世界で一番高い山、って言ってたっけ?

 ……うーん。


「えっと、あの、よくわからな」

「じかんぎれです!」

 ブー、とスライムさんが言った。


「難しいよ。正解はなんなの?」

「それは」

「それは?」

「……ぼくもわかりません」

「ええ?」

「じつは……」


 スライムさんによると、この、早押しボタン、というものを手に入れたので、さっそく問題を出したかったのだという。


「でもじゅうだいなもんだいがあったのです。ぼくは、もんだいをしらなかったのです……!」

「えっと?」

 問題があった、問題を知らない、と問題という言葉が重なっているのでわかりにくいけど。


「じゃあ、わかる問題を出せばいいんじゃない?」

「そうですか……?」

「うん」

「なるほど」


 スライムさんは、ぱっ、とひらめいた。


「それなら。もんだいです! このおみせで、やくそうは、いくらでしょう!」

「はい!」

 ポーン!


「はいえいむさん!」

「7ゴールド!」

「せいかいです!」

 スライムさんは、ぴょん! とはねたあと、うなだれてしまった。


「どうしたの?」

「なんだか、かっこよくないです」

「そう?」

「せかいでいちばんとか、そういうもんだいが、いいんです!」

 スライムさんがぴょんぴょんはねる。


「難しいのが、かっこいい?」

「はい!」

「……でも、難しくなくても、おもしろいよ」

 私はボタンを押した。


 ポーン!


「7ゴールド! ……こんな感じで答えるの、おもしろいよ」

「おもしろいんですか?」

「うん。かんたんなのでいいよ」

「そうですか? じゃあ、いきますよ?」

 スライムさんはまだしっくりきていないようだった。


「うん」

「もんだいです。ぼくは、みずにぬれると」


 ポーン!


「あ」

 指があたってしまった。


「ごめんごめん、まちがって途中で押しちゃった」

「……いいですね、えいむさん!」

「ん?」

「とちゅうでおすの、いいですね、えいむさん!」


 スライムさんは興奮してとびはねる。


「とちゅうで、おすの、かっこいいです!」

「そうかな?」

「そうです! こたえてください!」

「え?」

「おしたんだから、こたえてください!」

「えっと……」


 スライムさんが、水にぬれると……?


「水を吸って、大きくなる」

「せいかいです! すばらしいです!」


 スライムさんがぴょぴょぴょぴょと、はねまわった。


「ぼくも、やってみたいです!」

 スライムさんは言った。


「いいよ」

「はい! もんだい、だしてください!」

「わかった。じゃあ、スライムさんは、私によく、食べ物をくれますけれども、それはいったいなんでしょう!」

「……んん?」

 スライムさんは体を傾けた。


「んん?」

「……やくそう」

 私は小さい声で言った。

「あ!」


 ポーン!


「はいスライムさん」

「やくそうです!」

「正解!」

「やりました!」

 スライムさんはぴょんぴょんはねた。


 すぐ止まった。

「もんだいのとちゅうでこたえるやつ、できませんでした」

「じゃあ、他の問題を」

「おなじもんだいで、おねがいします」

「同じでいいの?」

「はい!」

「……それ、かっこいいの?」

「はい! もんだいのないようは、このさい、どうでもいいのです!」

「どうでもいい」

「じゅうようなのは、みためのかっこよさです!」

「なるほど……」


 言い切られると、そんな気がしてくる。


「ではえいむさん! やくそうのもんだいを、よろしく!」

 スライムさんは、きりっ、とした顔で問題を待っていた。

 たしかにかっこいい。

 答えをあらかじめ知っているという、不正をしているとはすこしも思えない、堂々たる態度だった。


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