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65 スライムさんとあやしいお客

 よろず屋の前に行くと、中に入っていく男の人たちの姿があった。

 武器を持った人たちで、見たことがない。


 めずらしいなと思いながら、私も入っていった。


「こんにちは」

 お店に入ると、もうお客さんが三人いて、ぎゅうぎゅうだった。

 男の人が私をじろりと見たのでドキッとしたけれども、すぐその人たちはカウンターの向こうに話しかけていた。


「なんだこりゃ、ごちゃごちゃしてせめえ店だな。おーい。店主はいねえのか!」

 ひげの人の声は、よろず屋がふるえるような、大きな声だった。


「はいはい、いらっしゃいませ!」

 スライムさんが、いつものように、ぴょん、とカウンターにのった。


「お、お? なんだ、スライムか?」

「そうです、スライムです!」

 ひげの人は、顔を近づけてスライムさんをしげしげと見た。


「おい見ろよ、スライムがしゃべってやがる」

「はい! ぼくはすごいスライムですので!」

「こいつはおどろいた」

「へえ」

「おどろきでやんす」


「どんなものをおもとめですか!」

「まあ、値打ちもんを探してんだがな。たとえば、ある剣だ。まあ、こんなおかしな店にはねえだろうが」

「それ、あります!」

「まだなにも言ってねえだろうが!」


 私がつい、くすくす笑っていたら、ひげの人がこっちを見たので、私はぴしっ、とした。

「それで、なにをおさがしですか!」

「なにって、お前に言ってもしょうがねえんだよ! たとえばそうだな、こういう剣で、柄のところに頭に矢が刺さった人間の彫刻が」


 ひげの人は、入り口近くに置いてあった剣を手にとって、スライムさんに説明を始めた。

 その説明する声がだんだん小さくなって、ひげの人は、じっと剣を見ていた。

「これは……」

「それは、えいゆうのけんです!」

「ちげえ! 愚者の剣だ!」

「そうです!」

「そうですじゃねえ! お前、これいくらだ! いくらで売る!」

「おかいあげですか?」

「そうだ!」

「だったら、そうですねえ……。ええと……」

「いくらだ!」

「ええと、ちょっとおまちください」


 スライムさんはカウンターをおりて、お店の奥に行ってしまった。

 たぶん、値段を確認しにいったんだろう。

 するとスライムさんが行った先を見ていた男の人たちが、なにか小声で話をしていた。


「おかしら。これ、買うならいくらなんです?」

「そうだな。まあ、30万はするだろうな」

「30!」

「30だったら買いだ。40でも、買ったほうがいいかもしれん。あのスライム、価値をわかってないかもしれねえからな。とりあえず買い叩くつもりで、1万から話を振って、まとめていくぞ」


「……なあおかしら。あいつがもどってくる前に、持ってっちゃいましょうよ」

「なに?」

「いまのうちに持ってちまえば、逃げ切れますぜ」

「……たしかにな」

 ひげの人は、剣を抱えるようにした。


「他にも、めぼしいもの、持っていっちまいましょうよ」

「そうでやんすそうでやんす」


 本当に持っていってしまうんだろうか。

「あの」

 私がおそるおそる言うと、私がびっくりするくらい、彼らはびくっ、としていた。


「ななななんだ!」

「それ、どうするんですか」

「どどどどうもしねえよ、なあ?」

「へ、へい!」

「そそそそうでやんす」

「ちょっとこう、なんだ。店の外で素振りっていうか、なあ?」

「へい!」

「そうでやんす!」

「スライムさんに言ってからのほうが」

「まあ、かたいこと言うなよお嬢ちゃん。じゃ、ちょっくら外へ、と」


 ひげの人はそのままお店を出ていこうとした。

 けれども、つるっとすべて転んだ。


「ってー」

「おかしら、しっかりしてくださいよ」

「剣は無事ですかい?」

「おおよ」

 ひげの人は、大事そうに剣を抱えて立ち上がった。


「ちょっと足がすべることくらい、あるだろうがよっ、と、おわっ!」

 また転んだ。

 するとその衝撃で、壁に立てかけてあった斧が倒れてきて、転んだひげの人の、頭の横に刺さった。 


「うおおおお!」

 ひげの人があわてて立ち上がるけれども、また足がすべって転んで、かべにぶつかった。

 壁がゆれたせいで他の剣が倒れてきて、ひげの人がはいつくばって、なんとかかわした。


「なんだ、どうなってやがる!」

 そう言ったひげの人の前に、天井のところに飾ってあったヤリが落ちてきそうになったのを見て、急いで離れた。


「はあ、はあ、はあ、おいてめえら、逃げるぞ!」

「他のものは持っていかないんですかい?」

「バカ野郎! まだ気づかねえのか! ここは魔導師の店だ!」

「なんですって?」

「本当にスライムが店主なわけあるか! あれは使い魔だ! 俺たちが盗もうとしてるのをどっかで監視して、笑いながら攻撃をしかけてきてんだよ!」

「で、でも、いまのは偶然じゃあ?」

「そう見えるようにしてるんだよ! そこのお嬢さんみたいな客にも、そう見えるように! おかしいと思ったぜ、こんな店にたまたま愚者の剣があるわけねえんだからな! 他にも、そのへんにあるもんも、べらぼうに高いもんばっかりだ! やられたぜ。 このままじゃ殺されちまう! 逃げるぞ!」

「へ、へい!」

「わかったでやんす!」


 ひげの人は、剣を放り出すと、転びながら店を出ていった。

 外を見ると、ひげの人は何度も転んで、一緒に来ていた男の人に肩を貸してもらいながら逃げていった。


 男の人たちが見えなくなってから、やっとスライムさんがもどってきた。

「ええと、ねだんは、それなりです! ……あれ? おきゃくさんはどうしたんですか?」

「かえったよ」

「あれ、なんだかちらかってますね! いけないおきゃくさんだ!」

 スライムさんがカウンターから降りて、片づけを始めた。


「手伝うよ」

「くろうをかけますね、えいむさん」

「ねえ、スライムさんって、使い魔じゃないよね?」

「つかいま? ちがいますよ」

「このお店に、魔導師とか、いないよね?」

「いませんよ」

「そうだよね」

「へんなことをいう、えいむさんですねえ。あ!」


 スライムさんは、最初にひげの人が転んだあたりに、顔を近づけた。


「どうしたの?」

「ここにさっき、つるつるぬるぬるになるものを、こぼしてしまったんです! あれを、くつでふんだら、しばらくとれなくて、たいへんです! ぼくは、おきゃくさまにひどいことをしてしまいました!」


 うわー! うわー! とスライムさんが、体をグネグネさせて後悔していいた。


「こんどきたら、たっぷりと、おもてなしをします!」

「そうだね」

 しなくていいと思ったけど、おもてなしをしておいたほうが、悪いことにはならないような気がした。

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