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64 スライムさんとお返し

 よろず屋に入った私は、足を止めた。


 カウンターにあったのは、白いかたまりだった。

 丸っこくて、どこか、ましゅまろ、に似ているけれど、私の頭くらいの大きさがある。

 スライムさんが持ってきたんだろうか。


 スライムさんはどこだろう。

「スライムさん?」

「むむむ」

 白いかたまりが言って、ぐらぐらと動いた。


 私は心のなかで1、2、3、と数えてから、もう一度よびかけた。

「スライムさん?」

「むむむ」

 白いかたまりは言って、ぐらぐらと動いた。


「スライムさんなの?」

 私はカウンターの上にある白いかたまりをさわってみた。

 ふわふわとやわらかく、表面はかわいていた。

 スライムさんの表面はぷるぷるしていて、しっとりしている。

 ではこれはなんだろう。


「ん?」

 白いかたまりが、ぷるぷると、ふるえ始めた。

 すると、いきなりはじけた。

「わっ」

 白いものが飛び散って、中からスライムさんが現れた。


「いらっしゃいませ、えいむさん!」

「もう、スライムさん!」

「どうしましたか?」

「どうしたじゃないよ! ああ、こんなに散らかして」

 カウンターや、床に、白いものが飛び散っている。


「とくべつな、とうじょうをしようとおもいまして」

「しなくていいよ! これ、なに?」

「ましゅまろです」

「あ、やっぱり」

「ましゅまろは、なかもずっとまっしろで、あまくて、ふわふわでした」

「え? 虫の巣なんじゃないの?」

「ちがいました。おかしです」

「なーんだ」

「ぼくは、おおきいましゅまろをてにいれたので、こう、なかにはいって、たべて、かくにんしましたので!」

「それはすごい」


 お菓子の家、というのは考えたことがあったけれども、自分の体と同じくらいのお菓子の中に、食べながら入ってしまうなんて、考えたこともなかった。


「ぼくはすごいすらいむなので、それくらいのすごさは、すごいのです!」

 スライムさんは得意げだった。

 よく見ると、スライムさんの中は、白いものがぎっしり詰まっているようだ。

 いま食べた、ましゅまろが。

 虫はいないみたいだ。


「それなら、私も食べてみようかなあ」

「どうぞどうぞ!」

 スライムさんが出してくれたましゅまろを、口に入れてみた。


「ん!」

 弾力があって、でも口の中ですこしずつ溶けていくような、不思議な食感だった。

 そしてなにより、あまくておいしい。


「砂糖がたっぷり使ってありそう」

「そうですね! さいこうです!」

「スライムさん、よっぽどましゅまろが気に入ったんだね」

「あ、そうだえいむさん。ましゅまろを、ください」

「え?」


 急に言われて、私はましゅまろを落としそうになってしまった。


「このまえ、ぼくは、ちょこをあげましたね?」

「うん」

「ちょこをくれたひとには、ましゅまろをおかえしする。それがしゃかいの、るーるらしいのです」

「社会のルール」

「ください」

「え、でも、私ましゅまろ持ってないよ」

「それがあるじゃないですか」

 スライムさんは私が持っているましゅまろを見た。


「これでいいの?」

「はい!」

「どうぞ」

「ありがとうございます!」


 スライムさんは、ましゅまろをおいしそうにほおばった。

 と思ったら、動きが止まった。

 目を見開いている。


「どうしたの?」

「う、うう」

「あ、おいしすぎて動けない、とか言うんでしょう」

「たべすぎて、うごけません……」


 スライムさんのぷるぷるの体が、ましゅまろのふわふわに支配されてしまったようだった。


 私は外に行って、バケツに水をくんできた。

 その水をかけてあげるとスライムさんの体積が増えて、動けるようになった。


「これで安心だね」

「はい! もっとたべられます!」

「やめなさい!」

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