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63 スライムさんとメリーさん

「えいむさん、ぼくのうしろ、だれかいますか!」


 よろず屋に入るなり、スライムさんがカウンターの上から大きな声で言った。


「どうしたのスライムさん」

「いますか!」

「いないけど」

「よかった……」


 スライムさんは、体から力を抜いて、くにゃり、となった。


「どうしたの?」

「めりーさん、ってしってますか?」

「だれ?」

「めりーさんです。だんだんちかづいてくる、おばけです」

「だんだん近づいてくるオバケ?」

 だんだんよりも、一気に近づいてくるオバケのほうがこわそうだけど。


「ぼくはそのはなしをきいてから、じぶんのうしろが、きになって、きになって……」

「どういうオバケなの?」

「それは……。こほん。まず、めりーさんから、れんらくがきます」

「ふむふむ」

「すると、めりーさんは、いまどこにいるのか、おしえてくれます。さいしょは、とおかったのに、れんらくがくるたび、ちかづいてきます。そしてさいごには、あなたのうしろにいるよ、というんです!」

 スライムさんは震えあがっていた。


「ふうん」

 スライムさんは、ふしぎそうに私を見た。

「えいむさん、こわくないんですか?」

「ちょっと、よくわからなくて」

「なにがですか?」

「連絡って、どういう連絡? メリーさんから手紙がくるの?」


 そのあたりがよくわからなかった。

「毎日手紙が来て、だんだん近づいてくるってことなの?」

「そういわれると……」

 スライムさんもよくわからないようだった。


「じゃあ、そうです!」

「メリーさんから、毎日、今日はあの山にいるよ、とか、今日はよろず屋の前にいるよ、とか手紙がくるってこと?」

「きっとそうです!」

「そういうオバケなの?」

「そうです!」

「ていねいなオバケだね」


 私が言ったら、スライムさんは、ぴょんぴょんはねた。

 楽しそうではなく、もどかしそうだった。


「そうじゃないんです! さいごには、あなたのうしろにいるよ! ってくるんです! こわいですよ!」

「知らない人に毎日手紙をもらうって、たしかにこわいよね」

「そういうこわさじゃないんです! おばけがうしろにいるんですよ!」

「うーん。でも、手紙を出してくるってことは、私の家を知ってるんだろうし、オバケだったら家の中にも入ってこられるだろうし……。うしろにいるかもしれないよね。いまだって、ほら! スライムさんのうしろに!」

「ひいっ!」


 スライムさんはカウンターからとびあがって、そのまま落ちて、ぽよんぽよんとはずんで、お店のなかを転がっていた。


「だ、だいじょうぶ? スライムさん、そんなにおどろくとは思わなくて。ごめんね」

「へいきです!」

 スライムさんは、シャキン! と止まった。


「あ、えいむさん! うしろにめりーさんがいますよ!」

「え?」

 うしろを見ると、誰もいなかった。


「いないよ」

「うそです! もう! えいむさんは、どうしてそんなに、こわがらないんですか!」

「手紙であいさつをしてから来るんでしょう? 話が通じそうだな、と思って」


 私の印象では、オバケというのは、勝手にやってきて、ひどいことをしたり、おどろかしたりする、というものだった。

 だから、ちゃんと連絡をくれるなんて、オバケの中ではいいオバケ、という気がした。


 スライムさんに話していると、スライムさんも、だんだん落ち着いてきたみたいだった。


「たしかに、はなしがわかりそうですね」

「だから、来てほしくなかったら、来ないで、って張り紙しておいたら、来ないでくれそうじゃない?」

「そうですね! じゃあ、ぼくもそうします!」

「連絡来たの?」

「まだです! ぼくは、よういしゅうとうな、すらいむですから! じぜんじゅんびも、ばっちりです!」

「ならだいじょうぶだね」

「なんだか、えいむさんとはなしていたら、どうでもよくなってきました!」

「よかった」

「じゃあ、きょうはもう、おみせはおわりです」

「え?」

「ずっと、こわがりすぎて、くたくたなので!」

「あ、えっと、薬草ひとつ……」

「おしまいです!」


 そう言うと、にこにこしながら、スライムさんはお店を閉めてしまった。

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