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61 スライムさんと小さくても同じ値段

「スライムさん、ここにある薬草、なんだか小さくない?」


 カウンターにならんでいる薬草は、いつもよりも小ぶりに見えた。

 気のせいだろうか。

 でも、7ゴールド、という値札の大きさと比べると、やっぱり小さい。


「そうですね、ちいさいですね」

「どうして小さいの?」

「さむいからですね」

「そっか。雪の下でも薬草って生えるの?」

「はい! いつでも!」

「へえー」


 私は納得したけれども、あたらしい疑問がうかんだ。


「それなのに同じ値段なの?」

 スライムさんは不思議そうに私を見た。


「薬草は、いつもの大きさが7ゴールドで、小さくなっても7ゴールドだと、なんだか、変かな、と思って」

「へんですか?」

「だって、いつもよりすくないわけでしょ? それなのに同じ値段だから」

「!! なるほど! じゃあ、ただにします!」

「それはだめ!」

「どうしてですか!」

「お店だから! お仕事だから!」

「むむむ……!」


 スライムさんはぷくーっ、とふくらんで、まだ不満そうだった。

「まあ、小さい薬草しかできないっていうことは、同じ値段でもしょうがないよね」

「それはいけませんよ!」

 スライムさんがぴょん、とはねた。


「おおきさがちがうのに、おなじはよくない! とえいむさんがいったんじゃないですか!」

 スライムさんは、びしっ、と言った。


「あ、でも、そんなに変わらないし……」

「いえ! ぼくは、きょうから、ねだんをやすくします! ただです!」

「それは安いって言わないから!」

「これはえいむさんのせきにんですよ!」

「私の!?」

「しってますか! こういうのは、りーだーしっぷ、っていうんです!」

「……? えっと……? ……もしかして、言い出しっぺ?」

「それです!」

 合ってた。


 スライムさんは薬草をカウンターの中から取り出して、カウンターの上に持ってきた。


「これはもうだめです。7ごーるどのしかくがありません。だめなやくそうです」

「だめではないよ」

「もう、このやくそうは、やくそ、くらいです」

「やくそ?」

 う、がなくなった、と言いたいみたいだ。


「ねだんがおなじなのに、うりものがいつのまにかちいさくなっている。これはさぎです!」

「そこまでは言ってないよ!」

「きょうから、6・5ごーるどです!」

「なにそれ」

「ちょっとちいさいので、ちょっと、やすくします!」

 考え方はわかるけど。


「お金はどうするの?」

「0・5ごーるどの、おつりです」

「0・5ゴールドって?」

「……おかねをはんぶんに、きります!」

「切っちゃダメだよ!」

「どうしてですか?」

「お金を半分にしても、半額としては使えないよ!」

「じゃあどうやって0・5ごーるどにすればいいんですか!」

 スライムさんは、ぴょんぴょんぴょんぴょんはねた。


「だから、それはもうやめて、いつもどおり……」

「ぼくに、さぎしになれっていうんですか! 6・5ごーるどのものを、7ごーるどでうって、たがくのもうけをだして、ぼうりをむさぼり、まちのひとたちを、びんぼうにしろっていうんですか!」

「ぼうり?」

「ぼくはもう、よろずやをする、しかくがありません!」

「ちょっとちょっと!」

「もうやめます!」

「ちょっと待ってよ!」

「このままやくそうをうっていたら、ぼくは、ぼくは、うらしゃかいのていおうです!」


 スライムさんはカウンターの上でブルブル震えていた。


「スライムさん、だいじょうぶだよ、薬草の値上げでみんなが貧乏になったりしないから」

「なります! ならないなら、します!」

「しないで!」


 このよろず屋にあるものすべてを投入したら、そういうこともできてしまいそうだ。

 いったいどうしたら……。

 ……そうだ。


「スライムさん」

「えいむさんのことばは、もう、ぼくにはとどきません……」

「薬草って、あったかい季節で、大きく育つときもあるよね?」

「……」

 返事がない。


「あるよね?」

「……とくべつにこたえます。あります」

 スライムさんは特別に答えてくれた。


「大きい薬草を、7ゴールドで売ってたこともあったよね?」

「……あります」

「でもそのときは、スライムさんは、高くして売らなかったよね?」

「はい」

「ということは、そのぶん、スライムさんは損をしてたよね?」

「……?」

 スライムさんは首をかしげるようにした。


「大きいときにも同じ値段で売ってたんだから、小さいときに同じ値段で売ってもいいと思うんだけど」


 小さいときに得をしているのだとしたら、大きいときには損をしていた。

 だったら、ちょうどいいんじゃないだろうか。


「それに、お客さんはちゃんと見て買ってたんだから、スライムさんがだまして売ってたわけでもないでしょ? なにも悪くないよ」

「……ぼくは、ぼうりをむさぼってませんか?」

「ないない」

「それなら、ぼくは、いままでどおりでいいんですか……?」

「いいよ!」

「はい!」

 スライムさんは元気にぴょん、とはねた。

 これで安心だ。


「おっと」

 力が抜けたら、ちょっと近くにあったものにさわってしまった。

 いけないいけない。

 あれ?


「この、はがねの剣って、ちょっと大きさがちがうのに、同じ値段なんだね……。あ」

「え?」


 スライムさんはぴょんぴょんはねるのをやめて、こっちを見た。

 しまった。

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