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59 スライムさんと豆まき

 今日はよく晴れていた。


 最近は雪の日もへってきて、太陽があたるところはほとんど土や草木がしっかりと見えていた。

 ふつうの靴で歩くのが、なんだかうれしい。


「こんにちは」

 よろず屋に入ると、スライムさんがいない。


「いらっしゃいませ!」

「うわっ」


 ものかげから、スライムさんが笑いながら私を見ていた。


「スライムさん、おどかしたな」

「ふっふっふ、しりませんでしたか? ぼくは、おどかすたいぷの、すらいむですよ!」

「なにそれ、もう!」


 スライムさんは、ぴょん、とカウンターの上に逃げた。

「それで、どんなごようですか!」

「ええと、今日は、薬草を」


 私はカウンターの中の薬草を見た。

 その横。


「なにこれ」

「まめです」

「そうだよね」


 お皿に積まれた豆があった。

 おうどいろで、うすい皮がやぶれて中が見えているものもあった。


「料理に使う豆?」

「このままでも、たべられます! もう、ねつがくわえられていますので、ぽりぽりと! たべてください」


「どんな効果がある豆なの?」

「おいしいです!」

「えっと、そうじゃなくて、動きが速くなったりはしないの?」

「えいむさん? まめをたべて、そんなことがあるわけないじゃないですか!」

 スライムさんが笑う。


 でも、このお店にあるものは、そんなのばっかりだと思うんだけど。


「ですが、たべるだけじゃないんです! たいせつなこうかがあります」

「どんな?」

「まものを、おいはらうこうかがあります!」


 スライムさんはぴょん、とその場でとんだ。


「まめをまくと、まものをおいはらう、という、いいつたえがあるそうです」

「知らなかった」

「まめをまきながら、あることをいうと、まものがこなくなります」

「なんていうの?」

「それは、みんなのじゆうです!」

「自由なの?」

「そうです。じゆうにいいながら、まめをまきます」

「へえ」

「やってみますか?」

「いいの?」

「はい!」


 私は、小皿にのった豆をわたされた。

 スライムさんは、頭をちょっとだけへこませて、上に豆をのせている。


「どこにまくの?」

「どこでもいいんです」

「自由な風習だね」

「そうです!」

「えっと、じゃあ……」


 私は豆をつまんだ。

 そこで考える。


「スライムさん、これ、食べられるんだよね?」

「そうですよ」

「でも、そのへんにまいちゃったら、食べられないよね?」

「そうですねえ……。えいせいてきな、かんてんでは、そうですね」

「別の観点では?」

「すごくおなかがすいたら、こまかいことは、いっていられません!」

「なるほど」


 私たちは、大きなお盆を用意した。

 その上に、とびはねないよう、そうっ、と豆をまく。


「まものー、くるなー」

 スライムさんが言う。

「まものー、くるなー」

 私もまねして言う。


「えいむさん。これは、じゆうなふうしゅうです。まねは、いけません」

「はい、すみません。スライム先生」

「よろしい」


「まものー、くるなー」

「えっと、じゃあ……。へいわー、こいー」

「お、いいですね、えいむさん!」

「そう?」

「いいです! まもの、くるな、というだけでなく、へいわ、こい、というはっそうが、すばらしいです!」

「ありがとうございます、スライム先生」

「よろしい」


「まものー、くるなー」


「へいわー、こいー」


「まものー、くるなー」


「へいわー、こいー」


 私はふと思った。

「スライムさん」

「なんですか?」

「魔物が来るなって言ってるけど、スライムさんはだいじょうぶなの?」

「……そうですねえ、ぼくも、まものの、はしくれですね」



 スライムさんは、しばらく考えて、言った。

「だいじょうぶです!」

「そっか!」

 そんな気がしたよ!

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