58 スライムさんとかまくら
「えいむさん、いえ、ほしくないですか?」
私はよろず屋の椅子に座って、冬でもよく育つという薬草を見ていた。
だから聞きちがいかと思った。
「いま、家って言った?」
「はい」
「家はあるよ」
「えいむさん、せんようのいえですよ」
「私の?」
「はい!」
「そんなのむりだよ。あ、スライムさん、また高価なものを使おうとしてるんでしょ」
「ふっふっふ。えいむさんが、こうかなものをすきじゃないことは、ぼくはしってますよ」
そのわりには、何度も高価なものをタダでくれようとするけれども。
「だったらどうするの?」
「こうするんです」
「スライムさん、寒いよ」
私たちは外に出た。
人が通っていないところはたくさん雪が積もっている。
「ゆきがありますね?」
「うん」
「ゆきのいえを、つくりましょう」
「雪の家?」
「そうです! れいの、なんとか、というやつです」
「なんとか?」
「なまえなんて、かざりですよ! なまえこそがだいじです!」
「どっち!」
私は、スライムさんに、しっかりした上着と手ぶくろを借りた。
「つめたいですか?」
「ううん、平気」
雪玉をつくってみても、全然冷たくない。
「これを使ったら、雪合戦に負けないかも」
「えいむさん? まだやるきですか!」
スライムさんはぷるぷる震えた。
「それで、雪の家って、どうやってつくるの?」
「ゆきを、つみます!」
「やってみよう!」
私は、スライムさんに借りたスコップで雪を掘り始めた。
「……スライムさん。はあ、はあ」
私はスコップを雪にさした。
「大変じゃない?」
「そう、ですね」
スライムさんも、ぜいぜいしている感じだった。
でもなんとか、私の身長のちょっと下、くらいまでの高さの、雪の山ができた。
「これを、掘ればいいんだよね?」
「はい!」
私はスコップで、入り口をつくっていく。
「あ」
と思ったら、上から雪がくずれてきて、いまできた入り口が消えてしまった。
残ったのは、変な形の小さな雪山だ。
「くずれちゃった」
「うまくいきませんでしたねえ」
「どうすればいいのかな」
「しっかりかためたら、どうですか?」
「うーん。穴を掘るのが大変だよ?」
「そうですねえ」
「雪をしっかりかためて、それを積み上げていくのがいいのかな」
「それは、れんがをつみあげるような、ことですか?」
「うん」
「たいへんそうですよ」
「大変そうだね」
「うーん」
「うーん」
私はくずれてしまった雪山を見た。
中をつくろうとすると、くずれてしまう。
しっかりしようとすると、掘れない。
うーん。
「最初から、中が空洞になってればいいんだけどね」
「それですよえいむさん!」
「え?」
というわけで、スライムさんが用意した箱を、雪の上に置いた。
私の胸までくらいの高さだ。
そこに雪をのせていく。
「よいしょ、よいしょ」
「よいしょ、よいしょ」
スライムさんも、口に入れた雪を飛ばして手伝ってくれる。
中が空洞なので、さっきよりかんたんにできあがった。
それを上から、横からぐいぐい押して、しっかりかためる。
そして雪をたして、ぐいぐいやって。
最後に箱を抜く。
抜く。
抜く……?
「抜けないね」
「そうですね」
しっかりかためてしまったので箱が抜けない。
「こわれやすいはこにしますか?」
「壊れやすい箱?」
というわけで、スライムさんが用意した、薄い板の箱でつくってみた。
「よいしょ、よいしょ」
雪をしっかりかためたら、箱を、中から、クギのようなものを抜いていく。
すると、箱がバラバラに壊れた。
「できました!」
「できたね!」
さっきまで箱だった板を中から出して、完成!
「さっそくはいってみましょうよ!」
スライムさんが、ぴょんぴょん、と中に入っていく。
「どう?」
「かぜがきません!」
「私も入っていい?」
「どうぞどうぞ」
と思ったけど、なかなかせまい。
しっかりした上着を脱いで、それでもせまい。
体をちぢこまらせて、なんとか入れた。
「あ、本当だ」
下はやっぱり雪だから冷たい。
でも、風は来ない。
室内、という感じがした。
「すごい!」
と私はつい興奮して、立ち上がろうとしてしまった。
「わ!」
「わわわ!」
思いっきりぶつかった雪がくずれてきて、私たちは埋まってしまった。
「わわわ!」
「ははは!」




