56 スライムさんの雪だるま捜索
雪はまだたくさん町に残っていた。
そんな日は、空気がぱりっと冷たい。
私は、寒いのはそんなに好きではないけれども、この特別な空気は好きだった。
通り道に、私の身長くらいの雪だるまがあった。
頭の部分に、枝をはめて顔をつくってあった。
笑っているように見えて、私も笑ってしまった。
スライムさんと雪だるまをつくろうかな。
よろず屋が近づいてきたころ、そんなふうに思った。
「んん?」
雪だるまがあった。
いっぱい。
よろず屋の建物の近くに、小さい雪だるまがたくさんならんでいる。
近くで見てみる。
私のひざの高さくらいの雪だるまばっかりだ。
「これは……」
雪の上に、木の板が落ちていた。
そこには、ちょっとぐねぐねした字で、ぼくはどれでしょう、と書いてあった。
僕はどれでしょう……?
書いたのはスライムさんだろう。
ということは、まさか?
「スライムさんが、いる……?」
そういうつもりになると、雪だるまはみんな、スライムさんくらいの大きさに見えてきた。
雪だるまのふりをして、探させようとしてるの?
また、カチカチに凍ってしまったんじゃないだろうか。
私は雪だるまを見わたした。
全部で二十……、三十個以上ある。
どうやってたしかめたらいいんだろう。
とりあえず、一番近くにあった雪だるまをさわってみた。
「スライムさん?」
返事はない。
でもカチカチだ。
スライムさんが雪だるまになったなら、きっと雪とちがって、氷のような感触になるはずだ。
ということは。
割ってしまわないよう、私は、ぐいぐいと指で押してみる。
全然指が入らない。
氷のようだ。
いきなりあたりかな。
そう思って念のため、下の段になっている雪玉も押してみる。
指が入らない。
となりの雪だるまもそう。
どの雪だるまも、表面は白っぽいけれども、氷のようにかたい。
ずいぶん力を入れてつくったらしい。
どうすればいいんだろう。
お湯をかけて溶かしてみるわけにもいかないし。
春になるまで待つ……?
「うーん……」
さすがにそれは長すぎる。
いやいや、ちゃんと考えよう。
あれ。
雪だるまは、ずらりとならんでいる。
でも、その端のほうに、へこみがある。
一番端にある雪だるまの横。
雪だるま一個分くらいのへこみ。
そこから、なにか引きずったようなあとがよろず屋に続いている。
そうだ、引きずったようなあとは、実は、このあたり、いくらでもあった。
スライムさんが通ったところだ。
これはスライムさんのあしあとだ。
私はスライムさんのあしあとを、慎重に、顔を近づけてよく見た。
あしあとには、深さにちょっとした差があった。
雪だるまを用意していたときに、雪が降っていたのかもしれない。
それぞれを見ていくと、完全に言いきれるわけではないけれども。
よろず屋から近づいてくるあしあとが一番浅く、よろず屋に向かっていくあしあとが一番深い気がする。
一番深いあしあとが、一番新しい、という予想にしたがうなら。
スライムさんはよろず屋にいる。
私はよろず屋に入っていった。
「あ、いらっしゃいませ!」
スライムさんがいた。
ポットのようなもののをじっと見ている。
「スライムさん? なにしてるの」
「はい、あたたかい、おちゃをよういしてました!」
「おちゃ?」
「はい。えいむさんにもんだいをだしたので、あたたかいものを! いま、えいむさんはさむいところで、ぼくをみつけるため、がんばっているはずなので! ……おや?」
スライムさんはこっちを見た。
「えいむさん?」
「おはよう」
「なぜここに!」
「なぜって……」
「ぼくをさがすように、かいておいたじゃないですか!」
スライムさんは興奮してぴょんぴょんはねた。
「だって、スライムさん、いなかったから」
「そんなことないですよ! しょうこ、あるんですか!」
「証拠っていうか、スライムさんのあしあと、みたいなのをたどってきたら、ここについたの。よろず屋にいるんじゃないかと思って」
「そうです、ぼくは、えいむさんにおちゃを」
「だから、外にはいないよね?」
私が言うと、スライムさんは、何度か目をぱちぱちさせていたけど、急に大きくとびあがった。
「そ、そうか……、ぼくがおちゃのよういをしているあいだ、そとにぼくはいない……! うっかりしてました……!」
「すごいうっかりをしたみたいだね?」
「もうてんでした」
スライムさんは反省しているみたいだった。
「でもありがとう、すっかり冷えちゃった。お茶、もらってもいい?」
「はいどうぞ!」
スライムさんがさっそくいれてくれたお茶は、果物のかおりのする、オレンジ色のきれいなお茶だった。
「わ、スライムさん!」
「おや?」
スライムさんも飲んだら、オレンジと、スライムさんの元々の青色が混ざって、きれいな紫色になった。




