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53 スライムさんと白いひげのおじいさん

 よろず屋に行く途中、お店の外になにか置いてあるのが見えた。

 近くで見ると、それはソリだった。


 大きなソリで、大人がならんで座れるくらいの座席があった。

 そしてそのソリには、馬車を先導する馬のように、馬よりも小さな動物がつながれていた。

 頭には変わった角がある。

 まっすぐではなくて、枝がのびるように複雑な形だった。


 新しく入荷したのだろうか。


「こんにちはー!」

 私は、寒さを吹き飛ばすように大きい声であいさつして入ってみた。

 すると、カウンターの前にいた、知らないおじいさんが振り返って私を見た。

 白くて長い、ふわふわと大きなひげを生やしている人だった。


「あ、ごめんなさい」

 私が言うと、おじいさんはにっこり笑う。

「ほっほっほ。こどもは元気が一番。ほっほっほ」

 おだやかな人みたいだ。


 カウンターのまわりを見ると、スライムさんの姿がない。

「スライムさんに会いに来たのかい?」

 おじいさんは言った。

「あ、はい」

「ごめんね。おじいさんが終わってからでいいかい?」

「はい、もちろんです」

 私が言うと、おじいさんはまたにっこり笑った。


 見覚えがない人だけれども、どこか別の町から買い物に来たのだろうか。


「ありましたよー! ありましたありましたー!」

 お店の奥の方から声がした。


 私の頭くらいの大きさの白い球体にしがみついたスライムさんが、ごろごろと転がってきておじいさんにぶつかった。

 さいわい、おじいさんはすばやくスライムさんを受け止めていたのでケガの心配はなさそうだけれども。

 スライムさんは、白い球体から、よっこいしょ、と離れた。


「スライムさん、そんなことしてたら危ないよ!」

「あれ? えいむさん? じごくのおにぎり、のちゅうもんを、うけたんでしたっけ?」

「いま来たところだよ!」

 地獄のおにぎりってなに!


「スライムさん、ちゃんとまわりを見ないと」

「いそいでいたので、たしょうのひがいは、やむをえないかと」

「だめでしょ」

 スライムさんに慣れていないおじいさんが、けがをしてしまうかもしれない。


「それはともかく、ごよういしましたよ!」

 スライムさんは、しがみついていた球体をぽんぽん、とやった。


「まふゆのおにぎりです!」

 真冬?

「おお。では、これで」

 おじいさんは、袋をカウンターに置いた。

 チャリ、と中に入っている金属がこすれる音がした。


「だいきん、ちょうどいただきました!」

「まだ見てないでしょ!」

 まだおじいさんがいるのに私はつい、大きな声で、スライムさんのいいかげんな返事を指摘してしまった。


「えいむさんは、きびしいですねえ……」

 スライムさんは、しぶしぶ、カウンターの上に乗って代金を確認していた。

 私たちを見ているおじいさんが笑っていて、ちょっと恥ずかしい。

「では、たしかに」

 スライムさんが言うと、おじいさんは、どこからか出した大きな白い袋に、球体を入れた。


「がんばってくださいね!」

「はいはい。では、また」

 おじいさんは私ににっこり笑うと、お店を出ていった。


「スライムさん、あのおじいさんが買っていったものってなに?」

「まふゆのおにぎりですか?」

「そう」

「あれは、こなぱいのえさです」

「こなぱい?」

「そりをひくんです」

「外の? え、あれに乗って帰るの?」

「そうですよ! あれで、いろんなひとに、いろんなものをあげるしごとを、はじめるそうです」

「なにそれ?」

「おかねもちだそうで、こどもに、おくりものをするそうです」

「ふうん?」

 どういう仕事だろう。


「でも、ソリでしょ? あんまり運べないんじゃない?」

「だいじょうぶです! ぽなぱいは、ちからもちですから!」

「でもソリだから、下が削れちゃうし。あ、雪の日だけ使うってこと?」

「ちがいますよ! もう! じゃあ、みてみたらわかりますよ! まだいるとおもいますから!」


 私は、スライムさんに押されてお店の外に出た。

 さっきまで外にいたのに、あらためて外に出ると空気の冷たさに顔が緊張する。


「え!?」


 ソリが浮かんでいた。


 ちょうど走り出すところで、ぽなぱいに引かれて、おじいさんの乗ったソリが空を走っていた。

 ちょっと離れたところでおじいさんが私たちに気づいて手を振る。

 私も手を振った。

「ぼくも!」

 と言うので、私はスライムさんを頭の上に掲げて、見せてあげた。


「あれなら、おじいさんでもたくさん配れそうだね」

「あのひとは、ぽなぱいを、そだてるかかりのひとですよ!」

「そうなんだ」

 でも私はなんとなく、あの人が贈り物を配ったほうが似合うような気がした。


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