52 スライムさんと雪作り機
「ゆきだるまを、つくります!」
スライムさんは言った。
「へ?」
私は思わずよろず屋の外を見てしまった。
空気は冷たいけれども、ここ数日、雲がほとんどない晴れの日が続いている。
「雪、降ってないよ?」
「ふっふっふ、えいむさん。ぼくを、だれだとおもってるんですか?」
「スライムさん」
「ちがいますね。すごい、すらいむですよ!」
スライムさんは、カウンターの上にあった箱を、ぽんぽん、とやった。
「えいむさん。ゆきだるまというのは、なにでできていますか?」
「雪」
「では、ゆきは、なにでできてますか?」
「えっと、水、かな」
「そうです! つまり!」
「つまり?」
「こおらせればいいんです!」
スライムさんはまた、カウンターの上にある箱を、ぽんぽん、とやった。
「その箱はなんなの?」
「こおりのませきが、はいっています!」
スライムさんはにっこり笑った。
「え? それはまた、大変なことに……」
私はスライムさんが氷づけになってしまった一件を思い出していた。
「だいじょうぶです。こんどはあんぜんです」
そう言ってスライムさんが用意したのは、バケツに入った水だった。
魔石を、金属のお皿に置き、それをひもでつるして水につけ、すぐ引き上げる。
スライムさんがやると大変なことになりそうだったので、私がやってあげた。
魔石はちゃんと、凍る前に引き上げられた。
「これでできあがりです!」
「これで?」
まだふつうの氷に見える。
「これを、けずります」
「削る?」
「そうです。ゆきをつくるのはむずかしい。ですがぼくのみたてでは、こおりをきちんとけずればゆきになる」
「みたて、ってなに?」
「えいむさん、よろしく!」
私はバケツから出した氷を、スライムさんが用意した謎の装置に入れた。
「ゆきつくりきです!」
「雪作り機?」
氷を置く場所は、上から押しつけるようになっていて、横についている取っ手を動かすと、氷もぐるぐる回るようになっている。
氷の下側になっている部分には刃がついていて、削れるようになっているみたいだ。
回してみると、シャリシャリ音を立てながら氷のかたまりが回る。
氷の下の穴から、削れた氷が出てくる。
置いておいた器に、削れた氷が山盛りになっていった。
「どんどん削れてるよスライムさん!」
「そうですね!」
「でも、雪っていうより、削れた氷だね」
「そうですね……」
器にたっぷりとたまった氷。
手にとって固めてみると、いちおう、雪だるまっぽいものができあがるけれども。
「なんかちがうよね」
「そうですねえ。ちょっと、かたいですね」
雪だるまというより、氷だるまという感じだった。
「でもこれはこれで、きれいだね」
雪より、すこし透き通ったところがあるので、きらきら光って見えた。
「うまくいきましたね! ゆきつくりきのおかげです!」
「雪作り機って、雪を作るものなんだよね」
「そうですよ」
「なにに使うの?」
私には、雪だるまをつくるくらいしか思いつかなかった。
「それは、ゆきをつくるんですよ! そりとか、あそびますよね!」
「ソリ?」
私は、小高い丘に雪が積もってできた道を思い浮かべた。
ソリで一気に滑り降りるととても気持ちがいい。
「でも、これでそんなにたくさん作るのは大変じゃない?」
「たいへんでも、やる。それがしごとです……」
「それが仕事なんだ……」
「そうです……」
スライムさんはうつむいた。
ずらりとこれをならべ、たくさんの人たちがぐるぐると回し、大量の雪を作る。
大変だ……。
私はできあがった氷をさわってみた。
とても細かくて、すぐ溶けてしまう。
なんだか食べたらおいしそう……。
と思ったけれども、味がないだろう。
やめておこう。
「こんな形かな?」
「いいですね!」
それから私は、スライムさんといろいろな雪だるまをつくって遊んだ。




