49 スライムさんとしりとり
今日のスライムさんは、私がお店に入ったときにはもう、いそがしそうに品物とあちらこちらへと運んでいた。
「こんにちは」
「えいむさん、いらっしゃいませ!」
あいさつのとき一回立ち止まったけれども、またスライムさんはせかせかと動いている。
「いそがしそうだね」
「ぼくもたまには、これくらいのしごとをしますよ! だれがたまにはですか!」
「私、なにも言ってないよ!」
絶好調みたいだ。
「私も手伝う?」
「えいむさんがさわると、あぶないものもあるので、やめたほうがいいですよ!」
「スライムさんは平気なの?」
「ぼくは、すごいので!」
大ざっぱな話だと思うけど、実際、スライムさんはすごいところもあるので、なんともいえない。
「そっか。じゃあ、帰ろうかな」
「帰らなくても!」
「でも、じゃまでしょ?」
「そんなことはありません! どうかごゆっくり!」
「そう?」
「どうぞ!」
と、スライムさんが引きずってきた小さな椅子に私は座った。
でも、せかせか動いているスライムさんを見ていると、なんだか居心地の悪さを感じる。
そんな私に気づいたように、スライムさんが言った。
「そうだ、おひまなら、しりとりでも、しましょうか! ぼくも、かたづけながらでも、できますし!」
「しりとり……?」
「ことばの、おしりをとるあそびです」
「言葉のお尻……?」
私は、命が吹き込まれた文字が動き出して、自分のお尻を取り外している様子を想像した。
「じゅんばんに、ことばを、いいあいます! すらいむ、だったら、つぎのひとは、む、からはじまる、ことばをいいます!」
「ふうん……?」
「だから、よろずやだったら、や、からはじまることばです!」
「屋根、とか?」
「そうです! そしたらぼくは、ねずみ、ですね!」
「なるほど、そういうことね。おもしろそうかも」
新感覚の遊びだった。
「やりましょう! さいしょは、しりとりの、り、からです」
「り? 私から?」
「はい」
「えーっと……。りんご」
「じゃあぼくは、ごりら、です」
「ごりらって、なに?」
「そういういきものが、いるんです! きょだいかした、にんげんみたいないきものです!」
「そう。じゃあ……、ラッパ」
「ぱ、ですね? それなら、ぱんだ、です!」
「ぱんだ?」
「ぱんだっていういきものが、いるんです! しろとくろの、くまです!」
「白黒のクマ?」
私は、白と黒でシマ模様になっているクマを思い浮かべた。
「なんか、ぶきみだね」
「かわいいですよ!」
「かわいいの?」
まあ、かわいいというのは、人それぞれだから……。
「じゃあ私は、だ……? だ、ってなんだろう。だ、だ、だ……。台ふきん、とか」
「あ、いけませんよえいむさん!」
「え?」
「さいごが、ん、だとまけなんです!」
「どうして? あ、そうか」
ん、から始まる言葉がないんだ、きっと。
「じゃあ、えーと私の負け?」
「それなら、だ、から、あたらしくはじめますか?」
「じゃあそうする」
「だ、ですね? だちょう、です!」
「だちょう?」
「とりのなまえです! とべないんですけどね!」
「えっと、スライムさん。飛べない鳥ってなに?」
「すごくあしがはやいんですけど、とべないんです」
「それは鳥なの?」
「はい! せなかにのったら、おちてしまいましたけど」
「乗れるの?」
「えいむさんでも、のれるとおもいますよ!」
「ふうん……。ねえスライムさん」
「なんですか?」
「しりとりより、動物の話が聞きたい。いい?」
「いいですよ!」
私は片付けをしているスライムさんを見ながら、スライムさんが知っているいろいろな動物の話を聞いた。
「いろんな動物がいるんだね」
「そうなんです!」
「でも、本当は、キリンていうのはいないんだよね?」
「いますよ! くびが、からだよりもずっとながいんです!」
「そっかー」
「しんじてませんね!」
「信じてるー」
「えいむさん!」




