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45 スライムさんとドッキリ

 よろず屋に入ったとたん、頭の上になにか落ちてきた。

 それは、ぽふ、と頭にのって、床に落ちた。


 手にとってみると、板の片面に、分厚い布がはりつけてある。

 板よりも布のほうが厚いくらいだ。


「ふっふっふ。ひっかかりましたね、えいむさん!」

 カウンターの上に現れたスライムさんが言った。

「スライムさん、なにこれ」

「これは、こくばんけし、といわれるものに、ひじょうにちかいものです」

「黒板? を消すもの? に近いもの?」

 黒板もわからないのに、それを消すもので、さらに近いものと言われても。


「こくばんけし、しりませんか?」

「知らない」

「それは、いりぐちにしかける、わなのことです」

「ワナなの?」

「はい。いえのなかに、こっそりはいってくるひとに、きづかれないようにしかけて、げきたい、するものです」

「ワナのわりには、痛くもなんともなかったよ」


 ぽふ、だった。


「そのぬの、のぶぶんには、いろいろな、こなを、しかけられるのです!」

「粉」

「しびれぐすりのこな、ねむりぐすりのこな。もしかしたら、どくやくのこな、もつかわれていたかもしれませんね!」

「おそろしい」

「ぼくもそうおもいます。とおい、やばんなことをかんがえるくにでは、こういうどうぐも、あるのです……。ですが、こっそり、たにんのいえにはいるひとも、いけないのですが……」

 スライムさんは、深くうなずくような動きをした。


「ぼくは、えいむさんをころしたくはないので、なにもつけずに、ちょっとどっきりさせるだけに、にしてみました! どっきりしましたか!」

「うん」

「やりました! どっきり、だいせいこう!」

 スライムさんはぴょんぴょんはねた。


「それはいいんだけど、どうして侵入者を追い払うのに、黒板消し、って言うの?」

「わかりません」

「わからないの?」

「えいむさん……。もののなまえというのは、あんがい、りゆうなんて、ないものなのです……」

 スライムさんは遠くを見ながら言った。


 私はカウンターの中の薬草を見た。

「薬の草だから、薬草……。わかりやすい……」

「えいむさん! いみがあるものだって、ありますよ! わかりやすいものだって、それは、ありますよ!」

 私はカウンターの中の毒消し草を見た。

「毒を消す草だから、毒消し草……」

「えいむさん! いますぐ、くさから、はなれてください!」


 私は三歩進んだ。

「鋼でできている剣だから、鋼の剣……」

「えいむさん! ぶきは、ぶきはあぶないです!」

「革でできているから、革の鎧……」

「えいむさん!」

「羽根の飾りだから、羽飾り……。わかりやすい……」

「……えいむさん? もしかして、おこってますか?」


 私はゆっくり振り返って、スライムさんを見た。

「どうしてそう思うの?」

「ぼくが、こくばんけしをぶつけてしまって……。いたかったですか?」

「別にー」

「えいむさん、なんだかいつもとちがいますよ! おこってますよね?」

「べっつにー」

「えいむさん! ゆるしてください!」


 私は、スライムさんに、にやりと笑った。

「どっきりした?」

「え?」

「おこったふり。どっきりの、おかえしー」

 えへへ、と笑ったら、スライムさんがはっとしたようになって、それから私をにらんだ。


「……え、えいむさん! どっきりさせるなんて、いけませんよ!」

「スライムさんが先にやったよ」

「ぼ、ぼくはいいんです!」

「なにそれずるい」

「……どっきりしましたか?」

「え?」

「ぼくだけはいい、ってきいて、どっきりしましたよね!」

 スライムさんは、どうだ、という顔をした。


「どっきりはしないけど」

「なんでですか! ぼくだけどっきりして、ずるいです!」

「あ、あれ? 黒板消しをぶつけられたところが、たんこぶになっちゃったかもしれないなー」

「え……? ご、ごめんなさい!」

「どっきりした?」

「……!! えいむさん! またどっきりさせましたね!」

「これでおあいこでしょ」

「ぼくのほうが、おおくどっきりしてます! えいむさん! ずるいですよ!」


 スライムさんはカウンターからおりて、私のまわりをぴょんぴょんとびはねた。

「どうですか! どっきりしましたか! どうですか!」

「ははは、ははは、どっきりしたー」

「ほんとですか? うそじゃないですか?」

「どっちかなー」

「えいむさん!」

「はははー」

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