424 スライムさんとダム
よろず屋の屋根から流れ落ちた水が地面で水たまりをつくっていた。
それは、私が一歩でこえられないくらいの直径になっていて、昨日の雨の多さをこんなところでも感じることができた。
私はそれをスライムさんとならんで見ていた。
「これはどうしたの?」
私は言った。いつもだったらこんなところに水たまりなどできていない。
「たくさん、あめがふったせいか、ちょっとじめんが、へこんだみたいです」
「なるほど」
それで水が残ってるのか。
私はしゃがんで水面の奥を見る。しかし、水の中は浅く見えてしまうからよくわからない。
近くに落ちていた細い枝をさしてみる。
すーっ、と入っていて、泥のような手応えで止まった。
私の指先から手首くらいまであった。
「けっこう深いね」
「はい!」
「でも、これどうしようか」
昨晩のうちに雨はやんで、今日はすっかり晴れている。
それでもこの深さだ。
「これは……、だむ、というやつかもしれません」
「ダム?」
「はい。だむは、みずを、ためるものです」
「たまってるね」
「はい!」
私は枝でちょっと中をかきまぜてみた。
もやもやと、茶色いものが水をにごす。
「水たまりとはちがうの?」
「だむは、ながれをとめて、つくるものらしいです」
「川とか?」
「はい!」
私は屋根を見た。
一滴の水も落ちてこない。
「流れてないよ」
「でも、きのうまでは、ながれてました! ながれてました……」
スライムさんは、小さくなった。
「ながれてなければ、だむではない、ですね……」
スライムさんは、さびしげに言った
「たしかにね」
「ぼくの、おみせにも、だむができた。そうおもったのですが……」
「でも、川にあるダムも、すごく雨がすくなくなったらさ。流れがなくなるんじゃない?」
「!?」
「その場合も、ダムって呼ばなくなるのかな?」
「! むずかしいところですね!」
スライムさんは、しゃきっ、とした。
「ダムって呼んでもいいんじゃない?」
「ぼくもそうおもいました!」
「じゃあ、ここもだむでいいんじゃない?」
「はい! だむです!」
スライムさんは言った。
「あめがふったらだむです! ふだんは、じめんです!」
「そうだよね」
「ふかさに、きまりがあったきもしますけど、きにしません!」
スライムさんは、むん! とふくらんだ。
「その意気だよスライムさん!」
「はい!」
「あ、そういえばさ」
「なんですか、えいむさん!」
「ダムって、池とはちがうの? 湖とか」
「……えいむさん」
「なに?」
「いったん、おちゃでものみましょうか」
「そうだね。寒いしね」
「はい!」
私たちはお店の中にもどって、コップもある意味、ダムなのかな? などと話した。




